36 海といえば!
海鮮丼が美味しすぎる。
久しぶりの新鮮なお魚……。
懐かしさのあまり涙が出てくる。
「この海鮮丼? 美味いな!」
「おいしいね!」
どうやらカレンもシャルも気に入ってくれたようだ。
それにしても新鮮な刺身だけではなく、さらには醤油まであるとは……。
嬉しい限りだよ。元日本人としては感謝しかない。
それから、海鮮丼を堪能した私たちは、市場に行ってお魚と醤油を買いに行った。
とは言っても、主に私の単独行動だったけど。
だって気がついたら2人がいなくなってたんだもん。
大量に買い込む私に店主のおじさんにもかなり驚かれた。
こういう時に無限収納スキルは便利だ。有効活用しないとね。
もしかしたら、この時のために女神イスフィリアはこのスキルを与えてくれんたんじゃなかろうか。
その後、お米も大量に仕入れて、宿へと戻った。
宿に行くと、カレンもシャルも帰ってきていた。
途中で私とはぐれたことで、宿へと戻ってきていたみたいだ。
「遅いよ! ヒナタ!」
「1人で進んで行っちゃうから、見失いましたよ……」
「ごめん、ごめん」
全く悪気のない謝罪をしてから、宿の食堂でお酒を飲んだ。
おつまみにも刺身が出てきて、ここでもテンションが上がった。
翌朝目覚めて、私はせっかく海に来たからやりたいことがあると2人を起こす。
「ねぇ、2人とも。海といえばなんだと思う?」
「は? 海といえば魚なんじゃないの? 昨日もすごいテンションで食べていたじゃん」
確かに海鮮料理も目玉の一つだよ。
でも違う。
「シャルはなんだと思う?」
「えーと。船に乗るとか、釣りをするとかですかね?」
残念ながら私に船に乗る楽しみはない。船酔いするし。
でも、釣りは確かにいいかもな。前世でも川釣りはしていたし。
しかしそれも違う。
「違うよ2人とも! 海といえば海水浴だよ! 水着を着て、海で遊ぶんだよ!」
そう。海水浴だ。
私は2人の水着姿を見たいのだ。
カレンの長身に素晴らしいスタイルが組み合わされば、水着モデルだ。
シャルの幼い身体にスクール水着……。
おっと、いかん。鼻血が……。
2人が嫌そうな顔をしているが知ったことではない。
強制参加だ。
「とにかく! 海に来たなら海水浴だよ! さぁ、行くよ!」
2人の手を掴んで強制連行する。
水着を売っている場所に行って、2人に似合う水着を選ぶ。
水着を着た2人を見て、私は歓喜する。
「かわいい! 2人とも素晴らしいよ!」
カレンは、黒のビキニ。
シャルは、スクール……。間違えた。白のワンピースタイプの水着。
私はスタイルにはそこまで自信はないので、なるべく肌を隠せるようにワンピースの水着にしたかった。
しかし、2人から許可が降りず、私は白を基調とした花柄のビキニになった。恥ずかしい。
でも、私が誘ったからには諦めるしかない。
「海だぁぁ!」
「それ、この街に着いた時も言ってたじゃん」
カレンはどうやら空気が読めないらしい。
海に来たらとりあえず叫びたいよね。
え? 私だけ?
私は上に羽織っていたパーカーを脱ぎ捨てて、すぐに水着姿になり海に入った。
「冷たいっ!」
久しぶりの海だ。
子供の頃は家族で海に行っていたけど、中学生になってからは行っていない。
大学に入っても、サークルのメンバーと海に行く陽キャでもなかったしね。
海に行くのが陽キャかは分からないけど……。
でも陰キャの私にとってはそう思えた。
「気持ちいいな!」
「冷たいけど、気持ちいい!」
2人も水着は嫌がっていたけど、海は気持ちいいらしい。
2人を見ていると癒される。
こんな美女と美少女を連れて海に来るなんて前世では考えられない。
しばらく3人で海を泳いだりした。
海の奥の方には、岩でできた小さな孤島のようなものがあり、遠視で見てもよく見えないくらい遠い。
でも、その孤島の近くで水飛沫のようなものが上がったりしていた。
もしかしたらこの世界にも鯨がいるのかもしれない。
海で泳いだ後は、ビーチバレーを楽しんだ。
なんかビーチバレー用のネットがあったんだよ。
この世界でもあるのが意外だったが折角なので遊んだ。
まあ、3人では試合形式は難しいのでネットを挟んで3人でパスするくらいの簡単な遊びだ。
しかし、ボールを追いかける時にカレンが走ったせいで……というよりそのおかげで胸が揺れまくっていた。
終始水着が取れないかヒヤヒヤしたけど眼福でした。
男の姿であれを見ていたら、息子が大変なことになっていたよ。
女でよかった……。
遊び疲れたのでそろそろ帰ろうかと思ったところで、遠くで私たちのビーチバレーをジロジロ見ていた男達が話しかけてきた。
「お姉さん達、よかったら俺らと遊ばない?」
これはナンパだ。
前世でやりたかったけど、勇気がなくてできなかったナンパだ。
勇気がある男達だなと感心していると、カレンが話し始めた。
「そういうのはお断りだよ。それにあたしらもう帰るところだったからさ」
カレンが断るが、それで引き下がらないのがナンパなのだ。
「少しくらいいいじゃん。ほら、さっきビーチバレーやっていたでしょ? 俺らともやろうよ」
まさかのビーチバレーのお誘いか。
もしかしてカレンの胸目当てか? ぶるんぶるん揺れていたもんね。
私もつい凝視しちゃってたよ。
「もう帰るから。さよなら」
カレンが強行突破しようとしたが、男が遮り帰らせないようにする。
ニヤニヤした顔でカレンの水着姿を見ている。
さすがにキモくなってきた。これだけ直球に断っているのだから諦めてもらいたいもんだけどね。
ナンパにもそれなりに礼儀が必要だよ?
このままでは埒も空かないので私は男達に提案してみた。
「私たちがあなたたちとビーチバレーをやって、なんの利益があるの?」
根本的にはそうだよね。
メリットがないんだよ。
「そうだな。俺たちに勝ったら、ご飯を奢ってあげるとかどう?」
「勝ってもあなたちとご飯を食べるなら罰ゲームじゃない?」
男達がちょっとだけイラッとしていた。
「はあ……。優しく声を掛けたからってつけ上がるなよ。……あ、さてはビーチバレーで俺たちに勝てないから逃げようとしているのか?」
おっと。挑発してきたよ。
馬鹿じゃないんだからそんな見えすいた挑発に乗るわけがないだろ。
そもそも本当に私たちにメリットがない。
勝っても罰ゲーム。負けたら何されるか分からないし。
適当に逃げることを認めて帰った方が良さそうだな。
「言ってくれるじゃねぇか! やってやるよ!」
私が言い返そうとするのを阻んでカレンが怒り出す。
……いや、なんで挑発に乗るのよカレン。
ほら見て、シャルも呆れてるよ。
そして男達もまたニヤけ出してるじゃん。
「ならやろうぜ! 2人ペアでやって、先に21点先取した方が勝ちな」
仕方がない。これはやるしかなさそうだ。
カレン、凄い怒っているようだけどあなたのせいでこうなったんだからね?
「ルール違反とかは特にないの?」
「ルール違反? 特にはねぇな。ビーチバレーのルールに従ってくれれば問題ねぇよ」
一応確認だ。
この男達が何かイカサマをしてこないとも限らないからね。
本当は早く帰りたいけど、カレンが挑発に乗っちゃうからやるしかない。
「なら、私たちが勝ったら全裸で街を歩いて帰ってね」
「なら、俺たちが勝ったら今日1日は俺たちと遊んでくれ」
私の提案も中々だけど、こいつらもキモいの提案してきたよ。
確実に私たちをお持ち帰りするつもりだよ。
「カレン、シャル大丈夫?」
「やってやるぜ!」
「……大丈夫」
よし、ではこれから私たちの貞操をかけたビーチバレーを始めようではないか。
「こっちは、私とカレンでやるよ」
私とカレンは水着……ではなく水着の上に服を着てコートに入る。
この男達のニヤついた顔を見たら間違えて殺しちゃいそうだしね。
刺激はしないようにしないいけない。
男達も2人を選んで、コートに入ってきた。
「よし、始めるぞ!」
男が開始の合図をして、勝負が始まった。
そして……。
結果は、21−0で私たちの圧勝だった。
だってルールに魔法はダメなんて書いてないもん。
風魔法でいくらでも変則的なボールを打てるし、地面に落とすこともない。
つまり、私が出たことですでに勝負はついていたのだ。
「さて、早く水着を脱いで」
「ふざけんなよ! このクソ女! 魔法を使うなんて反則だろうが!」
「そんなルールはないでしょ。確認したよね? ルール違反はないかって」
悔しそうな顔をして、膝をつく男達を見下ろす私。
なんか女王様になったみたいだ。
なかなか脱ぎそうにないので、男達を風魔法で宙に浮かせる。
そして水着を脱がして風魔法で水着を切り刻み全裸にする。
久しぶりに男の息子を見て懐かしいと感じた。
私たちも貞操をかけていたんだから、これくらい男なら問題ないでしょ。
「じゃ、帰ろっか!」
「あ、ああ」
「そ、そうですね」
私はそのまま帰ろうとして、カレン達も付いてくる。
何もメリットがない勝負だったな。
せっかく楽しい海水浴だったのにあいつらのせいで気分が悪くなってしまった。
その後、男達がどうやって家に帰ったかは分からない。




