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60 白竜と遊ぶ


 名前はどうしたものか。

 白竜だからってシロとかは安易だしね。

 それなら読み方を変えてハクとか。

 どっちも国民的アニメの犬とかジ◯リに出てくるような名前なんだよね。

 シロとハクは恐れ多いわ。

 だったら、白竜と私の銀髪を合わせて、ハクギンとか。

 んー、なんか違うよね。何より可愛くない。

 私の名前と合わせても語呂が悪いしな。


 私が悩んでいると、カレンが意見を出してくる。


「ヒナタが母親だから対になるようにヒカゲとか!」

「う〜ん……」


 考え方は悪くないけど、この子が女の子だったらヒカゲは可哀想じゃない?

 竜の性別は全く分からない。

 だって生殖器がついてないんだもん。

 だとしたら女の子なのか?

 でも男の子でも生殖器がないのなら、安易に性別が分からないうちに、男の子のような名前はつけたくない。

 できればどっちでも対応できそうな名前がいいよね。

 というかそもそも性別ってどうやったらわかるんだろう?

 いつか性別が分かる時が来るものなのかな。


「で、でしたらプラチナとかどうですか?」

「それは……ちょっと」


 はいはい。白金ね。

 それだとシャルの金髪と合わさっちゃってるから。

 え、もしかしてシャルの子供だと思ってる?

 この子は私の子供だよ。

 私が託されたし、私の魔力で生まれたんだから正真正銘の私の子供だ。

 ただ私のお腹から生まれていないだけ。


 何かいい案がないかな。

 別に私と合わせる必要性もないからな……。

 でも折角だから白竜っていう意味を込めた名前にはしたい。

 これを元にして名前を考えよう。


「……コハクとかどうかな?」


 ふと私の口から出る。

 男でも女でも使えそうな名前じゃない?

 何より可愛いし。

 それに白竜の子供っていう意味も込められている。

 ……あれ? でもジ◯リに出てきてたキャラクターも本当の名前にコハクってあったような……。

 名前が長くて覚えていないや。


「お、いいじゃん」

「いいですね! コハクちゃん!」


 でも2人も気に入ってくれたようだ。

 よし、この子の名前は決まった。

 今日からこの子の名前はコハクだ。


「コハク……」


 私は抱きしめているコハクに向かって名前を呼ぶと、心なしか笑ったように見えた。




 名前も決まったしフィリップを呼ぼう。

 手紙でもいいけど、それだと数日かかりそうだからコハクを2人に預けて私は領主邸に行く。


 いつも通り衛兵に用件を話して屋敷へと入る。

 そしてフィリップの執務室へと案内される。


「こんな朝から何の要件かな?」

「えっと、先日話した白竜が孵化したのでその報告です」

「ほう、無事に孵化したのか。であればその孵化した白竜を見に行かせてもらうかな」


 フィリップに白竜が孵化したことを伝えて、一緒に私のマイホームに来ることになった。

 フィリップが少しだけ笑顔なのが気になったが、馬車に乗せてもらいコハクのいるマイホームへと向かう。




「この子が……」


 フィリップが孵化したコハクを凝視する。

 大人しく眠っているコハクはとても可愛い。


「まさか、白竜の子供を見られる時が来るとは……それにしてもこの白竜は危険ではないのか?」


 なるほど。ここに来るまでに笑顔だったのは白竜の子供を見るという貴重な体験ができることに喜びを感じていたのか。

 確かに白竜の子供を見る機会なんて、普通の人生を送っていれば有り得ないもんね。

 それに危険かって……。

 目の前に眠っているコハクをよく見なさいよ。

 こんなに穏やかに眠っているコハクが危険なわけがない。

 でも第三者からすれば危険な魔物と捉えるのは仕方ない。

 だったら当たり障りのない返答をしたほうがいいだろう。


「私のことを親と思っているので危険はないと思いますよ。でも、今後のことを考えると絶対とも言えません」

「そうだな。しばらくは白竜を連れての外出は控えるようにしておいてくれ」


 それはそうだ。

 もし住民にバレたら討伐対象になる。

 しばらくは私も家にいないといけないかな。

 魔物の知性はあまり期待できないから、私がそばで見守っていないと何をするか分からない。


「分かりました。しばらくは私が責任を持って育てますね」

「ああ。よろしく頼む」

「こちらこそ、白竜をこの街に滞在させていただきありがとうございます」

「ははは。ヒナタさんからの頼みでもあったからね。他の人だったら許可はしなかっただろうな」


 なんかフィリップからかなり信頼されているように感じる。

 まあ、いくら頭の悪い私でも色々と恩を売っているのは分かるからね。

 でもコハクの滞在で全てチャラだ。

 私が最初に辿り着いた街がウルレインでよかったよ。

 普通の貴族ならこの白竜を悪いことに利用しようと考えるかもしれないからね。

 フィリップは本当にいい貴族だ。


「では、私はこれで失礼する」

「はい。わざわざ来て頂きありがとうございました」


 こうしてフィリップはマイホームから出ていき、私の子育ての日々が始まった。


 あれから数日経ったが、コハクは基本的に私にべったり。

 本当に私を親と認識しているようで、離れるようとすると嫌がるから常に一緒にいる。

 料理を作る時も、お風呂に入る時も、寝る時も一緒だ。

 というより1人で歩けるようになってからは私の後ろに付いてくるのだ。

 ここまで一緒にいると愛着が湧きすぎて私も離れたくない。


 でもたまには私も外に出たい。

 依頼を受けて身体を動かしたい。

 このままだと絶対に太ってしまう。

 カレンとシャルは私を置いて冒険者ギルドにほぼ毎日行っているし。

 でも責任を持って育てるってフィリップにも言っちゃったしね。

 しばらくは依頼を受けるのを諦めるしかない。

 育児休暇は必要だよね。


 そして最近では翼も大きくなってきたので、飛ぶ練習をするようになった。

 長時間は飛べないが1分くらいなら安定して飛べる。

 そのうち一緒に空の旅ができるのを密かに楽しみにしている。


 そして飛べるようになってからは、今まで以上に自由にマイホームを散策するようになった。

 外には行かないように言って聞かせているが、好奇心からか窓から出て行こうとする。

 その度に私やカレン、シャルが止めに入るがわがままな子なので鳴き出して暴れてしまう。

 でも私が抱きしめると大人しくなる。本当にお母さんになった気分だよ。


 コハクも大分自由に動けているから私がいなくても大丈夫かなと思ったけど、離れようとすると飛んで追いかけてくる。

 最近では私の頭の上が定位置だ。

 今の大きさなら耐えられるけど、これ以上大きくなったら私の首がもたない……。


 食事は基本的に私の魔力を与えているが、魔物の肉も好んで食べるので、夜だけはコハクも合わせてみんなで食事を摂るようになった。


 そんな毎日が続いていき、とうとうサーシャがお父さんから話を聞いたのか遊びにやってきた。


「ヒナタお姉ちゃん!」


 玄関からサーシャの声がしたので、扉を開ける。

 目の前にはドレス姿のサーシャが玄関の前に立っていた。

 後ろには護衛の騎士が1人。


 多分コハクを見にきたんだろうけど、フィリップはよく許可したものだな。

 私がいうのもなんだけどコハクは魔物だよ。それに魔物の中でも頂点に君臨する竜だよ?

 危険を考慮して娘を近寄らせないものじゃないのかな。

 一応定期報告として、コハクのことは領主様に手紙で伝えていたけどあまり私を信用しすぎるのも良くないよ。


「いらっしゃい。サーシャちゃんが私の家に来るなんて何かあったの?」


 一応とぼけてみる。

 間違いなくコハク目当てだろうけど。


「コハクちゃんと遊びに来ました!」


 ほら、やっぱりね。

 そのお目当てのコハクは私の頭に乗っかっているよ。


「それと、最近ヒナタお姉ちゃんと会っていなかったので……」


 本当にサーシャは可愛いな。

 でもサーシャの家に遊びにいくと約束しておきながら、最近は全く行ってないから申し訳ない気持ちもある。

 でもコハクに付きっきりだということは分かってほしい。

 本当は私だってサーシャとデートしたいんだよ?

 久しぶりに会ったサーシャにそんなこと言われたら抱きしめたくなるよ。


「ヒナタお姉ちゃん苦しいです……」


 おっとっと。

 無意識にサーシャを抱きしめていたようだ。

 って痛い痛い! コハク、私の頭を叩かないで!

 コハクも嫉妬しているようなのでサーシャから離れる。


 あ、やばい。

 私のせいでコハクがサーシャに敵対心を抱いている。

 ごめんねサーシャ。コハクと仲良くなるのは時間がかかりそうだよ。


「コハクちゃんと遊んでもいいですか?」

「別にいいけど、私から離れないから一緒に遊ぼうか」


 とりあえずコハクにはサーシャと仲良くすることを言い聞かせる。

 サーシャがせっかく会いに来てくれたんだから蔑ろにしてはいけない。

 それに攻撃的なことはご法度だ。


「キュッキュッ!」


 うん、いい返事だ。

 コハクの頭を撫でると喜んでいる。


 といっても何して遊ぶの?

 ご飯をコハクにあげるとか、散歩に連れて行くとか……。

 なんか犬みたいな扱いになっちゃうな。

 でも散歩はダメだね。本当は運動のために外に連れていきたいけど。

 それにご飯の時間にはまだ早い。


「コハクちゃんを抱きしめてもいいですか?」

「うん? いいけど……」


 サーシャがコハクを抱きしめる。

 え、何この絵面? 可愛すぎるんだけど。

 カメラがあったら撮影会の始まりだよ。


「鱗が少し硬いですけど、可愛いです……」

「キュキュッ!」


 コハクも喜んでいるようだ。演技じゃないよね?

 できればコハクとサーシャには仲良くしてもらいたい。

 この調子で良い関係でいてください。


「何して遊ぶ? 外には行けないから家の中だけになるけど……」


 何して遊ぶのかなと思ったけど、サーシャは何かボールのようなものを取り出した。

 ん? これって……。


「コハクちゃん! 取って来てください!」


 そう言って、ボールを投げた。

 いやこれじゃ間違いなく犬だよ。

 竜が犬扱いされている。

 これじゃ竜としてのプライドがズタボロだよね。

 こんなのコハクも言うことを聞かないんじゃ……。


「キュキュー!」


 ものすごいスピードでボールを追いかける。

 それに飛ばずにちゃんと走っている。


 あ、追いかけるんだ。

 竜としてのプライドはないみたい。

 でも結果オーライかな。コハクも楽しそうだし。

 それにいい運動になりそうだ。


 思ったよりもペットに近い存在になったコハクでした。


読んでいただきありがとうございます!


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