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異世界異能譚  作者: 幸田啄木鳥
虎擲竜挐のベルセルク

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宵闇の戦い


宵闇。

暗闇に包まれた異能指南道場本部。


闘技場のようなあの場所に俺はいた。

……決戦のため、奴を……フォリを待っている。



「……まだかよ」


もう0時を回るころだ。

まぁ、夜としか言われていないので、しばらくは待つが……。



俺は1人で奴を待っている。

1v1での勝負だから当然の話なのだが、正直1人は退屈である。


……まぁ……長らく人と離れていなかったせいなのかもしれないが。



「……寒いな」


人肌がないからか。

少し、寒さを感じている。


こういう時は体を動かすのが1番だ。

さっさと現れてくれたほうが助かるな……。




「お待たせいたしました」


なーんて思ってたら、こうだ。

ちょっど良い時に現れてくれた。



フォリだ。

決闘の約束をした破砕の幹部が現れた。



「よう。ちゃんと現れたか」


「ええ。少々、別件で時間をかけましたが」


「……別件?」


「まあ、昔馴染みが突っかかってきたので追っ払っておきました」


「昔馴染み? ……まさかお前……!」


「ああ、いや。あなたが懸念しているような事はありませんよ。彼女は無事ですし交戦もしていません」


「ただ……流石にかぎまわられすぎると厄介なので、撒いただけですよ。時間がかかりましたが、ね」


「……本当だろうな……?」


「ええ、もちろん」



何を言っている? というような顔をして、少し首を傾げて見せるフォリ。まるで嘘をついているわけがないとでも言いたげだ。


信用してはならない。

コイツは間違いなく敵で、これから戦うのだ。



無事ならそれで良いが……。



「では、そろそろ始めましょうか」


「……ああ」



間合いは、3m程度か。

確か、フォリは剣や腕を伸ばす能力を持っていたな。


「……では、こちらから行きますよ!」


来るか……!!




初撃は剣。

鋭く伸びてきた剣をかわし、フォリからは視線を離さず次の出方を伺う。


「流石に初見殺しとは行きませんか」


「一応調べさせてはもらったからな。こっちもいくぞ!」


「!」


俺は異能の力を使い、風の斬撃を作り出す。

それは鋭く、また素早くフォリに向かっていき、フォリの肩に傷をつける。


少し避けられたが、問題はない。

最初からそんなに上手くいくなんて思っていない。


「チッ。こっちは当たってしまいましたね」


「らしいな」


そして、俺はそのままフォリに向かって走り出す。

フォリは剣を縮めたり伸ばしたりを繰り返して、俺の進行を阻害するように攻撃してくる。


だが見えない速度ではない。

力試しのつもりなのか、まだ簡単に避けられる範囲だ。



「油断してっと危ねえぜ?」


「油断などしていません。ただ、どこまでやるべきか見定めているのみです」


そうやって言葉を掛け合っているうちに距離は縮み、フォリの目のすぐ前にまで迫る。


俺は勢いよく拳を振り抜き、直前に剣を伸ばしていたせいでガードの遅れたフォリの腹部に拳をめり込ませた。


「うっ!!」


呻きをあげ、吹っ飛ばされ、フォリは壁に叩きつけられる。



「……中々。攻略のやり方も上手いですし、何より戦い方にセンスがある。侮れない」


「そうかい? そりゃ嬉しい話だ。成長してるって事だな」


「そうなりますねえ」



フォリはニコッと笑う。

嫌に不気味な感じの笑顔だ。


「……そういうわけですから」


そしてすぐ目をカッと見開く。


「少々本気を出させていただきましょうかね」


そういうと、フォリの剣が伸びて、グキッと曲がる。

それを避けるが、曲がりながら方向転換して再び俺の方へと戻ってくる。


それをまた避けるが、また方向転換して戻ってくる。

それもまた避け……流石に限界だったのか、それ以上は伸びずに戻っていく。


「……"伸縮式剣術"」


「なるほど? 厄介な技だな」


「まぁ、俺にとっちゃ厄介ってだけで怖さのない技だがな」


「それはどうでしょうか……ねぇ?」


その攻撃に自信を持ったらしい、フォリの表情を見て、俺は何かを察知し、意識を下に向ける。


すると下から、地面を突き抜けて刃が伸びてきた。

俺は宙返りしてそれをかわす。


「なんだ?」


俺が着地してそう言って、すぐにそれは起こる。

四方八方の地面を突き破り、剣が伸びて俺に襲いかかってきたのだ。


「なにっ!!?」


俺はわずかな隙間を利用して、どうにか抜け出した。



「……まさか」


フォリの方を見やる。

剣の柄の部分は先ほどまで、隠れて見えていなかったが、ここにきてようやくその全身が視認できる。


剣は両刃剣だった。

そう、刃が下にもついていたのだ。



つまり……奴の異能の限界は……




「……もっと伸びるのか」 


「ええ。それはもう」


「……化け物かよ」


「それはあなたの方ですよ。見えない刃を作る風の異能なんてのは聞いた事ありませんから」





「……ここからはギアを上げましょう。私も、あなたに興味が湧いてきました」





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