表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界異能譚  作者: 幸田啄木鳥
目覚めと始まりのメタスタシス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/43

閑話休題 金甌無欠のフラグメント






初任務より、半年ほど経った頃。

民間の任務をこなすのにも慣れ、書類仕事にも慣れ。上手くこなせるようになり、全体的な評価も上がってきた。


そんなある日、フェルバーさんから2回目の直属の依頼が送られてきた。


前回が"アレ"だったので、今回は一体どんなヤバい依頼なんだと、皆で警戒しながらアンの話を聞いてみると……



「今回の依頼は、帝国中央駅に明日午前3時ごろに到着する連絡便に積まれた、フェルバー様のお荷物を護衛する任務です」


「……そいつはどんな激物なんだ?」


「いえ、激物とかではなく、高価な宝石のような物です」


「……本当に……?」


「はい」




俺たちは心から安堵した。

警戒心が強すぎて、気を張りすぎていたのか、その場にへたり込んでしまった……。




次の日の午前3時、俺たちは言われた通りに帝国中央駅へ向かい、連絡便を待った。


やはりというかなんというか、連絡便はディーゼル車が引っ張っている、J◯の貨物列車みたいな見た目をしていた。


そろそろ現世と間違えそうなんだが?

俺は異世界にいるんだよな? なぁ??




「……わかっちゃいたが、いざ見ると色々驚きと困惑が出てくるな」


「……そっちの世界にも、このくらいの列車はあるじゃろうに」


「いや、あるからびっくりしてるんだよ。俺らの世界で語られる「異世界」は、こういう物は無かったから」


「ならば、其奴らは真の異世界を知らんのじゃな」




"神剣城"のリーダーである事を車掌に伝え、荷物を持ってきてもらう。


車掌は小包を持ってきて、俺たちにそ〜〜〜っと渡してきた。


どうやら、相当丁寧に扱わないといけないらしい。




俺たちは交代交代で小包を持ち、落としたりなんたりしないように慎重に、ゆっくり持って帰った。




アジトに戻ると、フェルバーさんが待っていた。お付きの人とかはおらず、1人で来ていた。



「……へ、陛下。こちら、お荷物です」


「うむ」


小包をそ〜〜〜っと渡した。

フェルバーさんは小包をそっと開け、中の物を取り出した。


取り出されたそれは、美しい何かの破片であった。透明の球体に入れられていて、中で常に浮いている。



「……フェル、これはもしかして……」


「ああ。これは"コンクルード・フラグメント"だ」


「"コンクルード・フラグメント"?」




「"その単体のみで完結する性質を持つ破片"だ。とても高価な物だが、今回ある国から安く仕入れる事が出来たのだ」


「へぇ〜。それで、これはどんな性質を持つんですか?」


「これの性質は……」



フェルバーさんがそう言いつつ、フラグメントに触れると、フラグメントの表面に、映像が浮かび上がってくる。




「"電子機器と、電波などを介さず完璧に連絡を取る事が出来る"性質だ」




映像には、薄暗い、デスクの上にコンピューターが無数に並べられた部屋と、その中の一台を椅子に座って操作している1人の少女が映し出される。


「む、出しどころを間違えたか」


フェルバーさんはそう言って、フラグメントに触れ、ダイヤルを回すような動きをする。すると映像が切り替わり、恐らく先程の少女であろう人の前面が映し出された。



『ひょっ!? あっ、フェルバー陛下!? という事は……例のブツを手に入れたんですか!?』


「ああ」


『では、"神剣城"の皆さんも無事に任務をこなしたんですね!! これで一安心、です』


「そうだな」




「紹介しよう。彼女は我の配下の清宮園江だ。IT関連を担当している」


『よろしくお願いします〜!』


「よろしくお願いします」


俺が返事しておいた。

清宮園江という名の少女は、朱色のおさげでとても可愛らしい……ただ、なんというか全体的に少し"幼い"感じのする雰囲気の子であった。



「お前達には、このフラグメントを介して、園江と情報交換をしてもらいたい」


「……情報交換? 何をじゃ?」


「なんでもだ。このフラグメントなら情報が漏れることもない。日頃の事も、重要な事も、なんでも話せ」


「なるほどのう」



「このフラグメントは壊れやすい。それゆえ……」


「アン! アレをもってこい」


「はっ」



アンが、別の部屋からガラスケースを持ってきた。フェルバーさんはそれの蓋を開け、ゆっくりとフラグメントをケースに入れ、蓋を閉める。


ガラスケースには少し大きめで、フラグメントは出てこないくらいの穴が開いている。



「ここから触れられる。フラグメントから連絡を取る時は、ダイヤルを回すような動きを3回するのだ」


「切るときは?」


「逆に3回回せ」


「了解です」




「では、詳しい事は園江に聞くが良い。我は宮殿へ戻る」


「はっ」



フェルバーさんはそのまま部屋を出た。



『……ええっと、まず……今後はアンさんだけでなく、私からも連絡を行います』


『重要な依頼や、極秘の情報などは私から連絡する事になると思います』


「了解です」


『はい。あとはまぁ、話したい時に声をかけるかもしれません。その時はよろしくです〜』


「あ、は〜い。それは全然構いませんよ。いくらでも話し相手になります」


『ふへへ、そうですか? ありがとうございます〜』




『それにしてもガンドさん……あなた、随分可愛らしい顔をしてらっしゃるのですね』


「……は?」



可愛らしい? 俺が?




「……俺が?」


『アレ? ……もしかして気付いてらっしゃらない?』



そういえば、スマホの画面に映る自分が、おっさんでなく美少年、いやなんか美少女っぽく見えていた気もするが。んなわけないだろうと思っていた。そもそも忙しすぎてスマホを触る暇なんかほとんどなかったし……


……浴場でも鏡をあまり見ないんだよな、俺。



「……なぁ、清宮さん。鏡あるか? ちょっと見たいんだが」


『はい? 良いですよ?』


清宮さんが鏡を持ってきてくれる。

少し歪んで見えるそれを覗き込むと───




───────そこに映っていたのは、黒い綺麗な髪を持つ、中性的な美貌の人間であった。


……は???????




「はぁ!??? これが俺ェェ!?」


『? はい、そうですけど。だから言ってるじゃないですか〜。可愛らしくて素敵ですよ!』


「……えぇ……。元はおっさんだったのに……」



なんともいえない気持ちになった俺は、キョトンとしたトレイルやフェターリアらに見つめられながら、ガクッと項垂れたのである。




あまりにも鈍感すぎる、と。

俺は心の底からそう思った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ