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45 ケータの迷宮攻略(クロト迷宮編)②


 第三階層をクリアした俺は、階段を降りていき直線の通路で少し休憩していた。


「少し、魔力を使いすぎたか……」


 キマイラの討伐ではなく、水を蒸発させるために魔力を消費しすぎた。

 すぐさま魔力回復薬(マナポーション)を飲み、身体を休ませて自然回復スキルで体力も回復させる。

 ここまでは大方順調だ。

 何組もの高ランク冒険者が総出で挑んだら何とかクリアできそうなイメージであった。

 本来であればこの迷宮は1人で挑むものではないが、俺のステータスが高すぎるため、仲間を連れてきても逆に足手纏いにすらなる。

 勿論、1人で挑むのはそれだけ危険が伴うが仲間が目の前で死ぬのなんて耐えられるわけがない。


 さて、ここまでは難なく攻略をしてきたが、第四階層にはどのような魔物がいるのか。

 今までの傾向だと、あまり地上では見たことがない魔物ばかりだ。

 迷宮攻略は今までしたこともないし、周りの冒険者に聞いても挑んだやつはいなかった。

 そもそもこの世界には迷宮というものがほとんど存在しない。

 それなのにこうも魔物が強敵だと、誰も挑戦する者がいないのも頷ける。

 誰だって喜んで死にに行くような奴はいないだろうからな。


 古い書物からクロト迷宮・ラケシス迷宮・アトロポス迷宮の情報を集めてはいたが、この迷宮は500年ほど前に突如として出現したそうだ。

 第一階層からの魔物が強くて、倒せたとしても宝箱が出現しないため、冒険者にとっては腕試しのための迷宮として有名になっていた。

 この3つの迷宮は誰1人として第三階層まで行った者がおらず、そして今の時代では挑む冒険者もいなくなってしまったため、階層ごとの魔物の情報も得られていない。

 でも、最終階層が第五階層だという情報は書物に書いてあった。

 つまりあと二階層をクリアすればクロト迷宮は踏破できる。


 しかし、詳しい情報が得られなかったために第三階層の火山地帯のエリアには驚いた。

 少し階段を降りただけで目の前が火山地帯とは……。

 本当に迷宮というのは恐ろしいものだと実感した。


「そろそろ行くか……」


 長い時間休憩ができたので、そろそろ第四階層のボス部屋へと向かう。

 そして扉を開けると、目の前に広がっていたのは広大な海だった。


「なんだここ……?」


 あたり一面に広がる海。

 俺が立っている場所は島にある海岸だ。

 島といっても、そこまで大きいわけではない。

 ボスはこの島にいる魔物なのか、それとも海の中にいる魔物なのか。

 先程入ってきた扉もいつの間にか消滅しており、完全に退路を絶たれた。

 まあ、逃げるつもりなんてないけどな。


 しばらく待っていると、海の方から魔物が出現してきた。


「グオオオォォォ!」

「詳細鑑定……クラーケンか!」


 海から現れたクラーケンはすぐさま俺に向かって、攻撃を仕掛けてきた。

 8本ある足を器用に使って連続で振り下ろしてくる。

 一本一本振り下ろしてくる足を回避しながら、魔法で反撃する。


「ウインドインパルス!」


 風撃(ウインドインパルス)をクラーケンの足に放ち、消し飛ばす。


「もう1本!」


 再度風撃(ウインドインパルス)で足を消し飛ばす。

 すると、先ほど消し飛ばしたはずのクラーケンの足が再生していることに気が付く。


「なに!?」


 自己再生能力でもあるのか。

 クラーケンって案外、面倒な魔物なんだな。


「それなら再生が間に合わない魔法を打ち込むまでだ」


 ここは力技でいこう。

 大魔法を行使して、一瞬で消し炭にしてやる。


「インフェルノ!」


 クラーケンに向かって灼熱地獄(インフェルノ)を放つ。

 海にいる魔物だと火魔法が使いやすい。

 何故なら陸での戦闘だと火魔法は周囲に延焼していくため扱いづらいからだ。


 あっという間にクラーケンが炎に包まれて、消滅していく。

 しかし、自己再生能力が働いているのか、少しずつ再生もしているがさらに炎に包まれて燃えていく。

 まさに生き地獄のような光景だ。

 再生しては燃えて、また再生しては燃えてを繰り返している。


「ゴオオォォォ……」


 徐々に再生も追いつかなくなり、クラーケンは跡形もなく消滅していった。


「終わったか……」


 さて、これで第四階層もクリアだ。


「どこに扉が開かれるのかな」


 周囲は海である。扉がどこかに現れるのかもしれない。

 そう思って待機していると、再度海から魔物が現れた。


「ゴギャアアァァァ!」

「なんだ!?」


 見たこともない魔物だ。

 上半身は人間の女性のような姿をしているが、下半身は魚のようだ。

 そして何より、腹部からは犬の頭が6つ出ている。かなり気持ち悪い。


「詳細鑑定……スキュラ……?」


 本当に聞いたことのない魔物だ。

 とりあえず、さっきと同じように灼熱地獄(インフェルノ)で攻撃を仕掛けてみるか。

 そう考えていると、スキュラが急に海岸に上がってきて、俺に向かってきた。


「嘘!? 陸にも上がってくるのかよ!」


 ものすごいスピードで距離を詰めてくる。

 海岸近くに生えていた木々を薙ぎ倒して、スキュラの腹部に生えている犬の頭が木を捕食している。


「めちゃくちゃだな」


 とりあえず陸に上がってこられると近距離戦になるため、灼熱地獄(インフェルノ)では俺にも被害が出る。

 火魔法だと危険だと判断して、土魔法を行使しよう。


「ロックレイン!」


 岩石雨(ロックレイン)によって無数の岩石を上空に出現させて、スキュラに向かって岩石が落とされていく。


 ドドドドドドドド!!!


 しかし、スキュラは下半身が魚とは思えないスピードで、無数に降り注ぐ岩石を回避していく。

 しまいには、尾ヒレを使って岩石を振り払ったりもしている。


「出鱈目だな……」


 どんどん俺に向かって移動してくるため、飛行魔法(フライ)で上空へと避難する。

 上空なら安心……と思っていたのも束の間、今度はスキュラも尾ヒレを上手に使い、上空に飛び跳ねてきた。

 俺に向かってスキュラの腹部にいる犬たちが口を開いて食べようとしてくる。


「気持ちわりぃ!」


 しかし、飛行魔法(フライ)で飛んでいるため上空ではこっちに地の利がある。

 飛び上がってきたスキュラを回避すると、そのままスキュラは落下していく。

 落下するスキュラに追い打ちをかけるように再度、スキュラに対して岩石雨(ロックレイン)を行使する。


 最初は岩石を尾ヒレで振り払っていたが、さすがに落下しながらの回避は難しかったらしく、一度岩石に直撃してからは血を吹き出し、苦しみながら落下していって地面に叩きつけられる。

 俺はすぐさま、岩石をスキュラに落とし続けた。

 そして無数の岩石によってスキュラの姿が見えなくなった。


「これでどうかな……」


 これで倒せていたら嬉しいけど、どうなんだろうか。

 普通の魔物ならこれで倒せるはずだが、この迷宮の魔物は普通じゃない。

 しばらく待っても反応がないが、第五階層に繋がる扉が現れないということはまだ生きているということだ。


「ギャアアアァァァァ!」


 埋もれていたスキュラが岩石を振り払って姿を現した。

 心なしか岩石雨(ロックレイン)によって損傷したはずの身体が元に戻っている。


「クソ! 岩石の中で回復してやがったか!」


 今度はスキュラが海に潜っていき姿を消した。


 バンバンバンバン!


 突然海面から無数の水弾のようなものが飛び出してきた。

 弾丸のようなスピードで放たれてきたが、1つずつの水弾は大砲のように大きい。

 すぐさま回避したが、左手に1つの水弾が直撃する。


「ぐあああぁぁぁ!」


 一瞬の出来事だった。

 左手を見ると、肘から先が無くなっている……。


「やばい……」


 この世界に来て初めてまともにダメージを与えられた気がする。

 飛んでくる水弾を回避しつつ、すぐに光魔法を使って左手に上級回復魔法(ハイヒール)を唱える。


「ハイヒール」


 左手が生えてくる。

 初めて唱えたが、欠損部位が生えてくる状況はかなりグロテスクだ。

 左手も回復したが、この状況はまずい。


 すぐに転移魔法を使ってスキュラから距離を取る。

 海の中にいるから、灼熱地獄(インフェルノ)を行使したいが、姿も見えていない海中で意味があるのか分からない。


 せめて海中から飛び出してくればいいんだけどな。

 ……そうか。それなら魔法で海中から出ざるを得ない状況にしてみてはどうだろう。

 そこで俺は転移魔法でスキュラがいると思われる海上付近に移動して魔法を行使する。


「アブソリュート・ゼロ」


 絶対零度(アブソリュート・ゼロ)を海に向かって発動させる。

 俺はすぐに転移魔法で上空に避難し、飛行魔法で高みの見物。

 瞬時に海が凍っていき、海中にいたはずのスキュラが急いで海上に飛び上がってきた。

 ふふふ、予定通り。

 俺はすぐにスキュラに向かって灼熱地獄(インフェルノ)を放った。


「インフェルノ!」


 スキュラに直撃して炎に包まれる。

 クラーケンと同じように自己再生を繰り返しては燃えるのを繰り返している。

 ものすごい悲鳴みたいなのが聞こえているが、こちらも左手をやられているのでお互い様だ。

 しばらくすると、スキュラが丸焦げの状態になり、海岸に扉が出現した。


「やっと終わったか……」


 第四階層でここまで苦労するとは。

 それに魔力もかなり消費した。早く休みたい。


 俺は扉を開けて第五階層に向かった。

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