エルフに憧れて山の中に探索しに行った事のある奴は大体大人になってもあまりやる事は変わらない
帝国の冬は、少し早い。
太陰暦を利用している帝国では、11月1日ごろから降り始める。
ちなみに暦の上では今は124087年11月3日らしい。
あと、こっちでは西暦ではなく違った数え方をするらしい。それでいうと12万年経っていると。……なんだか途方もない話だ。
ちなみに、その数え方の名前は聞いていない。というか、名前については帝国では出せないらしい。
便利だから使うが宗教上の理由で……みたいな。面倒くさい話だ。普通に教えてくれよ……。
「……っあー、にしても良い天気だねぇ」
依頼を終えて、俺は雪の積もった街路をアジトに向かって歩いていた。
「……寒いなぁ」
雪が積もっていて、しかも寒いせいで少し感覚が鈍い。あと早く帰って暖まりたい気持ちが強すぎて他の事をあまり考えられない。
このままだと、無茶苦茶に歩いて迷いそうなので、俺はとりあえず口に出して帰路までの道を思い出すことにした。
「確か……こういう街路を歩いてて、ちょうどああいう広場みたいな所に……」
噴水も何もない広場。
そこに差し掛かった時、俺は見てしまった。
「……」
見惚れてしまった。
なんとも美しく、儚げなその少女の姿に。
雪の背景と相まって、神々しくも見えた。
……いかんいかん。
俺には……えーと、色々あるし?
ここで声掛けなんてしよう物なら、皆に何をされるか……。
……それに、何というか見た目的に危ない気がする。可愛いけど、アレに魅入ると後がヤバそう。
だって、どう見ても年端もいかない少女だし。
俺はゆっくりと、知らんぷりしながら気付かれないように広場を通り過ぎようとした。
……しかし。
「見つけた」
少女が一言つぶやいた。
そして少女は俺の方を向き、俺の肩を掴んで凄い力で少女の方を無理矢理向かせてきた。
「なっ、なになになに!!?」
「私はエルファニア王国からやってきた、レナ・ビルガメスという者」
「あなたは"神剣城"のギルドマスターで間違い無いだろうか」
「……あぁ。確かにそうだが」
「では、あなたにもコレを」
そう言うと、少女は懐から何やら書類を取り出して渡してきた。
そこには……
「合同任務?」
「そう。エルファニアとグランデベントのギルドによる合同任務。エルファニアの王の命により、その任務に応じてくれるギルドの募集を募っていた」
「それで、グランデベントでは参加してくれるギルドは他にもいるのか?」
「………………」
悲しそうな顔と共に、沈黙が流れた。
「……わかった。応じるよ」
「!!」
先程までこの世の終わりと言わんばかりに悲しそうな表情をしていたレナの顔が、とても嬉しそうな表情に変わった。
こちらまで嬉しくなってくる程だった。
「それじゃあ、詳しい話はアジトで聞こう」
「っ……しかし、勧誘をしないと」
と言った頃合いで、凄い音でレナの腹が鳴った。どうやら腹が減っているらしい。
「腹が減っては戦はできぬ。大人しくうちに来なさい」
「……わかった」
こうして、不思議な少女が持ってきた合同任務に、俺は応じる事となった。
そしてコレがきっかけで、俺と仲間たちはまた変な事件に身を投じる事になっていく……。
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第2章
窮鳥入懐のディターミネイション
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アジトに戻った俺は、フェターリア達に事情を説明した。
トレイルとアンが気を利かせて、レナにご飯を作ってくれた。
ちなみにエビのグラタンである。すっごい手が込んでる……。
レナにはとりあえず、食事を取ってもらった後はお風呂に入ってもらって……と、諸々もてなしをしてから、合同任務について説明してもらう事になった。
客間で、紅茶を飲みながらである。
「……緊張感がない。帝国のギルドはもう少し緊迫しているのかと思っていた」
「他は知らないけど、うちはちょっと緩めにやってるし。あんまり気張りすぎたって意味ないしな」
「なるほど。確かにそれはそう」
「で、合同任務ってなんだ?」
「2国間のギルドで連携し、とある任務をこなしてもらう」
「なるほど。その任務はそっちの戦力じゃ足りないような物なんだな?」
「そう。私たちの力では足りないと判断した。だから、こちらへ助けを求めた」
「……でも、誰も応じてくれなかった、と」
「……」
「こっちの国の事情、俺もあんまりよくわかってるわけではないんだが……断られるって事はそれだけやばい任務なのか?」
「……具体的な任務の内容は、まだここでは言えない。こちらの国へ来てもらってから説明する事になっている」
「……じゃあ……」
「薄情者が多い、という事じゃな」
フェターリアがそう言い切った。
「……まぁ、うちは絶対受けるよ。安心して」
俺がそう言うと、ギルドメンバー全員が頷いてくれた。
「……! 感謝する。では、早速手配をする。諸々の手続きについて電話をするので、少し時間が欲しい」
「あぁ、わかった。じゃあ、俺もフェルバー陛下に電話するかな……」
お互いに少しだけ距離を取り、それぞれの相手に電話をかけた。
「もしもし、フェルバー陛下」
『……ガンドか』
「はい! お疲れ様です」
『貴様もな。それで、要件は何だ』
「あのですね……今ちょっと、エルファニア王国の使者さんから、合同任務の依頼を受けたので、出国許可を頂きたいんですが」
『……使者だと? そいつは何者だ』
「ええっと、レナ・ビルガメスさん、です」
『今……なんと言った』
「? ……レナ・ビルガメスさんだ、と」
『……はぁ。貴様は何故そう次から次へと厄介ごとを……』
「え? もしかしてまたなんかまずい案件ですか、これ」
『……』
『その者は、エルファニア王国の全ての軍を統括する存在……"十二種王"が1人、"戦王"レナ・ビルガメスだ』
「……えっ?」




