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42 運命の出会い


 みなさんおはようございます。ヒナタです。


 タラサの街は連日、女神様の話題で盛り上がっています。

 どこを歩いても女神様の話が出てくるので、かなり居づらいです。

 私の話が出ているわけではないですが、なんか容姿が私に似ていることから女神の御使い様扱いされて、声を掛けられるようになりました。

 そしてもちろん、あのビーチバレーをした男どもも声を掛けてきた。

 本当に勘弁してもらいたい。

 でも、御使いではないけど女神イスフィリアとは親しい仲だから、あながち間違っていないのかも?


「カレン、シャル。王都に帰ろう……」


 このままタラサの街にいると私の精神がもたない。

 街を歩いていて話しかけるのはまだ分かる。

 ひどいのは、わざわざ御使い様を一目見ようと宿に来ることだ。

 実物の私を見て、「御使い様は胸が控えめなんですね……」とか言ってくるし。

 余計なお世話じゃボケ。

 討伐した本人ではあるけど、女神様でもないし御使い様でもないんだよ……。


「そうだな……」


 私の気持ちを察してくれて、カレンも帰ることに同意してくれる。

 私はこの街にいると住民から話しかけられて大惨事になるので、フードで顔を隠して冒険者ギルドに行く。

 依頼ボードで王都への護衛依頼を見つけて受付に持っていく。


「あ、ヒナタさん。この街を救ってくれて本当にありがとうございました」


 ミルファが私に向かってお礼を言う。

 やはりフードを被っていても分かる人には私って分かるみたいだ。


「気にしないで。私にできることをやっただけだから」

「またこの街に来てくださいね」

「うん。機会があったらまた来るよ」


 銅像のことを除けば、この街の魚を求めてまた来ることになるだろう。

 そしてミルファとの会話を終えた私たちは、依頼も正式に受注したため冒険者ギルドから出る。


「いい街だったね」

「そうだな。活気があっていい街だったよ」


 シャルの言葉にカレンが返す。

 2人にとってはいい思い出の街なんだろう。

 私にとっては、最初は海鮮丼が食べられて良い印象だったけど、御使い様扱いされてから嫌な思い出だけで埋め尽くされた。

 私のケートスを討伐を住民が見ていなければ、こんなことにはならなかったんだけどね。


 私たちは宿に戻り、街を出ることを伝えた。

 そして御使い様への住民の訪問で迷惑をかけたのでお詫びの品として、昔に作ったパンケーキを差し上げて宿から出た。

 

 依頼主の商会へと行きカレンが代表して挨拶をする。


「冒険者のカレンとシャーロット、そしてヒナタです」

「よろしくお願いします。カルタ商会のハナフダと言います」


 カルタ商会はこのタラサの街に来るときにお世話になった商会だ。

 今度は別の人が王都に向かうようだ。

 お互いの挨拶も終わったので、馬車に乗りタラサの街を出る。


「それにしても、タラサの街で噂されている女神様は本当にいたと思いますか?」


 依頼主のハナフダからもこの話題か。

 王都に行くまでは、この話題から逃れられないのかもしれない。

 会話はカレンに任せて、私は気配探知に集中しよう。


「あ〜……。どうだろうな。でも、実際に見た人がいるなら、信じても良いかもしれないな……」


 カレンが私を見ながら言っている。

 こっち見ないでよ。


「やはりそうですか。私もタラサの街に女神様が舞い降りたと信じております」

「あたしが言うのもなんだけど、なんで信じられるんだ?」

「長い間、行商人として各地に回っていますから分かるのですが、海の魔物を倒すのは困難を極めます。軍隊でも呼んで何隻も船を出しての討伐になりますから。それなのにあの海の魔物を一晩で討伐するのは人間では不可能です。なので女神様が討伐してくれたと考えます」

「……人間には不可能か」


 それくらい私が非常識なことをしたということか。

 もし私がタラサにいなかったら、軍隊でも呼んで討伐していただろう。

 そして被害も多く、人もたくさん死んでいたと思う。

 私が飛行魔法を覚えていてよかった。

 あとカレン、私を見るな。


 女神様の話はその後も続いていたが、カレンが対応していた。

 たまにカレンが私を見てくるから、睨んでやったよ。

 

 夜になったので、野営の準備をして、ハナフダから提供された食料を食べる。

 タラサへと行くときと同じで干し肉と野菜スープだ。

 カルタ商会は夕食にこれを提供する商会と覚えておこう。


 夜はカレン、シャル、私の順番で見張り当番だ。

 これもタラサに行くときと同じだ。

 今回は盗賊の心配もないので、ゆっくりできそうだ。

 噂だと私たちが捕らえた盗賊からアジトを聞き出して、壊滅させたみたいだ。


 でも警戒はしたいので、気配探知で周囲の反応を確認しながら朝を迎えた。


「おはようー」

「おはようございます」


 カレンとシャルが起きてきた。

 少し寝間着がはだけて興奮する。

 朝から刺激が強すぎる。


「おはよう」


 私も挨拶を返して、朝食を食べた後、馬車に乗って出発した。


 しばらくすると、気配探知に反応があった。

 400メートルくらい先に魔物の反応が5つある。

 でも、魔物の反応がする中央には人間の反応もある。

 ということは魔物に襲われているってことだ。


「すいません! この先で人が魔物に襲われています!」


 私がハナフダに向かって叫ぶ。


「どうするヒナタ!?」


 カレンが私に意見を求めてくる。

 私たちの護衛対象はあくまでハナフダだ。

 でも、魔物に襲われている人を放置もできない。

 なら、私だけでも行ったほうがいいだろう。


「私が先行していくよ! カレンたちはこのまま進んで!」


 私は急いで馬車から飛び降りて、身体強化を使って走り出す。

 久々に使ったが、かなり有用なスキルだ。

 すごいスピードで走れる。100メートル8秒くらいで走っている気がする。

 前世なら私もオリンピックで金メダルが狙えるよ。


 襲われている馬車が見えてくると、5体のオーガがいた。

 馬車の護衛がすでに倒れている。

 ちょっとまずい状況だ。私が先行してきて正解だ。


「ロックショット!」


 岩石弾(ロックショット)をオーガ5体に放つ。オーガの頭に命中させてオーガがその場で倒れる。

 もう、岩石弾のコントロールが完璧すぎる。

 100メートル離れていても、オーガの頭に当てることに成功した。


「無事ですか!?」


 馬車の扉を開けて中にいた女性に声をかける。


()()()助けが来ましたか……」

「え?」

「いえ、なんでもありません。お名前を伺っても良いでしょうか」

「冒険者のヒナタと言います」


 中にいた女性はかなりの美人だ。

 背中まで流れるピンク色の長髪で、さらに長身の美しい女性だ。

 ここまでの美人は初めて見た。


「ヒナタ様。助けていただいてありがとうございます。私はサンドラス王国が第一王女ソティラス・サンドラスと申します」


 おっと、王女様でしたか。

 通りで美人なわけだ。

 なんか王族とか貴族の女性は美人のイメージが強いけど、王族はまた別次元だな。


「王女様でしたか。これは失礼致しました!」


 礼儀作法は知らないが、以前国王と謁見した時みたいに片膝をついて頭を下げる。


「助けていただいた方に頭を下げていただく必要はありません。どうか頭をお上げください」


 言われた通りに頭を上げる。


「護衛の騎士もオーガによって殺されてあのままだと私も危なかったでしょう。ヒナタ様には感謝の言葉もありません」

「いえ、たまたま通りかかっただけですので……」


 王女と2人きりで話すのは緊張する。

 まさかこんな場所で王女と会うとか誰が想像するよ。


「ヒナタ! 大丈夫か!」


 ちょうど良いところで、カレンがやってきた。

 ナイスタイミングだよカレン。


「馬車の中にいた人は無事みたいだな」

「あ、カレン。うん、王女様だけは助けられたよ」

「は? 王女様?」


 カレンの目が点になる。

 この顔は初めて見るな。面白い。


「うん。サンドラス王国の第一王女様だったみたいだよ」

「……マジで?」

「マジで」

「……失礼しました!」


 カレンが勢いよく土下座をした。

 やばい、カレンが面白い。

 私がカレンを見て微笑んでいると、王女様が話し始めた。


「えっと、カレン様ですか。ヒナタ様のお仲間の方でしょうか?」

「はい! ヒナタとはパーティメンバーです!」


 カレンは土下座したまま話し始める。

 私はそれを見て失笑する。


「カレン様もそのような態度は不要です。楽にしてください」

「……ありがとうございます」


 カレンの顔が青ざめている。

 かなり緊張しているみたいだ。

 でもカレンはまだ私と2人だから良いじゃん。

 私はさっきまで2人きりだったんだよ。


「申し訳ないのですが、騎士が殺されてしまったので王都までご一緒させてもよろしいでしょうか?」


 王女様も王都まで同行するとかどんな罰ゲームだよ。

 御者ができる私かシャルが王女様の相手をすることになる。

 シャルは絶対そういうのはできないから、消去法で私だ。


「では、私が御者と護衛を致します」


 3人で揉めたくないので、率先して立候補する。


「ヒナタ様。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」


 王女様と2人で王都に帰ることになりました……。


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