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57 討伐報告をする


 みなさんおはようございます。ヒナタです。


 一晩寝たおかげで体力も魔力も全回復しました。

 ネメアーからの風撃(ウインドインパルス)によって内臓がやられたけど自然回復で治ってます。

 レベルが上がったからなのか、いつもより治りが早くなったようです。


 とりあえず昨日の報告を兼ねて冒険者ギルドに行こうかな。

 っていうか、ウルレインで依頼を受けたのにこの街で報告してもいいのかな。

 まあ、ダメだったらウルレインに戻ればいいだけだよね。


 そして宿でゆっくり朝食を頂いてから、普段着のワンピースに着替えて宿を出た。

 私が冒険者ギルドに行くと、入り口に昨日の騎士が1人で突っ立っていた。


「あれ? 昨日の……」


 名前は……えっと、なんだっけ?

 あ、そもそも聞いてないや。


「やっと来たか嬢ちゃん。さて、ギルマスに報告に行こうか」


 ん?

 この騎士は待っていてくれたのか。もしかしたら昨日もいたのかもしれない。

 私がギルマスに話が通りやすくなるために……。

 きゅん。って男にトキメクわけがない。


「あ、はい……」


 そして私は騎士と一緒に冒険者ギルドに入り受付へと行く。


「なあ、ギルマスっているか?」

「えっと、お約束はしていますか?」

「ちょっと報告があってな」

「少々お待ちください」


 騎士が話したことで、受付の男性は2階に上がっていく。

 数分後、戻ってきた男性に案内されて、ギルマスの部屋に入る。


「さて、キュリオよ。報告とはなんだ?」

「よう、じいさん。腰の調子はどうだ?」


 この騎士はキュリオっていうのか。

 ここにきて初めて名前を知った。

 ……うん。明日には忘れてそうだな。

 それにしてもこの騎士のおじさんはギルマスと親しいようだ。


「もう歳じゃからな。階段を上がるのも大変になったもんよ。それで騎士隊長のお前さんが来るとはよっぽどのことか?」

 

 え……?

 この騎士って騎士隊長だったの?

 にしては若いような……。

 あ、でもこの世界の人には見た目に騙され続けているからなあ。

 もしかしたら40代なのかも。


「信じられないかもしれないが、この嬢ちゃんがネメアーを討伐した」

「はあ!?」


 ギルマスの曲がった腰が垂直になった。

 あれ? 腰が悪いんじゃなかったのか?


「嘘じゃないんだな?」

「本当だ」


 落ち着いたギルマスが再度キュリオに確認をする。

 ちなみに腰は元に戻った。

 そしてギルマスが私の方を見てきた。


「初めまして。Bランク冒険者のヒナタです」

「あ、ああ。ギルマスのマグルドだ」


 よし、ギルマスは動揺しているようだけど、挨拶も終わったし説明に入ろうか。

 とにかく私が目立たないように相談をしないといけない。


「昨日依頼にあったネメアーの討伐をしたのですが、私が討伐したことは口外しないでいただきたいんです」

「……」


 あー、この反応は昨日の騎士たちと同じだ。

 ウルレインでもタラサの街でもそうだったけど、そんなにおかしいのかな。

 目立ってもいいことなんてない気がするんだけど。


「まあ、じいさんの言いたいことはわかるが、この嬢ちゃんは目立ちたくないんだと」

「……珍しい冒険者もいたもんだな」


 はいはい、珍しくてごめんなさいね。

 だって目立つと面倒な依頼とかを請け負われそうだし、いろんな人から声を掛けられたりするからね。

 それに、もしかしたら悪い貴族が寄ってきて妾になれとか、死ぬまで使い潰されることだってありそうだ。

 そんなことにならないように、私の平穏な生活のために協力してくれ!


「そういうことですのでなんとかお願いします」

「……なるほどのぉ。そういうことなら特に問題はない。しかし今回のネメアーの討伐依頼は王国中の冒険者ギルドに拡散させているし、国王陛下も苦慮していた事案だった」


 そこまで波及しているなら、私が討伐したという情報は特定の人には知られるということか。

 でもそれはしょうがないよね。完全に情報を閉鎖するのは難しいだろう。


「なるべく情報は封鎖して欲しいですが、特定の人には私が討伐したことは教えていただいても構いません」

「それはこちらで努力しよう。一応だが2日後にまた来てくれないか」


 ってことはこの街にあと2日はいないといけないのか。

 まあ、せっかく知らない街に来たんだから、少し観光がてら食材でも買いに行こうかな。


「分かりました。では、失礼します」


 そう言って、私はキュリオと共に冒険者ギルドを出た。




 そして2日が経って、再度私は冒険者ギルドに行く。

 すぐに受付の男性に声を掛けた後、ギルマスの部屋に案内される。


「よく来てくれたな」

「呼ばれましたので」


 さて、なんためにこの2日間私を拘束したのか理由を聞こうではないか。


「あれから各地の冒険者ギルドに情報を伝えて、国王陛下にまで話が伝わった」


 まあ想定通りだよね。

 情報の共有は大事だ。

 なんでも各冒険者ギルドには情報共有のために通信用の魔道具があるみたい。

 だから2日で情報が回ったみたいだ。

 仕事が早いギルマスのようで安心だね。


「それで国の上層部や各冒険者ギルドマスターだけはヒナタさんが討伐したことを知っている」

「なるほど……。ちなみに国の上層部とは?」

「王族や宰相様、一部の上級貴族そして王国騎士団長までだな」


 お、想定より情報は閉鎖したみたいだ。

 てっきり殆どの上級貴族や冒険者ギルド職員までは情報が回ると思っていた。

 これなら安心かな。


「最後に国王陛下が今回の功績に是非お礼をしたいそうだ。だからこれからヒナタさんには王都に向かってもらいたい」


 え、また王宮に行くの?

 あの王様何考えているんだよ。

 ここから王都って結構遠いんだよ。

 なんでわざわざ、お礼を言われるために王都に行かないといけないんだよ。

 ……いや、国王陛下に私みたいな平民が会えるなんてかなり名誉なことだとは思うけど面倒なのは変わりない。

 交通費が出るわけでもないのに、私から会いに行かないといけないとは。

 まあこんなに文句は言っているけど、ウルレインに帰る時に少し寄り道感覚で行けるんだけどね。


「分かりました。ではすぐに王都に向かいます」

「よろしく頼む。あとギルドカードを貸してくれ。報酬を振り込む」


 そうだったね。

 報酬を忘れていたよ。

 このままだとタダ働きになるところだった。


「そういえばネメアーの素材はどこに置けば良いでしょうか?」

「……確か国王陛下がこの機会にネメアーを拝見したいとも言っていたな」


 ん?

 ということはネメアーは国王陛下のところに献上すればいいのかな。


「……分かりました。ネメアーは国王陛下にお見せします」

「よろしく頼む」


 私はギルドカードを返してもらってから冒険者ギルドを出た。

 そして一応キュリオに会いに行き、最後の挨拶はしておいた。

 少しの間だけどお世話になったからね。


 さてここから王都までは2日くらいか?

 またあまりに早く行くと怪しまれるかな。

 またどこかで時間を潰さないと。




 さて、私は優雅に飛行魔法(フライ)で渓谷を飛んでいます。

 人に見られると嫌なので隠密スキルと気配探知スキルを発動中です。

 空の旅はとてもいいですね。

 風に当たって気持ちがいいです。


 それにこの辺りは自然豊かな山脈が広がっているので空気もおいしく感じます。

 そんな優雅な空の旅が邪魔されました。


「なんか大きな反応があるけど、弱っているのかな……」


 山に魔物の反応があった。

 マップでの反応は大きいけど点滅していて弱々しい感じがする。

 普通ならスルーだけど、こんな反応は初めてなので気になって見に行ってみる。


 下降していき反応のあった洞窟の前に降り立つ。

 また洞窟か。洞窟にはいい思い出がないよ。


 奥に進んでいき、反応のある場所まで近づく。


「あれ……この白竜は」


 洞窟の奥にあった広い空間にいたのは、王都からウルレインに帰るときに見た白竜だった。


 でもかなり怪我をしている。

 何があったんだ。

 あの日に見た時は綺麗な姿をしていたのに、今では翼もボロボロで至る所に傷がある。


『不思議な魂を持っているのね』


 ふと頭に声が聞こえる。


「え? 誰……」

『目の前にいる竜よ』


 声の主は白竜だった。


「不思議な魂って?」

『異界からの転生者かしら?』

「そうですけど……」


 すごいな。私が転生者だとわかるのか。


『転生者にあったのは数百年ぶりね……。まだ異界から魂を呼び寄せたりしているのかしら』

「え、私以外にも転生者がいたんですか?」

『遥か昔に1人だけ話したことがあったの……。でもその人以外は知らないわね』


 そうなんだ。

 昔にも転生者がいたのか。

 でも私の場合はちょっと例外の転生者のような気がする。

 魂がこの世界に迷い込んじゃったから、気を利かせた女神様が転生させてくれたからね。


「その転生者とはどのような話を?」

『軽い世間話よ。何の話をしたか忘れちゃったけど……』


 なんだ。何か情報が得られればよかったけど。

 でも何百年も前なら忘れてもしょうがない。


「そうですか。……ところで白竜様はなぜそんなに怪我をされているのですか?」

『ここは私の住処なんだけど1ヶ月くらい前に獅子の魔物がやってきてこのザマよ』


 白竜にここまで傷を負わせたのはネメアーだったのか。

 大丈夫。仇は討ったよ。


「それってこの魔物であってますか?」


 私はネメアーを無限収納から取り出した。


『驚いた……。あなたが倒してくれたの?』

「はい。ここから離れた鉱山に住み着いていました」

『あなたが私の仇を討ってくれたのね。ありがとう』


 なんか白竜が辛そうな顔をしている。

 怪我が酷いせいで生気も無くなりそうだ。


『……あなたにお願いがあるのだけど、いいかしら?』


 ん? なんだろう?


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