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4.初めての仕事

 俺達はなぜか飲み屋にいた。


「なんで俺たちは飲み屋にいるんですか?」

「仕事だって言ったでしょう」

「目的を教えてくださいよ」

「教えません」

「目的がわからなきゃ仕事なんてできないじゃないですか」

「あなたは私が指示したときに動けば問題ありません。そもそも私はまだあなたのことを全く信用しておりません。あなたが敵に捕まって情報が漏れたりしたらバカみたいではないですか」


 チームのリーダーである長身メガネのマルフィンは俺が成果を出さない限り仲間とはみなしてくれないようだ。

 どうしてこの世界で出会う人はこんなにも優しくない人ばかりなのだろうか……


「まぁ、とりあえず飲もうぜ!!おい姉ちゃんビールくれ!!」


 大声で店員の女性に声をかけているのは大柄なスキンヘッドのデカルドだ。


「僕にはオレンジジュースちょうだい!」


 小柄な黒髪ショートの女の子スピーは続けて注文を頼んだ。


「私にはコーヒーをください。箱宮ゆきし君、あなたも何か頼んでいいですよ」

「じゃあ俺にもコーヒー1つ」


 しばらくすると注文した飲み物がそれぞれの元へと置かれていった。

 ただ、ビールを頼んだデカルドには紫色の泡立っていない謎の飲み物が置かれていた。


「それがビールなのか?」

「あ?何言ってんだ。ビールに決まってんじゃねぇか」


 どう見ても俺の知っているビールではなかった。

 デカルドは一口で勢いよくグラスの半分ほどを飲んでいく。


「なんだよ新入り、飲みてぇのか?」

「少しもらっていいか」

「仕方ねぇな。ちょこっとだけだぞ」


 少し飲むとよくわからないエナジードリンクのような味がした。

 親が飲んでいたビールを少しだけ飲んだ時の苦みはなかった。

 神はこの世界での言語能力を与えてくれたが、ここの世界の言語を自分がいた元の世界の語彙へ変換する仕組みなのかもしれない。

 だとするとあまり単語をそのまま前の世界のものでイメージするのは少し危険かもしれないな。


「けっこう美味いな」

「だろ?」

「そんなのよりオレンジジュースのほうがおいしいけどね」


 スピーの方を見るとストローでオレンジジュースを飲んでいた。

 オレンジジュースは俺の知っているオレンジジュースと見た目は一緒だった。

 そして俺の元にもコーヒーが置かれた。

 砂糖とミルクが欲しかったがタイミングを逃してしまったので仕方なくブラックで飲むことにした。

 異世界でもコーヒーは変わらずに苦かった……


「みなさん店を出ますよ」

「まだ来たばっかじゃないですか?」

「状況が変わったということですよ」


 コーヒーを飲み始めたばかりなのに……

 デカルドとスピーはすでにドリンクを飲み終わっており、店を出る準備をしていた。

 仕方ないのでブラックコーヒーを一気飲みし、三人の後を付いていく。


 マルフィンに続いて歩いていると、次第に人があまりいない広場に着いた。

 広場のベンチにマルフィンが座るとスピーもベンチに座りデカルドは立ちながら会話を始めた。


「あいつらここで誰かと待ち合わせてるみたいだな」

「ええ、奴らが合流する前にこちらから先手を打ちましょう」

「じゃあまずは僕が足止めするよ」


 周りには人が少なく、男二人と女一人の三人組とカップルが一組だけいるのみだった。

 三人組のやつらは確かに誰かを待っている様子だ。


「あいつらが今回の仕事に関係してるのか?」


 そう言い三人組の方を見ていると、突然三人組の男一人が俺の方に何かを投げるモーションをしてきた。


「馬鹿野郎!!」


 デカルドはそう叫び、俺の前の何かを掴んだ。


 しかし、デカルドの手には何も握られていなかった。

 再び三人組の方を見ると、俺たちから離れるように走り出していた。


「追いますよ」


 マルフィンと他二人は逃げた三人組を追うように駆け出していた。

 その中でもスピーは他二人よりも速いスピードで前へ進んでいった。


 何とか他二人の後を追うように俺も走り出す。


 追いかけているうちに林の中へ入っていくことに……

 さすがに林の中を走るのに慣れていないため他二人と距離ができていく。

 途中で足がもつれ倒れこんでしまった。

 立ち上がるともう他二人の背中は見えなくなっていた。


 おいおい……

 さすがに置いて行くのはなしだろ……

 そう思ってこの後どうするか考えていると上から声が聴こえた。


「はぐれ者見っけ」


 上を見ると木の上方に広場にいた三人組のうちの男の一人がいた。


「お前には死んでもらう」

「いや、お前ら誰だよ」

「何言ってるんだお前は?俺たちを追ってきた癖に」

「俺は何も知らないんだよ」

「わけのわからないことを言うな。俺たちの盗み出した情報が漏れるのを防ぐために来たんだろう?」

「情報?」

「演技でわざわざこの状況でバカのふりをするのも変だな……お前もしかして本当に何も知らされてないのか?」

「残念ながら本当に何も知らないんだ」

「かわいそうなやつ。まぁだからといって生かしておくわけにはいかないから殺すけどな」

「もうなんなんだよぉ!!」


 小柄な目の細い男は木の上から何かを放ってきた。

 何も見えないが一旦避けることにした。

 避けた地面はえぐられていたがそこには何も残っていなかった。

 男は木から連続して”何か”を放つ。

 動線から外れるようにとりあえず避け続ける。


「なかなか動きは悪くないな」


 男は放つのをやめ木から飛び降りてこちらへ向かってきた。

 手は何かを握っているようだが剣は持っていないように見える。

 こちらに何かを振り下ろしてきたため後ろへ下がると胸に痛みを感じたので見ると傷ができていた。

 ここまでくるとなんとなくわかってきた。


「お前が使っているのは空気か?」

「察しは悪くないようだな。まぁこんだけ攻撃してたらわかるかもな、そう俺の能力は空気の圧縮化だ。圧縮した空気のすべてが武器となる」

「なかなか便利な能力じゃねえか」

「だからこんなんもできるぜ」


 男は足元に手を当てた後、その部分に乗り始める。

 その行為を繰り返すと木の頂点ほどの高さまで上がっていった。


「俺もどうせならそのくらいの自由度の高い能力が欲しかったぜ」

「お前も何か能力持ってるのか?出し惜しみせずに使った方がいいぜ、まぁ遠距離攻撃できる能力じゃなきゃ意味ないがな」


 男は笑いながら再び何かを放ち始める。

 軌道を推測し避け続けるが、こちらの体力は確実に減り始めていた。

 俺の能力は遠距離では使えない。

 このままだと勝てない。


 俺は男に近づきダッシュする。


「どうした?あきらめてやけになったか?」


 矢だか弾だかわからないものを交わしながら男の後方エリアまで駆け抜ける。

 そしてあいつが足場にしていた空気に触れることに成功した。


「よかった。どうやらお前は圧縮した空気を自分のタイミングで解除できないみたいだな」

「ふん、なるほどな。着眼点は悪くない、俺の足場を使って近づこうって考えか。でもそれだとお前は俺の弾を避けれねえぜ」


 男は笑いながら弾をこちらに向けて放ってきた。

 確かに足場が狭いため、放たれてきた弾を避けるのは難しい。

 それならば避けなければ良いだけの話だ。


 俺は空気の弾に向かって”手刀”を入れた。


 すると手刀を入れたあたりに来ていただろう空気の弾は消失した。


「どういうことだ!?」


 敵は連続して弾を放ってくるがそのすべてを断ち切る。

 断ち切りながら敵の目の前まで接近する。

「なんで俺の弾が手刀なんかで……俺の圧縮した空気は普通の銃弾と比べても遜色ないどころかそれよりも固いはずだぞ……」

「手刀ですべてを断ち切ることができる。それが俺の能力だ」


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