47 図書館で勉強する
みなさんこんにちは。ヒナタです。
昨日は王宮で泊めていただくという、なんとも居心地の悪い環境で一晩を過ごしました。
だって、お風呂に入るにもメイドさんが複数人付き添ってきて私の身体を隅々まで拭いてきたの。
いくら同じ女性だからって、初めて会った人に身体を拭かれるなんて気分はあまり良くなかった。
前世が男でも今は女性の身体だ。私にだって恥じらいくらいはある。
身体を見られるくらいなら耐えられそうだったけど、触られるのは流石に嫌だよね。
貴族の女性達はこれが当たり前なのだと考えると、少しだけ尊敬します。
そしてお風呂を上がった後は、始めに入った部屋に案内されてそこで寝るように言われた。
でも気配探知で分かったが、私の部屋の前で護衛の騎士がいて全くゆっくりできなかった。
まあ、安全のために護衛の騎士を配備するのは分かるけど、慣れてないから違和感もあるし、何より私のスキルで気配を感じてしまい気になって眠れなかった。
王宮での生活は私には耐えられそうにないので、朝食だけご馳走になって早急にお暇しました。
そして急いで前回と同じ宿に泊まっているであろうカレン達と合流した。
「……まさか、王宮に泊まっていたとはね」
2人とも私を憐れみの目で見ている。
私だって嫌だったよ。
でも国王陛下の誘いは断れないじゃん?
「ごめんね。私の宿代が一泊分無駄になって……」
「それくらいは別に……」
とりあえず昨晩のことは忘れて今日は自由行動にしよう。
ちょっとやりたいことがある。
まずは、新しくケートスから強奪した無属性魔法について知りたい。
それとケートスを倒した時の岩石弾の威力についても。
あの威力の岩石弾を解明できればかなり使い勝手が良くなる。
岩石弾については王都の外に行って試すから、最初は無属性魔法のことからだね。
「ねぇ、2人に聞きたいんだけど、王都には魔法書が自由に読める場所とかってあるの?」
いわゆる前世で言うところの図書館だ。
図書館ならたくさんの本があるだろうし、王都なんだから古い書物もあるだろう。
無属性魔法について記載されている書物があるかもしれない。
「確かありましたよ。なにか調べごとですか?」
「うん、ちょっとね」
「なら今日は3人自由に行動しようか」
ということで、私はシャルから教えてもらって図書館に向かった。
かなり大きな図書館で、思っていたよりも人が多い。
特に学生が多いようだ。真面目な学生がいるもんだね。
私が学生の頃なんか図書館なんて行ったこと無かったよ。
「あの、魔法書はどこにありますか?」
私は受付の男性に声を掛ける。
受付には3人の男性がいた。
「それでしたらBの8番から14番の書棚ですね。ちなみにですが、図書館の利用は初めてですか?」
「はいそうです」
どうやら本の種類によって分類分けされているみたいだ。
きっちり管理されていてすごい。
「でしたら注意事項があります。当図書館では書物の貸出はしておりません。昔に利用者が返却せず紛失することが相次ぎましたので」
あー、そういうこともあるか。
前世でもありそうなことだもんな。
それにここは異世界。
パソコンで管理しているわけでもないから全ての本が管理できるわけもない。
だから盗難防止のために図書館の出入り口にも人がいるのか。
でも私みたいに収納スキル持ちの場合はどうするんだろう。
いや、私は盗まないよ?
「そうですか。わかりました」
私はすぐに魔法書が置いてある書棚に向かった。
「すごい数だ……」
ブルガルド家からも貸してもらったが、言っても10冊ほどだ。
でもこの書棚には1000冊はありそうだ。
「これなら無属性魔法について記載している魔法書もあるだろう」
私は一冊ずつ注意して本のタイトルを確認していく。
初級魔法、中級魔法、上級魔法、神級魔法、魔法理論、魔法陣構成、詠唱省略魔法、無詠唱魔法、多重詠唱魔法、固有魔法、混合魔法、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法……色々あるな。
本がありすぎて大変だ。
気になるものもあるが、今は無属性魔法についてだ。
その後も本のタイトルを見て、気になったものは中身も読んでいたが、気になるタイトルがあった。
「失われた魔法……」
なんとも興味を惹かれるタイトルだ。
本を開いて内容を確認すると、どうやら遥か昔にあまりにも強大な魔法のため禁忌魔法として使用を禁止したようだ。
禁忌魔法として扱われた魔法は、行使すると処罰の対象となっていたため、当時は誰も使わなくなったことから、今では失われた魔法として書物だけは残ったみたいだ。
調べてみると、今よりも昔の方が魔法は優れていたように感じる。
今でも十分便利ではあるが、昔は領地を巡っての戦争が頻繁に行われており攻撃性が高い魔法が行使されていたようだ。
そのためか、戦争も終結に向かい強大すぎる魔法は更なる争いの種になる可能性があるから、当時に各国で禁忌魔法を取り決めたみたいだ。
そうすることによって無駄な争いで余計な血を流さないようにした。
なんとも平和的な解決方法だ。
しかし、これによって魔法技術が衰退したのが惜しい。
でもよく確認すると、禁忌魔法として扱われたのは主に攻撃魔法のみ。
大規模魔法がほとんどだ。
中には魔法一つで街を消滅させることもできたみたいだ。
それは恐ろしすぎる。禁忌魔法にして正解だ。
禁忌魔法には転移等ができる空間魔法、時間を操る時空魔法があった。
文字だけでもなぜ禁忌魔法となったのか分かるくらい危険な魔法だ。
さらに読み進めていると、無属性魔法についての記載があった。
「見つけた……」
まさか無属性魔法も失われた魔法だったとは。
でも、古の魔物を倒して得られた魔法だからそれもありえるのか。
読み進めると、かなり強大な魔法であることが分かった。
主に魔力そのものを使用する魔法らしく、ケートスが使用したのも魔力を衝撃波として使用していたみたいだ。
普通の魔法だと自身の保有している魔力を火、水、風、土などへと変換させて魔法陣を作ることによって発動させることができる。
しかし、これだとどうしても魔力変換時に魔力のロスができてしまい行使する魔法の威力にも影響がでる。
だが、無属性魔法となると魔力そのものを直接使用するため、魔力のロスがなくなり魔法の威力も膨大なものになるらしい。
これでケートスの衝撃波によって、孤島が沈んだ理由も納得できる。
しかし、無属性魔法の欠点としては総魔力量が多くないといけないことだ。
逆に言えば、魔力量が多ければ強大な魔法になり得るということだ。
私の魔力量は現世では多いが、昔に比べて多いかはわからない。
試してみた方が良いが、魔力の消費も考えてうまく調整して発動させないと周囲に被害が出る可能性もある。
試すときは今まで以上に注意が必要だ。何度か前科もあるしね。
無属性魔法には初級で魔力弾があり、中級では魔力波、上級では広範囲に魔力波を生じさせる魔力波領域、神級だと広範囲を対象に発動者よりも魔力が低いものを殲滅させる全滅領域というのがある。
私の無属性魔法はレベル5のため、まだ中級魔法の魔力波しか使用できない。
ケートスもこの魔力波を使っていたんだろう。
それにしても上級魔法からして強力そうだ。
神級魔法なんて危険すぎる。そりゃ禁忌魔法として扱われるわ。
とりあえず、無属性魔法について学ぶことができた。
あとは、森に行って岩石弾の解明と無属性魔法を試すだけだ。
図書館を出て、王都の門から森へと目指す。
「この辺りでいいかな」
広大な森の奥深くに入り込み、気配探知で周囲に人がいないことを確認する。
まずは、ケートス戦での岩石弾の解明だ。
あのときは冷静じゃなかったし、何より魔力もそこまで残っていなかった。
それなのにあの威力を出せたのは、無意識に混合魔法になっていたのかもしれない。
だとしたら、何との混合になったのか。
想定するなら風魔法だ。
風魔法によって、岩石弾の出力を上げて発動したと考える。
「試してみるか……」
いつも通りの岩石弾を発動させて、さらに風魔法で岩石弾を押し出すイメージでやってみる。
「ロックショット」
的にした木は綺麗に風穴ができる。
威力はいつもの岩石弾よりかは強い。しかし、これじゃない。
なんかこの感じ初めての飛行魔法を思い出す。
あの時も何度も試行錯誤してようやく完成した。
その後も風魔法で応用した岩石弾で試してみてようやく完成した。
やり方は簡単だ。
岩石弾を包み込むように風撃を発動させればいいのだ。
飛行魔法でも自分を覆う魔法障壁がヒントになった。
ジャイロ回転を施した岩石弾を風撃で包み込み威力を倍増させる。
ケートスを討伐した時のように、凄まじい威力が出た。
的にした木を貫き、その先の木々も薙ぎ倒していく。
魔力消費も岩石弾と風撃の分だけでそこまで大きくない。
ここまでの威力の魔法を発動させるとなると、魔力消費も大きいが混合魔法だと応用さえできればここまでの魔法を再現できる。
要は魔法は発想力の転換だ。
どういう魔法を発現させたいのか、どうすれば強大な威力になるのかを考えてイメージして、複数の魔法を同時に展開できればなんでもできるような気がする。限界はあるだろうけど。
それにしてもこの魔法はどう名付けようか……。
あまり名付けるのは得意じゃないけど、あくまで岩石弾と風撃の混合魔法だから……。
「ロックインパルス?」
岩石撃でいいかな。
本当にネーミングセンスないな私。
さて、次は無属性魔法だな。
あれ? 集中していたからか、もう辺りが暗くなってきている。
早く帰らないと門が閉まる。
急げ! 急げ!




