02
「ずっと思っていた事なのですが、、、どうして男爵夫人は男爵様を婿に迎えられたのですか?」
『あぁ、それですわね
簡単です、お母様が迫ったんですわ』
「え?」
それはどう言う事なのかと聞こうとしたタイミングで辺境伯家に着いてしまい話はそこで中断、技術者である例のパティシエに会うのは明日にしようとなった
『、、、やはり辺境伯家は我が家より何倍も大きいですわね』
「そうかな、ただ土地が広いからその分屋敷と庭が広いだけだと思うよ」
『そんな事御座いませんわ
外見からも分かる程ゴリューディア辺境伯家が歴史のある由緒正しい御屋敷である事を示唆しております
それに庭も生垣や木の木の葉一つ迄洗練されていてとても優秀な庭師が居る事も分かりました
何より此処へ来る途中に見えた牛の毛並みの良さ!この環境と優秀な牧者が居てこそあの素晴らしいチーズやミルクをお作りになられているのが分かりますわ!
あぁ、此処はなんて素敵な場所なのでしょう!!』
だんだんと語気が強くなっていくマニカ、フォルマリックに食い入る様に語っていた為気付かなかった
余りにも熱が入りすぎて迎えに出ていたフォルマリックの両親と執事が居た事に
「はははっ、気に入ってくれて嬉しいよ」
『っ!?、、、ゴーディルス様、お久しぶりで御座います
本日は此方の我儘で急遽やって参りましたのに快く招き入れて下さり感謝致しますわ』
「構わないよ
何事かと思って出てみたらそんなにも我が家と庭、そして私の従者達の事を褒めてくれるなんてマニカ嬢は本当に父親に似て良い目をお持ちだ」
『いえ、、、ありがとう御座いますわ』
フォルマリックの両親が居る事に気付き先程の熱弁を聞かれていた事に一瞬硬直しながらも直ぐにカーテシーをするマニカ。その時フォルマリックは見逃さなかった。令嬢として気品のある態度を取りながらもその耳は真っ赤になっている事に
(可愛らしい、、、)
男爵令嬢でありながら元婚約者に捨てられた自分に求婚する度量の大きさ、自分の父親を尊敬し自分もそうなりたいとする勤勉さ、平民の生活を知りどんな状況にも対応出来る勇敢さ、例えどんな辺境であってもビジネスの為にわざわざ自分で足を運ぶストイックな一面、そんなマニカの新たな姿にフォルマリックは惹かれていた
(僕はこんな彼女に並べられる程の男だろうか)
こんなにも素晴らしいマニカを近くで見ていた為にかつての婚約者の言葉を思い出してしまった
《こんな醜くて泥臭い男がわたくしの婚約者なんて認めませんわ!》
《なんですのそのヒキガエルみたいに汚い声は!
もうわたくしの前ではその汚い声を発する口を閉じて下さい!》
《豚の様に太っている上に肌も髪もボロボロ、、、あんなのと結婚する位なら犬と結婚した方がマシですわ》
自分を見てケラケラと笑っていたベリーにフォルマリックはまた背中が丸くなるのを感じた。こうしていれば少なくとも自分を罵る彼女の嬉しそうな顔を見なくて済んだのだから
『、、、フォル様?』
「っ、、、どうしたマニカ」
『どうしたは私の方ですわ
顔色が宜しくないです。もしかして体調を崩されたのですか?』