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74 カレンの思い

次回から他国編になります。


─カレン視点─


「カレン先生、魔物はまだ早いんじゃ……」


 あたしはルークを連れて森へとやってきた。

 一応ルークの剣術の指南をすることになったから、一番手っ取り早い魔物討伐をすることにした。


「何言ってんだよ。男なんだからもう少し自信持てよ」


 とは言っても、今まで剣術の先生とかやったことない。

 あたしの剣術は完全に我流だ。

 誰から教えてもらったわけじゃなく、いろんな先輩冒険者の剣術を盗んであたしなりに改良して出来上がったものだ。

 そんなあたしが剣術の指南なんて……。


「あの日から毎日素振りしかしていないんですよ……?」


 ルークはあたし達と薬草採取に行った時から毎日特訓していたようだ。

 どうやって教えたらいいか分からなかったから、とりあえず素振りだけはするように教えた。

 それなのに健気にやっているんだな。

 孤児院の子供達のために頑張っているルークの期待に応えたい。


「大丈夫だ。あたしがいるんだからな」


 しかし中々魔物がいない。

 ルークがいるから森の奥地には行かないようにしているが、この辺りにはいないのか。

 こういう時にヒナタのスキルは便利だな。


 最近はヒナタと一緒に依頼を受けることも減って寂しいな。

 ヒナタがパーティに入ってからどうしても頼りきりになっているような気がする。


 初めて会ったワイバーン討伐の時にはかなり驚いた。

 あの時はこんな小さな少女がワイバーンを1人で討伐するとか冗談だろって思ったけど。

 でも、実際にヒナタの魔法を見ると空は飛ぶし、見たことのない魔法でワイバーンを蹂躙していって目の前で起きたことが全く信じられなかった。

 でもあの時、ヒナタがいなかったらウルレインも多数の死者が出ていたかもしれない。


 それにヒナタのスキルなのか家を持ち運んでいるのも驚いたものだ。

 さらには料理も上手くて、魔法も冒険者の中ではトップクラスだろう。

 あれだけ魔法を使っても魔力が有り余っているなんて見たことがない。

 たぶんサンドラス王国で一番だと思う。

 ヒナタがどこまで自覚しているが分からないが……。


 そして初めてパーティを組んでのゴブリンキングの討伐の時も、偵察で姿が消えていたのも驚いた。

 あのスキルは闇組織の連中が持っているスキルだろうが。

 ヒナタがあんな連中と同じとは思わないが、一体いくつのスキルを持っているんだ。

 でも人のステータスを聞くのはマナー違反とされているから聞くのは憚られる。


 スキルは多くても4つくらいのはずだ。

 いや、4つでも多い方だけど……。

 それでもヒナタはいくつ持っているか分からない。

 あたしが知っているスキルでも風魔法、土魔法、水魔法、魔物探知あとは隠密くらいか。

 ヒナタが言わないだけで他にも多数のスキルを持っているかもしれない。

 もしヒナタが悪人とかだったらと思うと恐ろしい。


 ゴブリンキングの後はコリン村でのアンナの母さんの病気の治療もしていたな。

 聞いたこともない症状だったけどヒナタは何故か知っていた。

 薬師から薬を調達するわけでもなく、豚肉で治るとか何で知っていたんだよ。

 ヒナタは自分の過去を話したがらない。

 だからあたし達も聞かない。

 親しい仲でも礼儀ありだからな。


 アンナの母さんの病気が治った後にトロールが出現した時は流石にまずいと思った。

 トロールは回復能力が高いから、いくら魔法で攻撃しても火魔法を持っていないヒナタでも勝てないと思った。

 あたしもトロールの討伐経験はあったが、何人もの冒険者でやっと倒せたくらいだ。

 一度はコリン村を見捨てて住民の避難を優先させようと思ったが、ヒナタが魔法で氷漬けにした。

 あたしがゴブリンメイジの魔法で負傷した時にも見たが、まさかトロールを一瞬で氷漬けにできるほどの威力があるとは思わなかった。

 でもヒナタもあそこまでの威力が出るとは思っていなかったみたいだから、一部の森まで氷漬けになったのはやり過ぎだと呆れたものだ。

 ヒナタはしっかり者で頼れる存在だけど稀にドジをするからほっとけない。

 でも逆に言えば、完璧人間じゃないからこそ愛される存在なのだろう。

 たまに天然なところを見るとあたし達と同じ普通の人間だと感じられる。

 ……ってヒナタに失礼かな。


 タラサの街ではヒナタが海鮮丼にテンションが上がっていたな。

 あんなヒナタを見たのは初めてだったかもしれない。

 でも海鮮丼は確かに美味かった。

 今度はコハクとも一緒に行きたい。

 でも銅像があるかもしれないからヒナタは嫌がるかもな。


 そしてヒナタのケートスの討伐か。

 あたし達は宿で待っていたけど、中々帰ってこないからシャルと一緒に心配したな。

 あの時はシャルが泣き出したっけ。

 ヒナタさんが帰ってこないってずっと泣いていた。

 啜り泣くシャルを宥めるのが大変だったな。


 今はシャルも自分に自信が付いてきたようだけど、昔は良く泣いていたからな。

 泣き虫なのは治らないのかもしれない。

 そしてケートスを討伐したヒナタが、タラサの街で女神様の御使い扱いされていたのは笑いを堪えるので大変だった。

 ずっとヒナタが引き攣った顔をしていたのが本当に面白かった。


 王都に帰ってきてからは、ヒナタが魔法の勉強をするって言うからシャルと2人でギルドに行った。

 あんなに魔法がすごいのに他に何を勉強するって言うんだよって思ったけど、これはチャンスだと思った。

 いつもヒナタに頼りきりだからこの機会に少しでも強くなりたいってシャルと依頼を受けた。

 それなのにオークジェネラルに捕われるとは……。

 あの時ヒナタが助けに来てくれなかったらどうなっていたか……。

 ヒナタにも心配掛けちまったな。


 ウルレインではヒナタがサーシャお嬢様の家庭教師をすることになってシャルと2人で依頼を受けることが増えた。

 でもヒナタに頼らずに依頼を受けていたからあの期間でかなり強くなったと思った。

 そしてヒナタの家庭教師も終わって、やっとあたし達が強くなったところ見せてやれるって思ったのに、ヒナタが1人で依頼を受けることになった。

 少し寂しかったけど、ネメアーの討伐なんてあたし達だと足手纏いになると思ったからヒナタを見送った。

 しばらくして帰ってきたヒナタが何故かバスタオル姿に卵を持っていたから意味がわからなかったけど、すぐに着替えて家を出て行ってしまうし……。

 碌な説明もしてくれなかったから、見たことのない真っ白な卵を昼夜問わず見守った。

 後から白竜の卵って聞かされた時は驚いたぜ。

 それくらいは説明してくれたらよかったのにな。


 白竜のコハクが生まれてからはまたヒナタと依頼を受けられなくなった。

 仕方がないとは言え、ヒナタと一緒に依頼を受けたい思いも強かった。

 コハクが人間の姿になれるようになってからのオーク討伐では、久しぶりにヒナタと一緒だったのが嬉しかった。

 あたし達が強くなったことを見せられるって思った。

 でもコハクに邪魔されちゃったな……。


 しかしその後にオークジェネラルが現れた時は、リベンジのチャンスだと思った。

 以前よりも強くなっている自信もあったから、ヒナタに頼らずに倒せるところを見せたかった。

 前回と同じようなスキルで気圧されて苦戦したがなんとか勝てた。

 でもシャルがさらに自信を失っちゃったかもな。

 シャルもあたしと同じでヒナタの足手纏いになっていることを気にしていたから、目が覚めたシャルは中々泣き止まなくて大変だったけどなんとか立ち直ったようで安心した。


 ……なんか振り返っちまったな。

 あたしらしくもない。

 ヒナタと出会ってからの日々が何でか楽しいんだろうな。

 こんな日々がずっと続いて欲しいと思ってしまう。

 でもヒナタの足手纏いにならないようにあたしはもっと強くならないといけない。

 守られるよりも頼られる人間になりたい。

 気弱なシャルを無理矢理冒険者に誘った負い目もあるしな。


「カレン先生どうしたんですか?」


 考え事していたのがルークも察したか。


「いや、何でもねぇよ……」


読んでいただきありがとうございます!


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