44 ケータの迷宮攻略(クロト迷宮編)①
話は変わってケータの迷宮攻略です。
ケータって誰? となった方は21話と22話をご覧ください。
─パレルソン帝国 クロト迷宮─
「ようやくここまで辿り着いた」
女神フューリーからのお願いでこの世界の3つの迷宮を攻略してこの世界を救う。
そのために俺は冒険者になって、たくさんの依頼を受けて自分の能力を高めていった。
最初は薬草採取とかゴブリン討伐しか受けることができなかったが、徐々に実力も評価されて高ランクの魔物にも挑戦できるようになっていった。
遂には最高難易度である赤竜の討伐を単騎で行ったことにより、Sランクという冒険者の最高位の地位に到達することが出来た。
それに冒険者になって3ヶ月でSランクになったのは史上初ということもあり、各国で有名になった。
3ヶ月で俺のステータスはここまで成長した。
名前:ケータ
種族:人族
年齢:19歳
職業:魔法使い
HP :783/783
MP :815/815
スキル:火魔法LV10
水魔法LV10
風魔法LV10
土魔法LV10
光魔法LV8
空間魔法LV9
鑑定LV9
成長促進
自然回復LV8
身体強化LV8
多分だが、俺はこの世界で一番強いと思う。
すでに英雄と言われてもおかしくないようなステータスだ。これならどんな人間にも、魔物にも負ける気はしない。
女神フューリーから与えられたスキルによって、短期間でここまで急成長を遂げることができた。
特に急成長のきっかけとなったのは成長促進スキルだ。始めは全てのスキルがレベル1だったが、たったの3ヶ月でここまでスキルが成長した。
そして空間魔法は最初はなんなのか分からなかったが、鑑定スキルがレベル8を超えたところでスキル自体の鑑定もできるようになった。
そのおかげで空間魔法も扱えるようになったわけだ。
さて、そろそろ迷宮に入ることにする。
現在、このクロト迷宮に挑む冒険者は誰1人として存在しないため、1人で寂しく入る。
迷宮の中に入ると直線の通路がある。
そのまま通路を100メートルほど進んでいくと大きな扉があった。
「通路に魔物はいないのか……」
前世でいう迷宮といえば、このような通路に魔物がいて、討伐をすればアイテムが出たり宝箱が出現したりと、勝手に想像していたがどうやら違うらしい。
でも、宝箱が出現するならもっとこの迷宮に挑む人もいるだろうな。そう考えれば、なんの利益も生まないこの迷宮が過疎化するのも分かる気がする。
「さて、どんな魔物がいるかな」
ゆっくりと扉に手を触れると、ゴゴゴと音を立てて扉が勝手に開いた。
そして扉の先には黒い影が5つ見える。
「グモォォォォォオオオ!!!」
「詳細鑑定」
俺はすぐさま魔物に向けて鑑定スキルを使う。
この鑑定スキルがあれば、自分が知らないことでも目の前に対象の情報が表示される。
「……ミノタウロスか」
鑑定の結果、奥にはミノタウロスという魔物が5体いるようだ。
ミノタウロスなら過去に戦ったことがある。
俺はミノタウロスに近づき魔法を放つ。
「フレアストーム!」
「グモオオォォォ……!」
火属性魔法で炎の嵐を作り出し、ミノタウロスを殲滅していく。
「これくらいなら余裕だな」
俺にとってこれくらいの魔物であれば魔法一発で倒せる。
ミノタウロスは単体ではCランクの魔物ではあるが、5体もいるとなるとAランクに匹敵するだろう。
これならAランクパーティーの冒険者でも苦戦するほどの脅威ではある。
しかし、俺の敵ではない。
呆気なかったが、これで第一階層はクリアだ。
「さて次に進もう」
ボス部屋の扉を開けると、下に降りられる階段があった。
階段を降りると、また直線の通路がある。
第一階層と同様、通路に従って進んでいく。
もしかしたら、この通路は休憩所なのかもしれない。
普通の冒険者なら第一階層でも死にそうなくらいの脅威ではある。
俺には女神から与えられたチート能力があるから関係ないが、他の人間は違う。
この第二階層まで辿り着いた人間が今までいるのかは不明だが、このような通路にまで魔物が出現するようではこの迷宮の踏破はさらに困難を極めるだろう。
俺は特に疲れ感じていないため、そのまま通路を進んで行くと先ほどと同様に大きな扉が目の前に立ち塞がる。
「さて、次のボスはなんだ」
扉を開けると、今度は3つの影が見えた。
馬のようなシルエットをしている魔物が3体だ。
「詳細鑑定……。ケンタウロスか」
ケンタウロスは初めてみた。
上半身は人間のような姿だが下半身は馬である。
どのくらいの脅威である魔物かは知らないが、遠距離から魔法で攻撃すれば恐怖も感じず簡単に討伐ができる。
本当に魔法というのは便利で素晴らしいものだ。
「ミノタウロスと同じでいいか、フレアストーム!」
ケンタウロスを炎嵐が包み込む。
広範囲系の攻撃魔法であったがミノタウロスと違い、俊敏性があった。
「ちっ! フレアストームから逃れたか!」
ケンタウロスは炎嵐を回避して、3体が別々の方向から迫ってきた。
「グオオオォォォォ!」
「連携が取れているケンタウロスのようだ」
俺は瞬時に空間魔法を応用した転移魔法を使い、ケンタウロスの後方に回り込み距離を取ることにした。
空間魔法は主に空間に歪みを生じさせることで、自分の身体だけでなく物体までも自由自在に転移させることができる。
「逃げるのが得意ならこれはどうだ? グラビティ」
次は空間魔法を応用した重力魔法で、ケンタウロスの動きを封じる。
重力がケンタウロスに働いたことにより、地面に叩きつけられて身動きができなくなる。
「フレアストーム」
重力魔法によって、動けなくなったケンタウロスに炎嵐を放つ。
炎嵐に飲み込まれたケンタウロスは一瞬にして消し炭になった。
あそこまで素早い動きをされると、広範囲攻撃でも逃げられるもんなんだな。
今までの経験上、広範囲の魔法攻撃を行使すれば大抵の魔物は討伐できていた。
やはりこの世界でも攻略難易度が高いクロト迷宮だ。
第二階層にして少しだけ焦った。
次も予想外のことが起きる可能性もあるので、身構えておかないといけないな。
そして第一階層と同じで奥には大きな扉があり、扉を開けると奥に階段がある。
階段を降りていき、直線の通路を歩いてボス部屋の前に立つ。
「次は何かな……ってなんだここは……?」
扉を開けると驚愕した。
今までとは違い、第三階層は火山地帯のエリアだったからだ。
こんな地下深くにこのような空間があるとは……迷宮とは恐ろしいものだ。
しかしあまり驚いている時間はなさそうだ。
この火山地帯の中央に1体の魔物が佇んでいる。
頭が2つあり、ライオンとヤギのような頭だ。そして尻尾は蛇。
「詳細鑑定……キマイラか」
キマイラもこの世界では見たのは初めてだ。
それに詳細鑑定の情報だと、キマイラは口から炎を吐き出すと書いている。
「暑いな……」
やはり火山地帯だから暑い……というより熱い。
どんどん汗が出てくる。サウナにいるような感覚とはまるで違う。
皮膚が熱気だけで火傷してしまうのではないかと感じてしまうほどだ。
このままだとキマイラ討伐どころではない。
とりあえずこのエリア自体を冷やした方がいいだろう。
「アブソリュート・ゼロ」
水魔法の神級魔法である絶対零度を発動させる。
広範囲を凍結させる魔法だ。
絶対零度の効果によって火山地帯のエリアを冷やすついでにキマイラも凍結することができれば楽なんだが……。
「ギャン!」
「やはりこれじゃ無理か」
絶対零度により、火山地帯のエリアを冷やすことに成功したが、キマイラは上空に飛んで冷気を逃れた。
炎を吐き出すことから火魔法は効かないだろう。それなら水魔法で攻めみよう。
俺は飛行魔法で上空へと飛ぶ。
「デリュージュ!」
水魔法の上級魔法である大洪水を発生させる。
第三階層のエリアを水で埋め尽くして、キマイラを溺死させる戦法だ。
大洪水がキマイラに向かっていく。
キマイラも上空に飛び一度は逃げるが、空を飛べるわけではないので、そのまま落下して大洪水に飲み込まれる。
「ゴボボボ……」
まるで、川の氾濫に飲み込まれた猫のような姿で手足で足掻いているが、波の流れにも逆らえず水の中に吸い込まれていく。
数分経過したが、中々キマイラが浮かび上がってこない。
「倒したか?」
しばらく上空で待機していると、キマイラの溺れ死んだ姿が浮かんできた。
よし、これで第三階層の攻略が終わった。早速、第四階層に進むとするか。
「あ……」
ちょっと待て。
水で第三層を埋め尽くしたから扉が見えない。
やってしまった。
何か魔法で水を消せないかな……?
しばらく考えて、一つだけ方法を思いついた。
俺は第四階層に繋がる扉の上空に来て土魔法を行使する。
「アースウォール」
水の中にある扉を囲うように土壁を作り出す。
「フレアボール」
そして土壁で囲った中に溜まっている水に炎球を何発も放り込む。
本当はもっと威力が高い火魔法で水を蒸発させた方が早いだろうけど、威力が強すぎて土壁も扉も破壊したら困る。
しばらく炎球を放り込んでいると、どんどん水が蒸発していき、土壁の囲いの中だけ水が無くなり、人が入れるようなスペースができた。
「危なかった。次は扉のことも考えて倒さないとダメだな」
俺は開かれた扉を進んで第四階層に向かった。




