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79 久しぶりの再会


 みなさんおはようございます。ヒナタです。


 あれから何事もなく山脈を抜けることができた。

 山道を下っていくと、目の前には綺麗な広野が広がっていた。

 そして広野の先には大きな城壁が見える。

 あれが王都か……。


「ママ! おっきなお城が見えるよ!」


 そして城壁の奥には大きな城が見える。

 あれがベルフェストの王城なのだろう。

 サンドラスと同じで大きな城だ。

 ようやく辿り着いたって感じだ。

 初めての他国で初めての獣人族に会える……。

 猫とかいるかな。

 きっと可愛いに違いない。


「コハク、もうすぐ着くよ」


 王都の門に辿り着き、門兵にギルドカード及びコハクの身分証明書を提出する。

 顔の確認と馬車の中身を確認される。


「問題ないな。入れ!」


 いよいよ初めてベルフェストの王都に入る。

 門を(くぐ)ると目の前には沢山の住民と商店街で盛り上がっていた。

 そしてちらほら獣人がいるのも確認できる。

 あれは……虎さんかな? あっちには兎さんもいる。

 耳と尻尾がなんともキュートだ。

 ぜひ触れせていただきたいものだ。


「ヒナタ、とりあえず冒険者ギルドにお願い」

「了解」


 カレンに言われた通りシャルの案内の下、冒険者ギルドを目指す。

 道中辺りを見渡してみても、サンドラス王国の王都と街並みも似ている感じがする。

 やっぱり異なるのは種族くらいのようだ。


 でもここにいる獣人族でも私の隣にいるのが竜だとは思わないはずだ。

 そもそも竜が人間の姿になるのが有り得ないだろう。

 ウルレインにいた時に、シャルが時間を作って竜について調べてくれたらしいけど、結局コハクが人型になれた理由は解明できなかったらしい。

 やっぱり私の魔力で生まれたのが影響しているのかもしれない……。

 それか人型になれるスキルを取得したのか……。

 人間の魔力で人型になるってことを証明するには少なくても卵が2つ必要だ。これの証明をするのはかなりの手間と時間が掛かるだろう。

 それにコハクが保有しているスキルについては、詳細に調べるにしてもコハクが成人してからだから無理だ。

 そもそもコハクの成人っていつなのかも分からないのもあるが。

 人間と同じで生まれてから15年経てばいいのかな?

 それとも人間の年齢に換算した15歳なのか。……ってか竜の歳の数え方は知らない。

 犬だったら実年齢に7を掛けるとかあるけど……。

 悩み事が増えそうだな。


 でも今は、コハクが楽しく人間の生活に溶け込んでくれればそれでいいとも思っている。

 私の生涯でたった1人の娘だからね。

 ゆっくり成長していってほしいものだ。


「ヒナタさん、あそこです」


 コハクについて考えている間に冒険者ギルドが見えてきた。

 冒険者ギルドの前で馬車を止めて、中へと入る。

 中に入ると吹き抜けの3階構造だ。

 そして冒険者の中には獣人族もいる。

 なんか新鮮だね。


「あたしちょっと行ってくるよ」


 カレンがお金を引き出すために前世で言うATMに向かった。

 私達は特に用はないけど辺りを見渡す。

 やっぱりここでも他の冒険者から視線を感じる。

 新入りみたいな雰囲気は醸し出しているつもりはないけど、初めて見る顔だから新鮮で見ているのかな。

 それともこの場にそぐわないコハクがいるからか。

 冒険者ギルドは子供が来る場所ではないから、変な雰囲気になっているのかもしれない。


「ごめん! 待たせたな!」


 カレンは用事が終わったのか、走って戻ってくる。

 手には沢山のお金が詰まった皮袋を持っている。

 なんて不用心なんだ。こんな大勢の前で大金を持っていることがバレたら命を狙われかねない。

 それにカレンは絶世の美女だ。ついでに身体も美味しく頂こう……なんてこともあり得る。

 カレンはそういうことに疎いから、少しは自分の身体が男を興奮させることに気が付いてほしい。


「カレン、私のアイテム袋にしまうよ」

「あ……そうだな。頼むよ」


 私は皮袋をカレンから受け取り、無限収納にしまう。

 そして要件は済んだので冒険者ギルドから出ようとすると……。


「あれ? カレンじゃないか?」


 後ろを振り返ると、背が高く立派な鎧を纏った男性がカレンに声を掛けてきた。


「あ? なんだ、ルカスか……」

「そうだよ! それにシャーロットもいるし、久しぶりだな!」

「お久しぶりです、ルカス様」


 カレンもシャルもどうやら知り合いらしい。

 私とコハクは完全に蚊帳の外だ。

 でもカレン達は元々ベルフェストで冒険者稼業をしていたんだから知り合いがいるのは当然だ。

 それにこのルカスという男性はカレンにもタメ口で話しているし、若く見えるから同い年くらいに見える。


「どうしたんだ? もうベルフェストからは出て行ったと聞いていたが……」

「ちょっと故郷に用事があったんだよ」

「あー、確かスリープシ村か。何の用事なんだ?」

「ルカスには関係ねぇよ」

「ははは! カレンは相変わらずだな!」


 どうやらカレンのこの態度はどこでも一緒のようだ。

 実は昔はもっと女の子らしい一面を持っていたと期待したが……残念だ。


「それに見たことのない女性と女の子もいる様だし……。カレンの子供か?」

「ばか! そんなわけねぇだろ!」


 コハクはカレンに全く似ていない。

 まあ、私にも似ていないけど。

 だとしてもカレンの子供って言うのはちょっとデリカシーなさすぎじゃない?


「ははっ! 冗談だよ!」


 どうやら冗談だったようだ。

 第一印象としてはこのルカスという男性は気さくでいい人なのかもしれない。

 それにカレンに冗談を言える仲だというくらいに親しいみたいだ。


「ルカスこそ王国騎士だろ? 冒険者ギルドに何の用だよ」

「カレンよく聞け。俺はもう王国騎士団副隊長まで出世したんだ。どうだ、すごいだろ?」


 話が噛み合っていない。

 カレンの質問に対して、返答した内容は自分の出世自慢。

 まあ、年頃の男性なら気になる子に何でもいいから自慢したくなるよね。

 カレンは少しだけ呆れているけど。

 でもこの2人を見ていると面白いと感じるのは私だけだろうか。


「貴族だとコネもあるから出世も早いんだろーな」

「カレン失礼だよ!」

「ばっか! ちゃんと実力で出世したんだよ!」


 このルカスという男性は貴族だったようだ。

 あまり貴族っぽくない態度だが平民目線でいけば親しみやすい貴族だと感じる。

 こういう貴族ばかりなら接しやすいんだけどね。


「で? なんで冒険者ギルドに?」

「あー、最近冒険者の女性が行方不明になってな。それで俺自らギルマスに情報を聞きに来たんだ」

「昔から変わんねーな」

「全くだよ……」


 どうも昔から人攫いが横行しているような口ぶりだ。

 前にカレンが言っていた違法な奴隷売買が頭をよぎる。


「まあ、せっかく会えたんだ。時間ができたら飲みにでも行こーぜ」

「……時間ができたらな」

「では、そちらにいる見目麗しい女性もよかったらどうですか?」

「え、私もですか?」


 突然ルカスが私の方を振り向いて話し掛けてくる。

 麗しい女性って言われるとなんかむず痒いんだけど……。


「もちろんです。カレン達のお仲間なんですよね? でしたらご一緒にどうですか?」

「あ、ではその時はお邪魔しますね」


 無難な返答をしておく。

 正直行きたいとも思わないけど、貴族だしカレン達の友達なら邪険には扱えない。


「是非。楽しみにしていますね」

「こちらこそ」

「さっさと仕事に戻れよ」

「はいはい。じゃあなカレンにシャーロット!」


 そう言ってルカスは冒険者ギルドから出て行った。

 なんか嵐のような人だったな。

 でも悪い人ではなさそうだし、仲良くして損はないだろう。


「すごい仲が良いんだね。カレンの元カレ?」

「ちっげぇよ! 前に騎士団と一緒に魔物討伐した時に知り合いになっただけだよ」


 何だ……仲が良かったからちょっと期待したのに。

 カレンやシャルと恋愛話をしたことがないから、故郷に帰ってくれば恋人くらいいると思ったんだけどな。

 もしかしたらカレンにも想い人がいて愛を育みたかったけど、貴族に目をつけられたことでその想い人への被害を考えて想いを断ち切ったとか……。

 そんな恋愛小説みたいな展開があったとしたら面白かっただけどね。


「そんな顔で見たって本当に違うからな」


 おっと。

 私がニヤついていたのに気が付かれたか。


「ごめんね。冗談だから」

「どうだか」


 カレンが不貞腐れてしまった。

 あちゃー。やっちゃったな。

 どうやらカレンには恋愛系の冗談は通じないようだ。

 ……よし、こうなったら。


「ごめんってば〜!」

「ばか、離れろ!」


 私はとりあえずカレンに抱きついた。

 カレンが照れたのか、私を振り払おうと手で押し返してくる。


「コハクも〜!」


 そしてなぜかコハクまでカレンの足に抱きつく。

 今のカレンはモテモテだ。


「ふふっ。遊んでないで、宿でも行きましょう?」


 シャルにイチャついているところを止められる。

 私とコハクはすぐにカレンから離れた。

 ちょっとカレンを揶揄いすぎたかな。

 でも普段クールな女性が照れて頬を赤らめているのを見ると可愛いんだよね。

 つい揶揄いたくなってやっちゃったよ。


 そして冒険者ギルドを出て、馬車に乗り込み宿へと向かう。

 以前にカレン達がよく泊まっていた宿だそうだ。

 馬を厩舎に入れて、宿の中へ入ると受付に1人の女性が立っていた。


「いらっしゃ……カレンじゃないかい! それにシャーロットまで……」

「久しぶりだな」

「お久しぶりです」


 どうやらカレン達は宿屋の人とも仲が良かったみたいだ。

 女性は受付から出て来てカレン達に近づいた。


「どうしたんだい。急に来なくなったから心配したんだよ……」

「ちょっと色々あってな……。こっちではもう仕事はしてないんだよ」

「そうだったのかい……。でもよく来たね。部屋は……4人部屋でいいかい?」

「あぁ、それでお願いするよ」


 そして私達は充てがわれた部屋へと移動する。

 この宿屋は内装がとてもおしゃれで、変わった蝋燭が置いていたりする。

 匂いはしないからアロマキャンドルではなさそうだ。

 でも蝋燭一つでここまで雰囲気が良くなるんだね。


「いや〜なんか今日は疲れたな」

「久しぶりに会った人もいて懐かしかったね」

「そうだな……」


 久しぶりに故郷に帰ってくると、街並みも人の雰囲気も変わっていることが多いけど、この2人を見ているとそうでもなさそうだ。

 2人の思い出のまま今も健在しているのだと思う。


 そして少し休んだ後は、食堂に行ってカレン達が昔話で宿屋の女性と盛り上がっていた。

読んでいただきありがとうございます!


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