34 サーシャと王都デート
みなさんこんにちは。ヒナタです。
今日は朝から王宮に行くという予想外の展開はありましたが、午後からサーシャとデートです。
何故かカレンとシャルもいるけど……。
「さて、どこに行こうか……」
「ヒナタお姉ちゃんとならどこでも嬉しいです!」
私が呟くと、サーシャが嬉しいことを言ってくれた。
顔がニヤけてくるから、ちょっとまずい。
「カレンとシャルはどこか行きたいところとかある?」
「とりあえず、ご飯かな」
「私は……洋服を見に行きたいです……」
そうだった。
まだお昼を食べていないことに気が付く。
それにシャルは服が欲しいみたい。やっぱり女の子だね。
であれば私はついでに下着でも買おうかな。最近、胸が大きくなってきてブラのサイズが合わないんだよね。
胸が常に締め付けられている感じがして窮屈なのだ。
「なら、ご飯食べてから服飾店にでも行こうか。サーシャちゃんもそれでいい?」
「はい!」
私たちはご飯を食べるために食事処を探しに行った。
王都に来てから、ほとんど食事は宿でしていたから、外食は酒場くらいだ。
やはり王都だからか、ウルレインにはないような食事処がたくさんある。
「サーシャちゃんは何か食べたいものとかある?」
サーシャは悩んでいた。
前世で彼女に同じことを聞いたら、すぐに「どこでもいい」と毎回言われていたから、男だった時は結構大変だったんだよね。女心は正直分からないけど、考えるこっちの身にもなって欲しいものだ。それにあんまり美味しくなかった場合は文句も言ってくる。今思えば、単に付き合う相手が悪かったのもしれないけど。
そんな前世の彼女と比べてサーシャは真剣に悩んでくれている。こういうのって大事だよね。人任せにせずに自分も一緒に考えることっていうのは。
それに首を少し傾げながら考えるサーシャの姿はとても可愛い。サーシャへの好感度が鰻登りだ。
「……オムレツが食べたいです!」
「オムレツね。カレン達はどう?」
「いいぜ!」
「大丈夫です」
ということで、サーシャの希望通りオムレツに決まりました。
どうやらシャルがおいしいオムレツが食べられるお店を知っているみたいなので付いていく。
「ここです」
お店に着くと、結構な行列ができていた。
これは30分くらいは待ちそうだな。
「混んでいるけど、ここでもいい?」
「はい!」
私はサーシャに聞くと笑顔で返ってきた。
列に並んでいる間は、私達がいない間にサーシャが何をしていたのかを聞いたりしていた。
基本は屋敷の中でお母さんと優雅にお茶をしていたことが殆どだったようだが、流石に勉強をしないと学園に入学した時に恥をかいてしまうため、勉学にも取り組んでいたようだ。
他にも年齢が近い貴族令嬢達とのお茶会にも参加していたらしい。
こういうのを聞くと、貴族間の嫌味や恨み辛みなどの会話を遠回しな言い方で繰り広げられているのかな……なんて思ったが、どうやらサーシャの話を聞いているとそうでもないようだ。
普段から仲良くさせてもらっている令嬢とのことで、唯々優雅にお喋りをして楽しんでいたみたい。
そのうちサーシャも婚約者とかができて、お嫁に行くなんて考えるだけで胸が苦しくなる。
これってまさか……恋? まあ、そんなわけないか。
と、そんな会話をしていると30分くらいが経過しており、ようやく私たちの順番が回ってきた。
お店の中に入ると綺麗な内装のお店だった。
席に着いた後、メニューを渡され無難にトマトソースがかかったオムレツを頼んだ。
他にもホワイトソースみたいなものやきのこなどの山菜を乗せたオムレツもあった。
各々で好きなオムレツを頼む。
そして10分程度でオムレツが運ばれてくる。
「おいしい……」
オムレツを食べると、本当においしかった。
中は半熟で、食べるとふわっとした感触。そして卵もしっかりと味付けがされており、少しだけ甘い。
それに少ししょっぱいトマトソースが合わさって、絶妙のハーモニーが……。
ってなんか心の中で食レポしてしまった。
でもこれは行列ができて、人気が出る理由も分かる。
でもせっかくならオムライスが食べたいなと思ってしまう。
米とかってこの世界に転生してから見たことないけどあるのかな……。
そして全員がおいしそうに黙々とオムレツを食べていたが、唐突にカレンが口を開いた。
「そういえば、ヒナタってなんでこんなにサーシャお嬢様と仲がいいんだ?」
そういえばなんでだろう。
私が初対面でプロポーズしたから? ってそんなわけないか。
でも、気がついたら仲良くなっていたんだよね。
「最初のきっかけは、サーシャちゃんの乗っていた馬車が街道で盗賊に襲われていたのを助けたんだよ」
「え、そんなことがあったのか?」
「うん、それでサーシャちゃんにお礼として、ウルレインの街のブルガルド家の屋敷に招待されたんだ。そこで一晩一緒にいて、気がついたらこんなに仲良くなってたんだよ」
正直、正確な理由は分からない。
でも、友達って気がついたらなっているもんだよね。
「はい、ヒナタお姉ちゃんにはとても感謝しています。私は領主の娘なので、歳の近い人はお姉ちゃんしかいませんでした。なので、お友達ができて嬉しいです。とは言っても、もう1人のお姉ちゃんとして慕っておりますが」
私もサーシャは妹みたいなものだ。
大人びているけど、実はやんちゃなかわいい妹のような存在。
ただ私が勝手に変な妄想をして、妹という枠を越えそうになるだけ。
客観的に見れば仲の良い姉妹を演じているに過ぎない。
そして全員がオムレツを食べ終わり、次の目的地は服飾店に決まった。
服飾店に入ると、店員さんが歓迎してくれた。
「「いらっしゃいませー!」」
中に入ると高そうなドレスや、平民でも買えるような婦人服、女性用下着、それに装飾品も揃っている。
私はそそくさと1人で下着売り場へ。
店員さんに話して、私のサイズに合うブラを選んでいた。
胸のサイズを測るときに上半身だけ脱ぐけど、少し恥ずかしい。
やっぱり精神的にも女性になっているのかもしれない。
ブラについては前から持っているやつでも問題はないけど、まだ大きくなるかもしれない。
だからサイズを測り終えた後何着か試着してみて、私に似合いそうで派手ではないブラを3着購入した。
そしてブラを購入した私がサーシャ達に合流すると、何やらワイワイと盛り上がっていた。
「カレンさん素敵です!」
「カレン綺麗だよ!」
サーシャもシャルも興奮しているようだ。
どうやら試着室の中にカレンがいるようだ。
私もそばに近寄り、中を覗いてみると普段と違う真っ赤なドレス姿のカレンがいた。
「……綺麗」
カレンは長身で長髪で綺麗な顔立ちをしているが、どうも女子力は足りない。
いつもの服装は、昔の私みたいにパンツスタイルで、スカートを履いたりしているところは見たことがない。
ちなみに私はよくミディスカートを愛用している。
そんな彼女が目の前でドレスを着ている。
まるで、高貴の貴族令嬢のように美しい。
「こ、こんな格好恥ずかしいだろ!」
そして顔を真っ赤にして照れているカレンが可愛すぎる。
おっと鼻血が……。
「カレン! それ買おう!」
「いやいや! こんなドレス普段着ねぇよ!」
「お嫁に行くときに必要だよ!」
「いや、いらねーよ!」
私は興奮して、わけがわからないことを言っていた。
でも、確かにドレスは着る機会が少なすぎる。貴族のお嬢様でもなければ着る機会などないのだ。
しかし、カレンにはこういう女の子らしい格好もして欲しいと感じる。
そんなことを考えているとシャルが言葉を発する。
「なら、ドレスじゃなくても可愛い格好するとかどう? ヒナタさんがよく着ているワンピースも似合うと思うよ!」
よく言った!
シャルもすごい興奮している。
「いや……女の子らしい格好なんてあたしに似合わねえだろ」
「「「似合うよ!」」」
全員で声が揃った。
カレンは私たちの圧に気圧されていた。
その後は、カレンを着せ替え人形にして、全員で何着も可愛い服を着せた。
ワンピースやスカート、念の為ミニスカートも履かせてみた。
カレンも途中で疲れたのか、ぐったりしている。
結局、私たちが選んだワンピースやスカートを3着買って店を出た。
「つ、疲れた……」
カレンはかなり疲れたようだ。
私たちは興奮していて、全員がなぜか笑顔だ。
今夜にでも宿でファッションショーでもやってもらおうかな。
絶対カレンは反対するだろうけど。
夜になってきて、酒場も盛り上がってきたので、私たちはサーシャを送り届けるためにブルガルド家へと向かった。
「あれ、この奥にも人が多いけど、あっちには何があるの?」
少し街中から外れた路地にたくさんの男性と女性がいて盛り上がっていた。
「あー、あっちは……ほら」
カレンが何か言いづらそうにしていた。
そして私に耳打ちするように教えてくれた。
「あっちは娼館街だよ……」
娼館か!
もし私が男として転生していたら絶対にお世話になっていたな。
前世でも数え切れないくらい……って、やっぱりなんでもない。
「あ、ごめん……」
ちょっとだけ気まずい雰囲気になってしまった。
サーシャが不思議そうにこちらを見ていたが、なんとか誤魔化す。
そしてブルガルド家に到着して、サーシャとお別れした後、私たちは宿へと戻った。
「明日は冒険者ギルドでも行こうか」
夕食を食べながらカレンが言ってきた。
「そうだね。いろいろあったけど、仕事はしないとね」
私たちは夕食を食べ終えてから部屋に戻り眠りについた。
ファッションショー?
カレンに全力で拒否されたよ。




