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第五話 自己紹介

「あ、申し訳ありません。まだ名乗っていませんでしたね」


 そう言ってから手に持っていたティーカップを机に置いてから受付嬢は自己紹介を始める。


「私、このギルドで受付嬢をしています、シャノンと申します。よろしくお願いします!お困りごとがあればなんでも相談しますので、その時はぜひ当ギルドへお越しください」


 シャノンは人差し指と親指で輪っかを作りながら言う。どうやら相談料は取るらしい。そこはギルドの受付嬢のお仕事の一環として受けるのか。ほんと、お仕事熱心なのか、それともお金が欲しいだけのただの亡者なのか判断しかねる。


 私はとりあえず手を差し出してよろしくと一声かける。


「それではリリアさん、お茶でもしながら早速報告を聞いてもいいですか?」


 シャノンがズズッとお茶を啜る。


「わかりました。私は前回と同じように魔王城跡地に行ったんですけど・・・」


 それからリリアが魔王城跡地で起こったこと、まあ主に私とどう出会ったか、ここまでの道のりなどを語った。ただ、話の中で私と会ったと言うだけで、私のことに対して何も開示しなかった。おそらくペラペラと私のことをしゃべるのは気が引けたんだと思う。そもそも私のこと自体あまり話していない。話したことといえば、種族は吸血姫で一般の吸血鬼よりも上位の種族であること、それから吸血鬼が本来弱点であるもの全てが効かないことくらいだ。


 私は喋る番が来るまで話に耳を傾けながらクッキーとお茶をたっぷりと堪能した。


 うーんっ、人に出してもらうお菓子とお茶ほど美味しいものはない!





 それからリリアの話が終わり、シャノンが一口お茶を飲む。


「なるほど、それでそこの方は...」


「自己紹介がまだだったね」


 私はソファーから一度立ち上がり、漆黒の丈の長いワンピースの裾をちょこんと摘んで頭を下げる。


 はたから見たら上級貴族の令嬢にも見えたと思う。それだけ私のお辞儀は決まっていた。


「私の名前はレミリア、レミリア・ブラッド。元魔王軍の四天王で元悪党だよ。よろしくね、シャノン」


 私がそう言うと、シャノンは勢いよく立ち上がって震える指先を私に向けてきた。


「え、え、嘘でしょ?魔王軍四天王のレミリアって言ったら四天王最強、下手したら魔王よりも強いと言われていたあのレミリア?」


 驚きすぎてシャノンの口調がに戻っている。


「まあ元魔王軍だけどね。私の名前を知ってるんだね」


「あ、当たり前です!魔王軍のレミリアといえば四天王『鮮血の王(ヴァーミリオンロード)』の二つ名を持つ人物だって言うのはこの冒険者家業をやってれば誰だってわかることです!」


 私はチラリと隣を見て目と口を大きく開けて固まっているリリアを親指でクイッと指差す。


「リリアは私が元四天王だって気がつかなかったみたいだけどね」


「そ、それは!まだ、経験が浅いだけだと、思います...」


 シャノンの言葉が段々と弱々しくなっていき、最終的には辛うじて聞き取れるくらいになった。


「まあ元ってだけだし、今は普通のレミリアだから」


「んー、まあそう言うことにしておきましょう」


 私はソファーに座ってから未だに固まっているリリアの両肩を掴んで揺さぶる。


「おーい、リリアー。戻っておいでー」


「はっ!?」


「あ、戻ってきた」


 リリアは首を左右にぶんぶんと振る。なんだか小型犬が水を払っているみたいで少し愛らしい。


「だ、大丈夫です。まさか四天王だとは思いませんでしたが...」


「まあ言ってないし仕方ないよ。それにもう300年も前の話だしね」


 リリアは『それもそうですね』と言って何度も頷いているが、シャノンは『いやいや、300年経ってもまだまだ有名だから』と呟いていた。


「その、レミリア様はこれからどうなさるおつもりで?」 


 私は一口お茶を飲んでから口を開く。


「うーん、特にどうするとか決めてないかなぁ。とりあえず自由に生きてみようとは思うけど...」


 シャノンはバンっと机を両手で叩いてからずいっと顔を近づけてこちらを凝視している。なんか目が若干血走っていて怖い...。


 現に隣のリリアは肩をビクッと震わせてから目線を漁っての方向に逸らしている。


「提案なんですが、冒険者になってみませんか?」


「え?私が?」


「そりゃもちろん!」


 いきなりすぎて頭がついてこない。


「うーん、とりあえず話だけ聞いてもいい?」


「えぇ、もちろんです!この村のギルドから実力者が輩出されたと世間に知れ渡れば...ぐへへ、もっと冒険者が増えて人がいっぱい増えて、いつしか巨大な街に...」


 うん、シャノンの野望?が少しだけ見えた気がした。そこまで大きな街にしたいならそんなめんどくさいことしないで、王都や帝都とかの大きな街のギルドに就職すればいいのにとは思うけど、口にするのは野暮ってものだと思う。


「それじゃあ《《簡単》》に冒険者のことについて説明してね」


 私はそこを強調して言う。


「ええ、わかりました!冒険者とはなんなのか、また、冒険者の始まりから説明させていただきますね」


 あぁ、どうやら簡単には説明してくれないらしい。


 私は諦めてシャノンの言葉に耳を傾けた。


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