62 謎の少女の正体は
誰なんだ、この可愛い少女は。
いつの間に私のベッドに入り込んだ?
そしてコハクはどこにいったの?
私は自分の部屋を見渡す。
しかしコハクはいない。
あれだけ私から離れるのを嫌がっていたのに、私を置いてどこにいったんだ。
「ママ!」
急に寝ていた少女が私に抱きついてくる。
っていうかママってどういうこと?
「ちょ、ちょっと待って! ママってどういうこと?」
私はコハクのお母さんのつもりだけど、この可愛い少女のお母さんになった覚えはない。
少女は首を傾げて、私を見つめる。
「あれ?」
女の子は両手で自分の身体を触りはじめた。
頭、顔、胸、お腹、お尻、足の順に触っていく。
え、どうしたの?
「人間の姿になってる!?」
自分の姿に驚いたのか、ベッドから落ちた。
どうしたんだこの少女は?
人間の姿になっているって……。
……ちょっと待って。この子、私のことをママって言ったよね?
「え、もしかして……コハク?」
「そうだよ!」
両手をあげて肯定してきた。
ちょっと待って、本当にコハクなの?
コハクって女の子だったんだ。
人間の姿になったら女の子だってわかる。
身長は小さい。人間だと5歳くらいの見た目かな。
髪は綺麗な白髪で背中まで伸びている。
そして何よりの証拠として股にあれがあるのだ。
いや、ないのが正しい表現か?
ちょっと表現しにくい。
とにかく生殖器がある。
完全に女の子だってわかるのだ。
「……ほ、本当の本当にコハク?」
「だからそうだってば!」
この感じはコハクだ。間違いなく。
最近反抗期かと思うくらいの態度が多かったからね。
でも、なんで急に人間の姿になったの?
本人も分かっていないみたいだし。
「な、なんで人間の姿になっているの?」
「んー、よく分からないけど、昨日の夜に人間の姿になればママたちと一緒にお外で遊べるって思ったの!」
ということは、コハクは人間の姿になって私たちと家の外に行きたいと願ったってことか。
そうしたら人間になっていたと……。
私が魔力を与えた影響もあるのかな。
不思議すぎて頭が混乱しているが、一度割り切った方がいいのか。
竜は人間の姿になれるんだ。
「ちなみにだけど、竜の姿に戻れる?」
「うん! やってみる!」
一応確認だ。
コハクの意志で竜と人間の姿に変われるなら、これからのことを考えると不都合がなくなる。
なにせ、自分の意志と関係無く変わるのなら安易に外には連れていけない。
これは重要な問題だ。
コハクは目を閉じて身体に力を入れている。
なんかこの姿すごい可愛い。
私がそんなコハクを見守っていると……急に見慣れたコハクの姿になった。
「キュイー!」
コハクが飛び回って喜んでいる。
竜の姿だと話せないみたいだ。
でもこれなら安心して街にも出られそうだね。
とりあえずカレンたちとフィリップにも報告したほうがいいよね。
フィリップにはどう説明すればいいんだよ。
私だってこの状況が分かっていないのに。
とりあえず竜の姿のままでいてもらって、1階に降りて朝食の準備をする。
コハクはいつも通り私の頭の上に乗っている。
朝食の準備をしているとカレンとシャルが起きたようだ。
朝食の焼いたパンと牛乳、サラダをテーブルに置いてみんなで食べ始める。
「カレン、シャル。ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど……」
「どうしたんですか? そんな改って」
シャルが私の真剣な顔を見て、首を傾げながら聞いてくる。
カレンはまだ眠たそうにしている。
「実はね……コハクが人間の姿になれるようになったんだ」
「「はい?」」
そういう反応になりますよねー。
2人は私の頭を心配するかのような目で見てくる。
そんな蔑むような目で見ないで。私は正常だから。
「コハク、見せてあげなさい!」
私は立ち上がってコハクに言う。
そしてコハクは言われた通り、目の前で人間の姿になる。
「「えええええええ!」」
私はドヤ顔で2人を見下ろす。
カレンも目が覚めたみたいだ。
「ちょ、ちょ、ちょ……」
「あわわわ……」
この2人の反応は本当に面白いよね。
ギャグ漫画とかに出てくるような反応を見せてくれる。
「あはは! カレンお姉ちゃんもシャルお姉ちゃんも驚きすぎ!」
コハクがお腹を抱えて笑い出す。
コハクが2人を揶揄っている感じが実に面白い。
全裸なのが気になるけど。
「というわけで、私の言った通りでしょ?」
2人は状況が理解できないのか、口を大きく開けて唖然としている。
大丈夫かな、顎外れない?
とりあえず2人にコハクのことは説明したから、後のことは2人からの質問待ちで。
今はコハクの服をどうするか考えなくては。
子供用の洋服を買いに行こうかな。
「な、なんでコハクが人間になったんだ!?」
あれ、カレンは正気に戻ったのようだ。
思ったよりは早かったな。
「なんかね。人間の姿になりたーいって思ったらできたの!」
私の代わりにコハクが答える。
子供らしい回答をするから本当に可愛い。
「いや、だからって……」
「これは夢でしょうか……?」
カレンもシャルも納得していないようだが、こればっかりはしょうがない。
私も納得はしていないからね。ただ割り切っただけだ。
とりあえず私はコハク用の服を買いに行くことを伝えて、マイホームを出ていく。
「どんな服がいいのかなー」
洋服屋に行く途中でコハクの服を考える。
私と同じでワンピース姿でもいいかな。
何着か買ってみてコハクが気に入るか試してみよう。
私がいつもワンピースを着ているから、コハクも同じような格好だったら嬉しいよね。
なんか親子って感じがするし。
あとは下着か……。
ブラは必要ないね。パンツだけ買っていこう。
洋服屋で子供用の服を見繕ってもらい、コハクに似合いそうなものを私のセンスで選ぶ。
白とピンクのワンピース2着と水色のTシャツと黒のスカートを1着ずつ買った。
そしてマイホームに帰ってコハクに着させてみる。
「「「可愛い〜!」」」
「えへへ、そうかな?」
なんというか、白のワンピースを着たコハクが可愛すぎる。
コハクの白髪と合わさって白のワンピースはとても似合うのだ。
やっぱり私のセンスに間違いはなかった。
うん。この姿でフィリップのところに行こう!
あれ? でもこの状態から竜に戻ったら服ってどうなるの?
試したほうがいいよね。今後のために。
一度買ってきたばかりのワンピースを脱がせて、不要になった古着を着せてみる。
そしてコハクは竜へと変わる。
ブチブチブチ!
やっぱり鱗によって服が破れた。
そりゃそうだよね。当たり前だよね。
私の竜装化でも同じ現象が起こったんだもん。コハクも同様の結果になるのは目に見えていた。
今後はコハクが竜に変わるときは服を脱いでからにしないと。
そしてとりあえず人間の姿に戻ってもらって、私とコハクの2人でフィリップのところへ行く。
「どうしたんだヒナタさんと……。そちらのお嬢さんはどちら様かな?」
フィリップが初めて見たコハクに首を傾げている。
とりあえず執務室に入れてもらい、3人になる。
「あれ? 今日はサーシャちゃんはいないんですか?」
「いるんだが、勉学のため部屋にいる」
そういうことか。
サーシャちゃんにも可愛いコハクを見せてあげたかったけど勉強なら仕方ないよね。
「そうでしたか。で、話というのはですね……その、信じてもらえないかもしれませんが、この子は白竜です」
「…………は?」
やっぱりそんな反応になりますよねー。
カレンたちで経験済みだから私は冷静だよ。
でもコハクはこの状況を分かっていない。
コハクはフィリップのことを覚えていないのだ。
一度、生まれた直後に会ってはいるが、寝ていたから覚えていないらしい。
サーシャのお父さんっていう説明だけしている。
「えっと……一体なんの冗談かな?」
「コハク! 見せてあげなさい!」
「分かった!」
このままだと信じてもらえないので、コハクに竜の姿になるように指示する。
あ、もちろん服は脱がせたよ。毛布で隠してね。
さすがに男性の前で私の可愛い娘の裸は見せないよ。
そして竜へと変化したコハクを見てフィリップが驚愕する。
「な、な、な……」
みんなこの反応だな。
まあしょうがないか。
フィリップには落ち着いてもらい、経緯を説明する。
とは言っても、よくわからないことも多いのでその辺は調べるしかない。
というより調べて分かるものなのか……。
とりあえず人間の姿になれるし、意思の疎通もできるので安心してください。という感じで説明した。
フィリップもなんとか納得してくれたので、今後も私が責任を持って育てることを条件として、人間の姿なら街を出てもいいという許可が降りた。
あと今後のことも考えて、コハクの身分証明書を作ってもらった。
年齢的に冒険者登録ができないからね。
話も終わったので、私は屋敷を出てマイホームに帰った。
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