表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/108

46 ケータの迷宮攻略(クロト迷宮編)③

本来のケータの迷宮攻略はもっと簡潔に1話で終わらせようとしましたが、結果的に3話になってしまいました。

今回でクロト迷宮編は最後です。

次回からヒナタが出てきます。


「次で最後か……」


 とうとう第五階層のボス部屋の扉の前にきた。

 ここを開ければ、クロト迷宮最後のボスがいる。

 第一階層から第三階層までは比較的簡単に倒すことはできたが、第四階層のクラーケンからのスキュラはかなり苦労した。

 見たことも聞いたこともない魔物だと、どのような攻撃を仕掛けてくるか分からないから油断はできない。

 それに第五階層ともなると何が出るか想像もできないが、間違いなく言えるのはスキュラよりも強敵だということか。

 もしかしたら、第四階層と同じようにボス戦前の魔物がいるかもしれない。

 気を引き締めていこう。


 魔力回復薬(マナポーション)も飲んで、長い間休憩もしたから十分体力も魔力も回復した。

 自動回復スキルはかなり有用なスキルなのを実感する。

 俺は第五階層のボス部屋の扉を開く。

 入ってみると第五階層は第三、四階層と違い、普通のエリアだ。大きな洞窟のような造りをしている。

 しかし、目の前にいる魔物は今までの比にならないくらいに巨大だ。


「でかいな……」


 目の前にいる魔物は頭が複数ある大蛇でかなり大きい。


「9つか……」


 首を数えてみると9つある。

 しかも、大蛇の首は1つだけでもかなり大きい。目測で10メートルはありそうだ。


「ゴオオォォォオオオ!」

「詳細鑑定……ヒュドラか。火、水、風、土魔法も使えるようだ」


 本当に大きい。胴体も合わせると30メートルはあるか……?

 それに魔法も使えるとか厄介だな。

 とりあえず攻撃を仕掛けよう。


「インフェルノ!」


 灼熱地獄(インフェルノ)がヒュドラに効くのか試してみる。


「ゴオオオオ!」


 ヒュドラが炎に包まれて暴れている。

 図体がデカイから魔法を当てやすい。それに動きも俊敏ではない。

 それに……効いているな。


 でも、よく観察してみるとヒュドラの鱗はうまく燃えていないようだ。

 かなり頑丈な作りなのか、火魔法が効きづらいのかは分からない。


 とにかく炎で包まれている間にすぐに攻撃を仕掛けるべきだ。

 次はヒュドラの頭を吹っ飛ばして攻撃力を下げることにする。


「ウインドインパルス!」


 ヒュドラの1つの首に向けて風撃(ウインドインパルス)を放つ。


「グギャァァァ!」

「よし! 吹き飛んだ!」


 ヒュドラの首が1つ消滅した。

 このまま風魔法で攻撃を続けていって全ての首を吹き飛ばしてやろう。

 ……と思って再度魔法を行使しようとしたが、包んでいた炎が消えてヒュドラも応戦してきた。


「あぶなっ!」


 ヒュドラは口から広範囲に炎嵐(フレアストーム)を吐き出してきた。

 首の数が多いから、どいつから攻撃を仕掛けてくるか分からない。

 すると、続け様に各々の頭から氷嵐(アイスストーム)竜巻(ハリケーン)岩石砲(ロックキャノン)が広範囲に放たれる。


「めちゃくちゃすぎるだろ……!」


 魔法での相殺も考えるが、威力が桁違いであった。

 飛行魔法(フライ)でも回避は難しいくらいの広範囲攻撃のため、転移魔法でヒュドラの後方に転移する。

 しかし後方に逃げても、すぐにヒュドラからの攻撃が始まる。


 3つに首が同時に大口を開けてこちらに迫ってくる。

 再度、転移魔法でヒュドラの後方に転移したが、まるで待っていたかのように別の3つのヒュドラの口から炎嵐(フレアストーム)竜巻(ハリケーン)岩石砲(ロックキャノン)が飛び出してきた。


「嘘だろ!?」


 転移した直後のことだったため、回避もできずに直撃する。


「ぐああああぁぁぁぁああああ!」


 後方に吹き飛ばされて、壁に激突する。

 身体にあちこちに火傷や裂傷があり、岩石砲(ロックキャノン)が直撃した左足は潰れてしまっている。

 意識が朦朧としながらも、すぐに上級回復魔法(ハイヒール)を唱える。


「ハイヒール……」


 光魔法がレベル10であれば、神級魔法である完全回復魔法(パーフェクトヒール)が唱えられるが、今の俺では行使できない。

 それでも、上級回復魔法(ハイヒール)で十分回復はできる。


 その場で立ち上がり、体勢を整えて戦闘態勢に入る。

 それにしても首がまだ8つもあり、さらには攻撃の幅が広すぎる。

 さっきと同じように風撃(ウインドインパルス)を行使して、頭をひとつずつ消し飛ばせばもう少し戦いやすくなる。

 残念ながらあの大きなヒュドラの頭を複数同時に消し飛ばせるような魔法は行使できない。

 そのため、1つずつ隙を見て風撃で消し飛ばすしかない。

 すぐに転移魔法で、ヒュドラの後方に回り込んで魔法を行使する。


「ウインドインパルス!」


 ヒュドラの1つの首に命中して消し飛ばすことに成功した。


「よし! あと7つ!」


 喜んだのも束の間、消し飛ばしたはずのヒュドラの頭が2つに増えて再生した。


「はっ!?」


 どういうことだ?

 自己再生能力があるにしても、2つに増えるなんてチートだろ。

 これじゃ初めと同じで9つの頭と対峙しなければならない。

 そして、増える原因も分からないとさらに増えることになる。

 さすがにこれはマズイ……。


 ……でもなぜ、最初の頭は再生しないのか?

 消し飛ばした魔法は最初と同じはずだ。何が違う?

 1つだけの頭は消滅してそれ以外は再生するとかいう条件なのか。

 だとしたら、討伐など不可能ではないか……。


 ゆっくり考えている時間もない。

 こうして考えている間にも、ヒュドラの攻撃は止まらない。

 転移魔法を使いながら、ヒュドラの魔法を回避し続ける。


 転移魔法は魔力消費が多いため時折、魔力回復薬(マナポーション)を飲みながら討伐方法を考える。

 とにかく、絶対に倒せないことはないはずだ。討伐不可能な魔物など考えられない。

 女神フューリーから迷宮踏破の依頼がある以上、討伐は可能だと考えるべきだ。

 だとすると、最初にヒュドラの首を消し飛ばして再生しなかったのは偶然ではない。


 あの時と違う条件は、灼熱地獄(インフェルノ)でヒュドラが炎を纏っていたことだ。

 もう一度、同じことをしても再生したらお手上げだ。これに賭けるしかない。


「インフェルノ!」


 すぐにヒュドラに向かって灼熱地獄(インフェルノ)を行使する。

 ヒュドラの首の5つに命中して炎に包まれ暴れ出す。

 残りに4つの首がこちらに向かって各々魔法を行使してくる。

 それを転移魔法で回避して、すぐに燃えている頭に風撃(ウインドインパルス)を放つ。


「ウインドインパルス!」


 1つの頭が消し飛ぶ。


「……よし! 回復しない!」


 成功だ。

 たぶん消し飛ばした首の傷口を燃やすことで再生を防ぐのだろう。

 これなら長期戦になるが、討伐が可能なことが証明できた。

 燃えているうちに、すぐに追い討ちをかける。


「ウインドインパルス!」


 2つの風撃(ウインドインパルス)を作り出し、ヒュドラに命中させて消し飛ばす。

 本当なら2つ以上の風撃を発動させたいが、俺には2つ以上の魔法陣の構成ができない。

 さらに2つの風撃を作ろうとしたが、ヒュドラの首の1つが灼熱地獄(インフェルノ)で纏わせた炎を水魔法で消火した。


「やはり賢いな……」


 先程の転移魔法への対応力を鑑みても頭がいいようだ。

 かなり戦いづらいが、ヒュドラの首は残り6つだ。

 俺の方針は変えるわけにはいかない。

 転移魔法でヒュドラの後方に移動して再度、灼熱地獄(インフェルノ)を行使しようとすると……。

 ヒュドラの口から紫色の煙が吹き出してきた。


「なんだあれは!?」


 危険を察知して、すぐに転移魔法でヒュドラから距離をとる。

 しかし、紫色の煙はエリア全体に広がっていく。


「ゴホッゴホッ!」


 煙を吸い込んで()せる。

 初めは咽せるだけで済んだが、段々と身体が麻痺したような感覚になって動けなくなる。

 さらには、意識も朦朧としてきてその場に倒れ込んだ。


「これは、毒か……?」


 毒霧のようなものをヒュドラが吐き出したのだろう。

 これはやばい。すぐに解毒魔法(アンチドート)を使う。


「アンチドート……」


 解毒魔法(アンチドート)によって、多少は楽になったが完全には治っていない。

 それでもヒュドラを倒さなくてはならない。

 でなければこちらが殺されるだけだ。

 このまま毒霧の中では、また同じように毒が体内に入ってくるため、風魔法で毒霧を散らす。


「ハリケーン」


 迷宮エリアに竜巻(ハリケーン)を発生させて、一時的ではあるが毒霧を離散させた。


「インフェルノ!」


 時間がないため、すぐさま灼熱地獄(インフェルノ)を行使する。

 ヒュドラはお構いなしに魔法を行使してくるが、こちらも転移魔法で死角へと転移する。


「ウインドインパルス」


 2つの風撃(ウインドインパルス)をヒュドラに当てて、首を消し飛ばす。

 再度、同じように転移魔法でヒュドラを翻弄させながら風撃を行使する。


「ギョアアアァァァアアア!」


 首は残り2つ。このままいける。

 急がないと、毒霧がまた蔓延してくる。

 最後の2つの首に向けて灼熱地獄(インフェルノ)を行使した後、風撃を飛ばす。


「これで最後だ! ウインドインパルス!」


 最後のヒュドラの頭に命中した風撃(ウインドインパルス)によってヒュドラが倒れる。


「やった……」


 その場で倒れ込んだ。

 これでクロト迷宮は踏破できた。

 疲れ切って地面に伏せていると奥の扉が開かれた。


「やっと出られるな……」


 フラつきながらも奥の扉に向かい中へと入っていく。


「なんだここは……?」


 中に入ると、小さな部屋の中央に大きな水晶のようなものが光り輝いていた。

 水晶に近づき鑑定する。


「クロト迷宮神核(コア)……」


 神核(コア)に触れると、眩しいくらいに輝き始めて俺は目を閉じた。


「あれ……?」


 ……気が付くと俺はクロト迷宮の外にいた。

 そして目の前にあった迷宮への入り口が無くなっている。


「踏破すると迷宮は消えるのか……」


 ここにいるのは何故かわからないが、多分転移魔法で転移してきたんだろう。


「これでクロト迷宮は踏破できた。残りは2つだ」


 しかし、今回のクロト迷宮でたくさん学べた。

 自分は強いと思っていたが、想定よりも苦戦した。

 今回は運よく生き延びることができたが、次に行く予定のラケシス迷宮はこうもうまくいかないかもしれない。

 俺はもっと強くならなければ……。


 俺はさらに強くなって、次のトパロン王国にあるラケシス迷宮に挑むことを決意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ