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第八話 これが私の全力だ!

『侵入者を排除します』


 目の前のゴーレムから無機質な声が聞こえてきた。どうやらこのゴーレムは喋るらしい。


『防衛機構レベル1を選択。対処の排除を行います』


 私と鉄屑のゴーレムが嫌に静かな森の中で対峙する。そんな様子をリリアは木の影からハラハラしながら覗いている。

 

 リリアの前でカッコ悪いところは見せられないからね。気合い入れなきゃ。


「そんじゃ、行きますよっと!」


 私は掛け声と同時に強く地面を踏み込む。それにより、私と鉄屑のゴーレムの間にあった距離が一気に詰められる。


「ほいっ」


 私はゴーレムに向かって高速で右ストレートを放つ。放った右ストレートは鉄屑のゴーレムに叩きつけられる。叩きつけられると同時にものすごい轟音が周囲の空気を震わせる。立て続けに回し蹴りを放ち、その衝撃を利用して私は一度ゴーレムから距離を取る。


「ったく、どんな硬さしてんのさ。私の攻撃を食らっても後退するだけとか、これ作ったやつ絶対やばいやつじゃん」


 私は改めてゴーレムを観察する。私よりも二倍くらいの高さはあると思う。手足はそこまで長くなく、特徴的なのは体が真っ黒な球体だということだろう。一応口と目は付いているが、お飾りにしか見えない。


「うーん、防御力はかなり高いんだけど、あの手足だとリーチはないし、攻撃力はそこまでないかな?」


 ただ防御力が高いだけならこちらもそれ相応の攻撃を仕掛ければなんとかなると思う。


 そう思った瞬間、ゴーレムからまた無機質な声が発せられる。


『対象者の戦闘レベルが基準値を超えました。これより防衛機構レベル2から4を飛び、防衛機構レベル5を選択します』


 ガチャンガチャンと音を立てながらゴーレムの背後で何かが出来上がっていく。


「ちょいちょい、うそでしょ...?」


 それが完成して私は冷や汗を流す。あれは見たことがある。


 確か四天王の1人『真理の探求者(トゥルースシーカー)』の二つ名を持つ同僚が『銃』なる物を作っていた。それに酷似している。だが、あの時は手に収まるくらいのものだったが、目の前にあるのは私の身長くらいの長さで銃口が大木の幹くらい太い。


 前に作っていた手に収まるくらいの豆鉄砲ですら威力は想像をはるかに超えていた。じゃあ目の前のそれの威力は?なんて聞かれた日にはこう答えるしかないと思う。


「マジやばい!リリア、伏せて!!!」


 リリアは咄嗟のことで気が動転しているのかあわあわ言いながら両手で頭を抱えてその場で伏せる。


 私は左右に高速で走るが、見た目に反してゴーレムはその場で回旋しながら私から標準を外さない速度で付いてくる。よく見るとゴーレムの足裏には車輪のような物が取り付けられていた。


「ったく、なんでこんな高性能なゴーレムがこんな辺鄙へんぴな森にいるのよ!」


 私は動きながらも考える。まだまだ速度は上げられる。だからおそらく奴の攻撃を避けることはそんなに難しくはない。だが、その攻撃を避けたらどうなるだろうか?今から言う例えはあまり現実的ではないが、想像してほしい。数十体のドラゴンが同時にブレスを吐き、なおかつそれらのブレスを束ねたらどうなるか。避けれたとしたら周りに甚大な被害を及ぼす。攻撃の威力は距離が遠くなるほど弱まっていくが、ある程度強力な攻撃なら遠距離に対してもかなりの威力を発揮する。そうなると目の前の巨大な銃は森を焼き尽くすだけではなく、下手したら村まで届く可能性すらある。


「あぁぁぁぁ、どうするどうする。頑張って防いでみるか?うん、そうするか。いや、でも相当な力が必要そうだし...」


 私がそうこうしている間にもチャージが進んでいく。てか、チャージ長いな。こんなに長いんだったらさっさと攻撃しとくんだった。


「てか、これに対して冒険者は死なずに戻ってきたの?現代の冒険者のレベルって高すぎじゃない?って、今はそんなこといいや」


 ちらりとリリアに目を向けるとプルプル震えながら伏せていた。めっちゃ可愛い。後でやってもらおう。


 そんなことよりもまずは目の前のことに集中しなきゃ。うーん、うーん...。


 私は考える。どうすれば被害が一番少なくなるのかを。


「っ!?そうか、空だ。空に逃げればいい!」


 私はそう判断してから背中に小さくしていた蝙蝠の翼をバサッと広げる。


「えっ!?レミリアさんの背中から翼が生えました!?」


 リリアが私の姿を見てびっくりしている。そんなリリアを尻目に、私は上空へと高く飛び上がる。


「久しぶりに飛んだけど、感覚は鈍ってなさそうかな。さーて、来るならきなよ」


 その言葉を合図に、ゴーレムは主砲を発射する。私は極限まで引き付けてから上空でグルリと体を回転させて回避する。


「今度はこっちの番だよ!」


 私は手のひらをゴーレムに向ける。


「君の動きを制限させてもらうよ。影たち、そいつを捕まえて!」


 私の指示を聞き、木の影が真っ黒い手となって一斉にゴーレムへと伸びていき、ゴーレムの至る所を掴んでいく。ゴーレムは振り払おうとその場でもがくが、影の手はがっしりと掴んで離さない。


「それじゃあ行くよ!」


 私は自分の手首を爪で切り裂く。すると、私の手首から血がポタポタと音を立てて落ちるが、これでいい。


「血よ変化しろ、『螺旋槍スパイラル・ブラッド』!」


 私の言葉と同時に滴り落ちる血が集まり変化し、螺旋状に変化する。持ち手を作るのも忘れない。


 私は螺旋状に変化した血でできた槍を持って虚空を蹴って上空から高速でゴーレムへと迫る。


「どぉりゃぁぁぁぁ、貫けぇぇぇぇ!!!」


 ゴーレムへと私の持つ武器が衝突し、火花を散らす。ゴーレムの体はやはり硬く、貫くまでにはいかない。 


「こんな物で終わると思うなよ?」


 私はニヤリと不敵の笑みを浮かべる。その瞬間、螺旋状の武器は高速で回転し始め、ゴーレムをガリガリと削り始めた。次第に衝突部位からヒビが入り始める。


「まあなかなかの硬さだったけど、まだちっとばかし足りないかもね」


 私の言葉が言い終わると同時に、激しい音を立ててゴーレムは崩れて散った。


「ふぅ、これで終わり、かな?」


 私は振り返ってリリアに向かってVサインを向けた。


 私の戦闘が終わったのを見計らってリリアが木の影からトコトコと走ってくる。


「レミリアさん、すごいです!なんかこう、ばーってなってずがーんって!」


「ありがとう、まあ私の力はまだまだあんな物じゃないよ」


「ほぇー、まだまだなんですね!凄すぎます!あの姿をギルドのみんなにも見て欲しかったです!!」


 リリアは私とゴーレムの戦闘を見て興奮していた。どうやら伏せながらもしっかりと見ていたようだ。


「そんじゃこの館を調べるとしますかね」


「はい!」


 私とリリアは足をそろえて館に続く門をくぐっていった。


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