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53 領主からの手紙


 みなさんおはようございます。ヒナタです。


 やっぱりふかふかのベッドで寝ると目覚めも最高です。

 

 起床した後、一階に降りて洗面所で顔を洗ってから朝食の準備をしようとキッチンに向かう。

 3人分のパンと目玉焼き、牛乳を用意してテーブルに置く。

 こうやって朝から誰かのために朝食を用意するなんて、なんかお母さんになったみたいだ。

 お父さんにもなったことないのに不思議な気分だね。


 そしていつ2人が起きてくるか分からないので、私が先に朝食を食べているとシャルが起きてくる。


「おはよございます」

「おはよう」


 シャルは私と同じように洗面所に行き、顔を洗ってからテーブルの椅子に腰掛け朝食を食べ始めた。

 しばらくしてから、カレンが寝ぼけながら一階に降りてくる。


「……おはよー」

「「おはよう」」


 まだ眠たそうにしているカレンは椅子に座り黙々とパンにかぶりつく。

 半目で食べていてなんか可愛い。


 なんか不思議な感覚だよね。

 今までは宿でも一緒に寝泊まりしていたのに、一軒家で寝食を共にしていると家族みたいに感じる。

 でも2人もそのうち結婚してこの家を出て行くんだよね。

 それもそう遠い話ではない。2人とも素敵な女性だからね。

 もしその時が来たら、私はその男に対して「結婚するなら私を倒してみせよ!」とか言って妨害したい。

 でもこんな素敵な女性を嫁にもらうんだから、私より強くないと安心できないよね。

 なんか勝手に父親目線になっているが、それくらい2人のことが大好きなのだ。

 出来ればあと5年はこうやって一緒に暮らしていたい。


「昨日話した通り冒険者ギルドでいいよな?」


 まだ寝ぼけているカレンが今日の予定を話してくる。

 正直それ以外やることがないから、冒険者ギルドで依頼を受けて働くしかない。

 サーシャの屋敷に遊びに行くのもありだけど、それだと2人は来ないだろうし。

 それに3人での討伐依頼は最近受けてないから、少しだけ申し訳ない気持ちもある。


「うん。そうしようか」

「ヒナタさんの家に無償で泊まるわけにはいかないので、しっかり稼ぎましょう」

「なら、決まりだな」


 ちなみに2人はマイホームに住み込むにあたって、私に幾らかの金銭を支払う契約になっている。

 さすがにタダでこの家に住むわけにはいかないとのことだったので、僅かながらの金銭を毎月払うことになったのだ。

 私は別に要らないんだけどね。2人がどうしてもって言うから。

 ちなみお値段は宿よりもお得だよ。


 ということで本日の予定も正式に決まったので、依頼を受けられるような服に着替えてから冒険者ギルドに向かおうとマイホームを出ようとした。


「ん?」


 玄関の扉を開けると一通の手紙が落ちてきた。

 え? 何これ? もしかしてラブレターか?


「どうしたんだヒナタ?」

「いや、扉に手紙が挟まっていたみたいで」


 内心ドキドキしながら手紙を開こうとする。

 カレンとシャル、どっちへのラブレターだろうか。


「ヒナタ様へ……」


 まさかの私にかよ。

 こういう時ってどうやって断ればいいんだろう。

 私、実は男なんです。なんて通じるわけないし。

 生憎前世では女性に告白されたことはないからな。

 断り方なんて知りません。


 そんなことを考えながら1人で勝手に悩んでいると、封がされた手紙の裏が見えた。


「差出人。フィリップ・ブルガルド……」


 なんだよフィリップかよ。

 私のさっきまでのドキドキを返せ。

 頭の中でどうやって断ろうかめっちゃ考えたよ。


 っていうか、要件はなんだろう。

 わざわざ手紙を送ってくるなんて。

 それにフィリップにはこの前会ったばかりじゃないか。

 もしかしたら何か重要な要件でもあるのかもしれない。

 私にしか出来ない秘密ミッションみたいな。


「ごめん2人とも。領主様から私宛の手紙が来ていたからちょっと待ってて」

「お、おう」


 私は封を開けて手紙を読む。

 ふむふむ。

 え、なんだって?


 すごい丁寧な文章で長々と書かれている。

 手紙の内容を要約するとこうだ。

 私がサーシャに魔法を教えたことをサーシャがフィリップに自慢する。

 無詠唱魔法を教えられるなんてヒナタさんは王宮魔術師級の魔法使いだ。

 そしてそれを2日でマスターできるうちのサーシャは魔法の才能に溢れた天才かもしれない。

 なので家庭教師としてサーシャに魔法を教えてやってほしい。

 とのことだ。


 正直面倒なんだけど、サーシャに頻繁に会えることを考えれば問題ないか。

 とりあえず手紙だと家庭教師を依頼したいという内容なので、詳細についてはブルガルド家に行ったほうがいいのかな。


「ごめん2人とも。領主様の屋敷に行ってくるね……」

「なにかあったのか……?」

「ううん、大したことないよ。でも一緒にギルドには行けなくなっちゃった」

「まあ、領主様からの手紙なら無視できないよな」

「うん。ごめんね2人とも」

「いや、気にすんなよ!」

「気にしないでください」


 カレンとシャルに謝罪をしてマイホームを後にする。

 せっかく久しぶりに3人での共闘戦ができるのを楽しみにしてたのに……ちょっと残念だ。


「あの、フィリップ様からお手紙が届いていたんですけど」


 屋敷に到着して、いつも通り門番の衛兵に話しかける。

 そして屋敷へと案内される。


「やぁ来たかね。待っていたよ」


 今日はサーシャではなくフィリップが出迎えてくれた。

 私はフィリップに案内されて執務室に入る。


「手紙にあった通りヒナタさんには娘の家庭教師をしていただきたい」

「それは構いませんが、どのくらいの頻度で?」

「サーシャには他にも学業のため家庭教師を雇っているから、週に2回で半日程度お願いしたいのだが」


 それなら特に問題ないかな。

 でも、魔法を教えると言っても屋敷の中だけだと限界はある。

 攻撃魔法も覚えるなら魔力量も上げておかないといけない。

 そして効率よく魔力量を上げるなら魔物を倒してもらいたい。

 

「分かりました。ちなみにどこまでを目指せばいいですか」

「そうだな。欲を言えば、上級魔法を行使できるまでは、と思っている」


 上級魔法まで……だと?

 私みたいに上級魔法まで行使できるようになるなんて、結構厳しいんじゃないか。

 そもそも中級魔法ですら冒険者のCランクレベルだったと思う。

 それなのにまだ未成年で貴族令嬢のサーシャに上級魔法まで行使させたいとは……。

 でもフィリップからの依頼だからやれるだけやるしかない。

 方法としては最初に魔法をいっぱい使って魔力量とスキルレベルを上げないといけない。

 そして攻撃魔法が扱えるようになったら、さらなる底上げのために魔物討伐って流れかな。


「でしたら、私がサーシャちゃんを連れて魔物の討伐に行ってもいいんですか?」

「娘の安全が第一だが、ヒナタさんなら安心して任せられる。でも、あまりにも危険な魔物は避けてくれ」

「それは当然です。やるならゴブリンとかスライムくらいにしますね」


 スライムは戦ったことないけど。

 いや、見たことはあるんだよ?

 でも丸くてぷるぷるしていてあまりにも可愛いかったから鑑賞だけしたことがあっただけだ。


 それから家庭教師は午後からやることになり、夕食もご馳走してくれることになった。

 最後に給金の話になり驚くほど頂けることになった。

 家庭教師なのにそんなに貰ってもいいのか疑問だったが、無詠唱魔法を扱えるのは王宮魔術師でもエリートクラスのためこれでも安いとのことだ。

 そういえば前に読んだ魔法書にそんなこと書いてあったな。


「では早速だが、明日からよろしく頼む」

「はい、ではまた明日」


 というわけで、私はマイホームに帰った。

 夕方になってカレン達も帰ってきたので、私がサーシャの家庭教師になったことを伝えた。

 しばらくは家庭教師に専念することになるため、一緒に依頼を受けるのは難しそうだと伝えると2人とも残念そうな顔をしていた。

 

 翌朝、朝早くからカレンたちは冒険者ギルドに向かった。

 私は午前は特にやることもないので、ゴロゴロして過ごした。

 そして昼食も食べてからブルガルド家に向かう。

 屋敷に入るといつもと違ってパンツスタイルで、見るからに動きやすそうな格好をしたサーシャが待っていた。


「今日からよろしくお願いします、ヒナタ先生!」


 先生と呼ばれる日が来るとは……。

 なんか先生って呼ばれるのは嬉しいね。

 ましてやサーシャに言ってもらえるなんて。

 さあ、2人っきりのお勉強の時間だ。


「とりあえずサーシャちゃんは風魔法しか使えないんだっけ?」

「はい。そうですね」


 そもそもなんでサーシャは風魔法しか使えないと思っているのか。


「自分のステータスって見たことある?」

「いえ、ありません……」


 え、ないの?

 なら尚更、風魔法だけ使えると思っている理由がわからない。


「じゃあ、今から教会に行ってステータスでも見に行ってみる?」

「でも、ステータスは成人してからじゃないとダメだってお父様が……」


 え? そうなの?

 初めて知ったよ。


「そ、そうなんだ。ならやめておこうか……」


 じゃあ……どうしよう。

 もう風魔法だけに集中して教えたほうがいいかもな。


 正直、サーシャのステータスによってどう教えようか考えていたから、いきなり出鼻を挫かれた気分だよ。

 さて、これからどうしようか……。

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