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八朔日の贄  作者: 絶山蝶子
プロローグ
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1話・事件について

 事件について




 8月1日午後1時頃、都内◯◯区の中学校の校舎内で、女子生徒が腹部を刃物で刺され倒れている所を30代の女性の教員が見つけ、その場にいた不法侵入の男の身柄を拘束。

 通報により駆けつけた警察官が都内の大学に通う村上八朔むらかみほづみ(21)を殺人容疑で逮捕した。


 村上容疑者の衣類には被害者の血が付着しており、犯行に使用したと思われる刃物1本を押収した。検査の結果、刃物から村上容疑者の指紋が検出された。


 消防によると女子生徒は救急隊員が駆けつけたときには息があったが、出血がひどく搬送先の病院で心肺停止になり同日、死亡が確認された。


 被害者はこの中学校に通う2年生小江灯さん(おごうあかり)14歳。

 村上容疑者の弟、Sくんの同級生で、Sくんとは仲の良い友人関係であった。

 灯さんと村上容疑者との面識の有無は現在調査中だという。


 Sくんは村上容疑者の手によって拘束され、犯行中はロッカーに閉じ込められていたが救急隊員によって保護された。

 Sくんに怪我はなく健康状態も問題はないが、精神衰弱状態で搬送され、現在も病院で治療を受けている。


 村上容疑者は黒のタートルネックのニットと黒のジーンズに身を包み、体に複数人に暴行を受けた跡があり特に頭部からの出血がひどく、そのまま病院へ搬送され治療を受けた後殺人容疑で逮捕された。


 医者は怪我は酷くとても犯行当時自力で歩ける状態ではなかったはずだと、取材に対し答えている。

 村上容疑者は意識ははっきりしており、事情聴取にも素直に応じている。




 当時学校は夏休みのさなかであったが、その日は登校日で午前中は全校集会と平和学習が行われていた。

 現場の中学校の北東に位置する旧校舎の2階空き教室で、犯行当時昼休憩中であり他の生徒は居なかった。

 同じクラスの生徒が被害者の女子生徒と容疑者の弟の二人がお弁当箱を片手に教室を出る姿が目撃されており、「普段と変わった様子はなかった」と証言している。


 小江さんの遺体の腹部には刃物のような鋭利なもので刺され、引きずり出された内臓が床にむき出しの状態になっていた。

 抵抗した形跡はなく、刺された時に意識はなかったとされる。


 この中学校に勤務する50代の教師の男性は職員室で同僚の教師と昼食をとっていた最中に、旧校舎から女性の悲鳴が聞こえ驚いて駆けつけると、犯行現場を目の当たりにした。


「空き教室の床一面が血で真っ赤で、その真中に4組の小江さんが倒れ覆いかぶさるように若い男が突っ伏していました。慌てて引き剥がすと男は口に何かを加えたままこちらに顔を向けました。「お前がやったのか?」と私が問いただすと静かに首を横に振りました。男は暴れる様子もなくあっさりと取り押さえられました。」と話した。


「何事かと集まる生徒を他の先生が旧校舎から追い出した後、校長先生に連絡をし体育館に全校生徒が集まるように放送をかけました。その間も男は一言もしゃべらず、体育の先生と用務員二人に取り押さえられたまま何かを咀嚼していました。」


「小江さんの出血がひどく、保健室からガーゼを取り寄せ傷口を覆いました。縦3つに刻まれた傷は深く内臓がはみ出て小腸の所々がちぎれていて……――――」


 教師はそこでようやく村上容疑者も暴行を受けた後だと気がついた。


「腕にかけて2倍ほど腫れ上がっていて殴打の跡がありました。もしかしたらこの男が、真の犯人の暴漢から小江さんの身を守っていたのかもしれない……そんな考えが頭をよぎりました……――――それでも男の口からぶら下がるそれを見て、この拘束を解いてはいけないと……――――」


その後、救急車とパトカーが来て救護隊員がロッカーに隠れていたSくんを発見。

Sくんは後ろ手に縛られて口をガムテープで塞がれていた。


「窓の外を指さして「あいつが!」って叫ぶんです。……もちろん外には誰もいませんでした、そもそも二階ですしベランダもありませんので誰も居ようがなかったのですが……」


第一発見者の田端先生がSくんを宥めている間も男は何も喋らずただ咀嚼を繰り返していたという。


 村上容疑者は昼前に新校舎の南側から侵入したとされるが、教師生徒からの目撃情報はなく、監視カメラ等に映る姿は発見されなかった。


 村上容疑者は取り調べに対し、「(被害者を)食べたが断じて殺していない」と一貫して殺意を否認している。


 容疑者の弟、Sくんが何らかの事情を知っているとして、回復次第取り調べを開始する予定で、警察は殺人事件として詳しい状況を調べている。



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