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そこに咲いた花は永遠に

作者: 夢朱雀 琉鬼

標高1000mを越すエルフ山の火口から大空へ飛び立った大型飛行船ソラファ号は突然旋回を始め徐々に高度を下げていったのであった……

「あそこに、着陸して」


「分かりました」


この大型飛行船の所有者であるエルフの国のブリンセス、ソラファが指さしたエルフ山のふもとにある開けた場所に向かって、大型飛行船ソラファ号は着陸体勢に入った……


ザクッ、ザクッ……ドドーン……


ものすごい衝撃と共に、大型飛行船ソラファ号の下に付いている、巨大な機械仕掛けの足が履いているピンヒールのかかとが、ソラファ号の重さのためか、地面に深くめり込んでいた


衝撃が収まり、安全確認サインが出るとソラファは聖戦士クルセイダーのマフィーナと山のような熊の獣人戦士プーシャンに言った


「ここでいい?」


「ええ、ここでいいわ、ありがとうソラファ、じゃあ、またね」


「またな、ソラファ」


マフィーナとプーシャンはそうソラファに答えるとエレベーターの方へ向かった


ガタンッ……


突然大きな音がし機械仕掛けの足が膝を曲げ始め、みるみるしゃがみこむとコックピットの下からエレベーターの筒が下に伸び始め、地面の上までつながったのであった


マフィーナとプーシャンはエレベータードアが開くと乗り込み、下へのボタンを押すとエレベータードアが閉まりエレベーターはものすごい速さで下降し始めた


チーン……


エレベータードアが開くと、目の前には、深いエルフの森が広がっている


マフィーナとプーシャンは、改めて大型飛行船ソラファ号を見上げ、その巨大で美しい飛行船を見ながらエルフの森の中へと消えていったのであった……






「それで……あの野獣がソラファの彼氏なのか?」


「わっ! いきなり背後から出てこないでよ! あとで行くからあっちの部屋で待っててって言ったでしょ! それに、野獣……いえ、プーシャンが彼氏のはずないでしょ!」


「へー、そう……」


突然ソラファの背後から声をかけた、この男……いや、この悪魔は、ソラファが指にはめている黄金のソロモンの指輪で魔界から呼び出した悪魔マルバスであった


マルバスはさらにソラファに部屋に行くようにうながされると、しぶしぶ部屋の方へ歩いて行ったのだった……






「さてと……なんだかプーシャンのせいで、カフェ・ド・セリーナのコーヒーが飲みたくなっちゃったわ……」


カフェ・ド・セリーナとは、エルフの国に隣接する月の女神アルテミスが治めるアルテミス国にあるカフェである


「ねぇ、ちょっと……」


ソラファが近くの兵士にカフェ・ド・セリーナへ向かうように言いかけたその時である


「ソ、ソラファ様、敵です! 敵の小型空浮艇に取り囲まれました!!!!」


「なんですって! 敵って誰よ!!!!」


ソラファは急いでコックピット内の操縦士の前まで行くと前方の大型外部モニターを見た


「えっ、あれはチョコミント将軍?」


たしかに大型モニターに大きく映し出されているのは、小型空浮艇の上で腕組みをしているチョコミント将軍であった……


チョコミント将軍とは、今、月の女神アルテミスが治めるアルテミス国がアーサー王国から独立する際、アイスの魔女セリーナによって、アイスの国からアルテミス国へやって来て今もアルテミス国を守っているアイスの兵士の指揮官なのである


「誰か、急いで手旗信号でチョコミント将軍に、この船が敵ではないことを伝えてきて!」






ソラファが指示してから、程なくしてチョコミント将軍にこの大型飛行船がソラファの船だということが分かりアルテミス国まで先導してくれることになった






その後、無事にアルテミス国に入った大型飛行船ソラファ号が、一路カフェ・ド・セリーナに向かおうとしていた時、コックピット内にある壁も床も透明でクリアな部屋のソファーに座っていたソラファは、眼下に見える巨大な美しき大建築宮殿、アルテミス宮殿を見ていたが、ふと駐車場に見覚えのある小型空浮艦を見つけ叫んだ


「あっ、あれは、スキュアー・ダンブリング号だわ!!!!!!!!」


スキュアーダンブリング号とは、アーサー王国のはるか北にある、対岸に北の大陸を望む西の大陸で1番北の国、ノースフォートランドのプリンセス、マイーナが所有する小型空浮艦なのである


その見た目は特徴的でまるで巨大な串団子のようであった


エルフの国とノースフォートランドは同盟国で、エルフの国のプリンセス、ソラファとノースフォートランドのプリンセス、マイーナは友達であった


ちなみに小型空浮艦スキュアー・ダンブリング号の副操縦士は、ペンギンの獣人、ギンちゃんである


ソラファは急遽きゅうきょ、予定を変更し大型飛行船ソラファ号をアルテミス神殿の前にある長い階段の下にある大型駐車場にとめ降りると、自ら長い階段を登りアルテミス神殿横にあるアルテミス宮殿に向かった


するとアルテミス宮殿の入口から少し離れた場所でゴソゴソと怪しい動きをしている者がいた


ソラファはそっと近づき声をかけた


「ちょっと、あなた! そこで何をしているの! こっちを向きなさい!」


ソラファがそう言うと、その怪しい動きをしている者がソラファの方へ振り返った


「あっ、あなたは、ガオー大佐!」


振り返ったのは、誰あろうアルテミス宮殿の警備隊長でライオンの獣人、ガオー大佐であった


「こ、こ、これは、ソラファ様、ごきげんよう……い、いったい、どうされたのですか?」


「えっ、ああ、私は駐車場にマイーナの小型空浮艦がとまっているのを見つけてやって来たんだけど……」


「左様でしたか……いえ、今日は、何やら、アルテミス国とノースフォートランドが同盟国となる調印式が行なわれているらしくて……あっ、あとは、その仲介で功労のあったユーカリス様が勲章くんしょうを受けられ……あっ、まあ、とにかくお入りください……では私はこれで……」


ガオー大佐はそれだけ言うとそそくさと行ってしまった


ソラファがアルテミス宮殿の中に入ると、ちょうど調印式が終わり、月の女神アルテミスの側近で、アルテミス神殿の神官、ユーカリスの功労をたたえた勲章くんしょうの授与式も終わり舞踏会がもよおされていた


ソラファが大勢の人だかりを押しのけ前の方へ出ると、社交ダンスをしている光景が目に飛び込んできたのだが、その中央には、ゴージャスで素敵なドレスを着たマイーナとユーカリスが手を取りあって社交ダンスをしている姿があった


そしてこの会場にいる全ての者の目は2人の華麗な社交ダンスに注がれていた


しばらくしてダンスが終わりを告げると会場は拍手喝采で幕を閉じた


ソラファが、2人に近づくと、ユーカリスが軽く驚きの表情を浮かべたあと、あとに着いてくるように言った






3人はアルテミス宮殿の裏庭のベンチに仲良く並んで座った


裏庭は一面、菜の花が咲き誇っていた


暖かな日差しの中、今までの華やかな騒がしさが嘘のように静かでゆったりとした時間がそこにはあった


突然高らかに鳥の鳴き声が聞こえ、それが収まるとマイーナが言った


「これで、3国とも同盟国になったわね……これから、この3国を、より良い未来のために、3人で力を合わせて尽力していきましょう」


そう言いながら3人は固く手を取り合ったのだった


突然足元から可愛らしい声が聞こえた


「マイーナ様、誰か忘れてやしませんか?」


「あっ、そうだったわね、当然あなたにも手伝ってもらうわよ」


マイーナは笑いながらスキュアー・ダンブリング号の副操縦士、ペンギンの獣人、ギンちゃんを見ながら言った


3人は時間を忘れ、いつまでも笑い合っていた……






ここは、天界の大天使ミカエルのオフィスである……


「ヒナスタシア、お疲れ様でした……ところで、もうその姿はいいですから、元の姿に戻って報告してください」


ミカエルの前にいたのは、ライオンの獣人ガオー大佐だった


「あっ、これは失礼しました、ミカエル様」


その瞬間、ガオー大佐はヒナスタシアになった……いや、それは、大天使軍アークエンジェルス、西方面、小隊長の天使ヒナスタシアが、ガオー大佐に化けていたのだった


可愛い天使の姿に戻ったヒナスタシアはアルテミス宮殿にメイドとして潜入している天使アンナから聞いたことを残らず大天使ミカエルに報告した


「なるほど、そうですか……アルテミス国とノースフォートランドが同盟の調印をね……分かりました、お疲れでしょう、ヒナスタシア……どうです? しばらくバカンスにでも行ってきては……こんなにも、私のために働いてもらって、私はいつもあなたには感謝しているのですよ」


「えっ、ミカエル様、ありがとうございます……ではお言葉に甘えて、しばらくお休みをいただくことにします」


そう言ってニコニコしながら、天使ヒナスタシアがミカエルのオフィスを出ていくと大天使ミカエルはつぶやいた


「これからますます新しいスパイの力が必要になってきましたね……やれやれ」


大天使ミカエルはそう呟いた後、背伸びをしながらオフィスから外へ出ると、眼下のアルテミス国の方へ目を向け急に顔つきを変えると言った


「そろそろだな……計画を実行するのは……」







お読みいただきありがとうございました。


星評価をいただけますと、ありがたく存じます。

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