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第三話 久しぶりの人の街

「ところでレミリアさんは日中に外に出て大丈夫なんですか?」


 隣を歩くリリアがそういえばみたいな顔をして問いかけてくる。


 現在はリリアが拠点にしている村へと移動している最中である。魔王城跡地から村まではそこまで距離はないらしく、半日もあれば着くそうだ。とは言っても魔王城跡地を出たのが夕方なので、途中で野宿をする。私はむしろ夜の方が調子が出るが、リリアは普通の獣人なので日中に活動する。そうなるとリリアに合わせた方がいいだろう。寝溜めも十分できてるし、やろうと思えば何日でも徹夜できると思う。と、話がそれたので元に戻そう。


 私は人差し指をピンっと立ててから軽く説明する。


「確かに普通の吸血鬼なら日中に外に出歩くなんて無理だね」


「てことはレミリアさんは普通ではないんですか?」


 私は胸を目一杯張って頷く。


「こう見えても吸血鬼の中の最上位種だからね。普通の吸血鬼がダメなことが大丈夫なんだよ。例えば聖水なんかも問題ないし」


「ほぇー、そしたらレミリアさんは何が効くんですか?」


 私は少しだけ『んー』と考える。


「ピーマンかな」


「ピーマン、ですか。それはまた意外ですね。吸血鬼だとニンニクだって言いますけどね」


「あぁ、ピーマンはただ苦手で食べれないってだけだよ」


「そしたらほぼ無敵じゃないですか」


「んー、そうかも」


 私とリリアの間に静寂が訪れる。


「レミリアさんはまた人類と敵対しようとは思わないんですか?」


「何言ってんのよ、敵対しようとしてたら戦争ほっぽって寝たりなんかしないし、こうやってリリアとお話しなんてしてないと思うよ」


 リリアは確かに、みたいな表情をしている。それから私たちは他愛無い話をしながら村へと向かった。





 あれから他愛無い話をしてから野営して寝た。


 今現在、目の前には木でできた柵でぐるっと大きく囲まれ、木造の家が所々に並んでいる。


 村って言ってたからもっとこうこじんまりしたのをイメージしていたけれど、ここの村はそこそこ大きいらしい。ただ、木の柵で魔物の侵入を防げるのかは少し不安に思うところはある。


 私たちはそのまま村の入り口まで行き、門番に挨拶してから村の中へ入った。門番は私を見て一瞬目を見開いたが、特に何事もなく通してくれた。


 どうやらそこまで私に対して悪い感情を持っていないらしい。


 外から見た時も所々から声が聞こえてきてはいたが、中に入るとそれが顕著になる。ご近所さん同士で仲良く話をしていたり、出店のおっちゃんが声を張り上げて呼び込みをしていたりする。


 私はそんな様子をキョロキョロと見る。


 だって仕方ないじゃん。人の街なんて昔に少し行ったくらいだし、戦争中はなかなかお忍びで遊びに行けなかったんだから。


「やっぱり人の街は珍しいですか?」


 隣にいたリリアが歩きながら尋ねてくる。


「まあね、なんて言ったって300年ぶりの人里だからね。と言っても、昔とそこまで変わりはなさそうだけどね」


「ほぇー、前も人の街に行ったことあるんですか?」


「うん、お忍びで遊びに行ったものだよ。ただ、戦争中だったからそこまで高頻度で遊びに行けたわけじゃなかったんだけどね。でも、今は戦争中じゃ無いわけだし、たっぷりと人里を堪能しますか!」


 隣でリリアが『あはは...』と苦笑いしている。


 それから少し歩くと、一際大きめの建物に到着した。これまた立派な木造二階建て、そして両開きの扉の建物だ。中からは人々の喧騒が聞こえてくる。


 リリアはそのままスタスタと歩いて行って、両開きの扉をゆっくりと開ける。私はそんなリリアの後ろをついて行く。


 扉を開いた瞬間、建物内にいた人たちの声が一際大きく聞こえてきた。それからぶわっと酒の匂いが鼻腔を突き抜ける。


 これは、エールの匂いかな?


 私はすんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。そんな私を不思議そうな顔でみつめてくるリリア。


「レミリアさん、行きますよ」


「え、あぁ、うん。それじゃあ行こっか!」


 私はリリアの隣に移動してから並んで建物内に足を踏み入れた。

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