03
元準男爵家だった為そこ迄大きな領地は所有しておらずミードの実家の養蜂場もこれ以上は難しいと言う程ハニー・バービーの巣を制作してきた
しかしそれでも平民が少しの贅沢として買うにはまだ足りなかった
『そこでゴリュディーア様、貴方様の領地でハニー・バービーを生産したいのですわ』
「僕の領地で?」
『其方の領地はとても広大、何より空気と温度は蜂にとって実に快適
蜂達にとっても良い環境で育つと考えているのです』
「だから僕と結婚、と
しかしそれならお互いに契約を結んだ方が良いのでは?」
『確かにそうかもしれません
けれど私とゴリュディーア様が結婚すると言う前置きがあればもっと簡単にお互いの家の関係を結ぶ事が出来ます
何より私は他国に輸出するルートを持ち貴方様の領地の特産物であるチーズに魅力を感じているのです』
「君の領地の蜂蜜を僕のルートで輸出したいって事ですか
けれど僕の領地のチーズなんて普通過ぎて貴女の蜂蜜に劣ると思うのですが、、、」
余りにも自信の無いフォルマリックにマニカは余り良い気分では無かった、過度な謙遜は相手を不快にさせると聞いた事は有るが確かにと思ってしまう
『、、、バービー・ハニーは蜂の環境や体調で味に変化が生じるものです
昨年と同じ味、同じ量を作る事は困難です、ですがゴリュディーア様のチーズはその"普通"を常に維持し続けておられました
抜きみでた才能は無いと仰りますが私は貴方は磨けば光るダイヤの原石だと思っておりますわ』
「僕が?」
『私、お金を生み出す活動にやり甲斐を感じておりますの
だって私、、、守銭奴令嬢ですもの
ですからゴリュディーア様、私とお金儲けをする為に私と結婚致しましょう
もし利益を得られないとご理解なされたら利子を付けてお返し致しますわ』
マニカにとって利益を得る為なら結婚なんて当たり前、愛なんてものは後から付いてくれば良いものなのである
フォルマリックは少し考えた後ゆっくりと顔を上げた
「、、、分かりました
ですがハイニー男爵令嬢、少し時間を頂けないでしょうか
僕一人でこんな事を決めるのは軽率だと思いますので」
『成程、、、では、一年
一年以内にこの婚約で利益を得られないと判断なされたらゴリュディーア様がこの話を破棄をして頂いて構いませんわ』
「分かりました」
『私のお言葉に答えて下さり感謝致します』
小さくお辞儀をしてニコリと笑うマニカにフォルマリックは少し頬を赤らめた先程迄婚約者だったベリーには微笑みの一つもしてくれなかったからだ
フォルマリックは一度持ち帰って明日マニカの家にもう一度来ると約束し馬車から降りて自分の馬車へと乗り込んだ
「しかし良いんですかいお嬢
ミードの奴が聞いたら絶対ごねますぜ」
「お父様の事は私が説得しますわ
それよりチマン、貴方は今馭者なのですかゴリュディーア様の前では礼儀正しくして下さいませ」
「仕方ないでしょう
あっしはミードんとこの養蜂家で馬車に慣れてるって理由で腰やった馭者の代わりに来たんですから」
「それは分かっておりますわ
けれど相手は貴族ですわよ」
「分かっておりますよ」
そんな事を言いながらマニカを乗せた馬車は走り出しゆっくりと帰路に着いたのだった