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30 不穏な雰囲気


「そこの金髪の女よ。見目がいいな。俺の愛人にしてやるからついて来い」


 本当にクソ貴族だな。

 公衆の面前で愛人になれって失礼すぎるでしょ。


「そ、そんな! 困ります!」


 当然のようにシャルが断るが、クソ貴族も黙っていない。


「貴様。この俺の愛人になれるのだぞ。平民にとってこれ以上ない名誉だろう」

「無理なものは無理なんです!」

「……平民の分際で俺の誘いを断るとどうなるのかわかっているのか。ただでは済まんぞ」


 俺様キャラって初めて見たけどかなり痛いな。

 自分で言っていて恥ずかしくないのかな。

 貴族に脅されたためかシャルも見るからに怯えている。

 さすがに貴族の誘いを断り続けるのは難しいだろう。

 ここは私が助けてあげないと。


「いくら貴族の方でも、そんな脅しをこんな公衆の面前で行っても良いのでしょうか」

「誰だ貴様は」

「彼女のパーティーメンバーですよ」


 名前は名乗らない。素性を調べられたら後々面倒なことになりそうだから。


「ふん、冒険者風情が(いき)がるなよ。貴様ら平民は貴族のために生きているんだから、その貴族のいうことを聞くのは当然だろうが」


 どのような教育がされているかは知らないが、間違いなく違うと断言できる。

 確かにお貴族様が治める領地で暮らし、働いて生きてはいるが貴族のためではない。

 そもそも貴族は私達平民からの納税によって贅沢ができているわけだ。

 そんな平民からの恩恵も忘れて、貴族だからとなんでも許されるわけではない。

 立場上、貴族は偉いかもしれないがそれでも平民を蔑むことにはならない。


「あなたのミスリアド家ではそのような考え方なのですね。それに今の発言だと、他の貴族家もあなたの家と同じ考え方だと言うことになります。私は構いませんが、そのような他家への侮辱発言は慎まれた方がよろしいのでは?」

「ぐぬぬ……」


 クソ貴族が悔しそうな顔をしている。

 なんだその顔は。お前が言ったことだぞ。

 ちゃん自分の発言には責任を持った方がいいよ?

 そして私は、クソ貴族相手に畳み掛けるように言葉を発する。


「あなたの発言はここにいるお客様の全員が聞いています。明日にはこの王都でも噂が広がりそうですね?」

「……くそっ! 覚えてろよ!」


 クソ貴族は酒場を出ていった。

 というか、この言葉2回目なんだけど。

 もしかして毎回言っているのかな。

 

「ヒ、ヒナタさん。ありがとうございます……」

「気にしないで。あのクソ貴族が悪いんだから」


 それにしてもクソ貴族のせいで店の雰囲気が悪くなった。

 このまま普通に食事を楽しむことはできないよね。


「もう出ようか……」

「そうだな……」

「はい……」


 私たちは会計をしてから酒場を出て宿へと戻った。

 そして私はカレンとシャルがいる部屋に行き、今日のことについて話をしていた。


「あの貴族はなんだったんだろうな」

「実は……私は見たことがあるんだよ」

「え、そうだったんですか……?」


 私は前にあの貴族に会った時のことを思い出していた。

 あの時も公衆の面前で子供に悪態をついていた。

 自分の権力を振り(かざ)すのが好きな貴族なのかもしれない。


「うん。前に見た時も街中でぶつかった子供に悪態をついていたよ……」


 2人とも(うつむ)いていた。

 あの貴族はそういう奴だと割り切った方がいいかもしれない。


「うん。今日のことは忘れた方がいいな」

「そ、そうだね。気にしないでおこうか」

「うん」


 カレンの言葉に私とシャルが頷く。

 その日はそのまま3人で寝てしまった。




 翌朝目覚めて3人で話し合い、日帰りでできる依頼を受けることになった。

 早速冒険者ギルドに行き、依頼ボードを確認する。

 

「このオーガ討伐とかどう?」


 オーガか。まだ出会ったことがないから是非受けたい依頼だ。


「私はオーガを見たことないから賛成かな」

「わ、私も大丈夫」


 私とシャルも賛成する。

 ということで、今日の仕事は森で見つかったオーガ討伐だ。

 私の気配探知で魔物の位置はわかるから、歩いていればそのうち見つかるだろう。


 私たちは森に向かい、オーガの目撃情報があった周辺へとやってきた。


「どうヒナタ? この辺にいそう?」


 私は気配探知で周囲の反応を調べた。

 すると、ここから300メートルくらい先に反応があった。


「この先に反応があるよ。行ってみようか」


 そして私達は一列になって森を進む。

 先に進んでいくとオーガが2体いた。

 こちらにはまだ気がついていないようだ。


「ヒナタ、ここはあたしたちに任せてくれ」

「え、うん」


 なんだ私も戦いたかったのに。

 でも、なんだかんだこのパーティーで共闘したのってゴブリンキングくらいだ。

 2人にも活躍の場は設けた方がいいのかもしれない。


「いくぞ! シャル!」

「うん!」


 まずはシャルが弓でオーガの目を狙った。1体のオーガの目に矢が刺さる。

 蹲ったオーガに向かって、すぐにカレンが剣で両断する。

 それを見た2体目のオーガがカレンに向かって持っていた槌で攻撃しようとする。

 しかし、すぐにシャルの矢がそのオーガの目に刺さる。すぐにカレンが2体目のオーガを剣で両断する。


 すごい連携だと思った。見ていて無駄がなく鮮やかだった。

 やっぱりお互いを信用していて、さらに2人の実力があるからこその戦闘だった。


「すごい! 2人ともすごいよ!」


 私は興奮しながら2人に近づいていく。


「そうか? ありがとな!」

「あ、ありがとうございます」


 2人は照れながら答えてくれた。

 しかし、オーガを両断とはカレンはすごい。


「それよりも、このミスリル剣すごすぎるぞ! 今までもオーガを討伐してきたけど、両断できたのは初めてだ!」

「うん! すごかったよね! 私も2体目のオーガを攻撃しようとした時に驚いちゃった!」


 どうやらミスリル剣によってあの両断が成立したみたいだ。

 しかも、シャルもすごい興奮している。

 こんなシャルを見たのは私が初めて飛行魔法(フライ)を使ってワイバーンを討伐した時以来だ。


「ミスリル剣もそうかもしれないけど、カレンの剣の実力もあったからだよ!」

「そ、そうかな?」


 私がカレンを褒める。

 カレンは照れている。

 可愛いです、ありがとうございます。


 私は2人の目を盗んで、オーガに強奪スキルを使った。


名前:ヒナタ

種族:人族

年齢:15歳

職業:魔法使い

HP :178/178(+2)

MP :253/323(+1)

スキル:水魔法LV7

    風魔法LV7

    火魔法LV5

    土魔法LV7

    無限収納

    威圧LV4

    毒霧LV1

    毒耐性LV3

    麻痺耐性LV2

    気配察知LV5

    気配遮断LV4

    隠密LV5

    発情LV2

    遠視LV4

    気配探知LV4

    自然回復LV4

    身体強化LV2

ユニークスキル:強奪


 ステータスを確認すると、新しく身体強化が得られた。

 オーガが真っ二つにされているから、強奪できるか不安だったけど、このような欠損では問題なく強奪できるみたいだ。


 それにしても身体強化か。

 どういう能力なのか分からないから調べる必要もありそうだな。

 試しに使ってみよう。


 ……うん。あまり変わった感じがしない。

 筋肉ムキムキになったらどうしようかと思ったけどよかった。

 このまま身体強化のままでいよう。身体の変化に気がつけるかもしれない。


「さて、依頼も完了したから帰ろうか」


 カレンの言葉に私たちは頷いて、王都へと向かった。


 帰る途中に気がついたが、身体強化中だと全く疲れない。

 森まで移動したときは多少なりとも疲労があったけど、今は全くない。

 今度余裕があったら、戦闘の時にも使ってみよう。

 相手の攻撃を回避するスピードが上がるかもしれない。


 王都について冒険者ギルドに行った。

 すると、いつもより騒がしかった。


「何かあったのかな?」

 

 私がそう呟くと、カレンたちも首を傾げていた。


 どうやら奥の方で人だかりができている。

 近くにいた冒険者に聞いてみると、どうやらSランク冒険者のケータがきているとのことだった。

 あのクソ貴族を返り討ちにした好青年の冒険者だ。

 この人だかりをみるとかなり人気みたいだな。


「すごい人気だな……」


 カレンが呟いた。

 本当にそうだよね。

 確かにSランク冒険者は希少だけど騒ぎすぎだよ。まるで英雄のようだ。

 私たちはこの騒ぎを無視して、受付に行って報酬を受け取った。

 宿に戻ろうと3人で話していると、ケータが私の方に向かってきている。


「あなたは確か……。ヒナタさんだよね?」


 覚えているんだ。

 少ししか話していないのにすごい記憶力だ。


「あ、はい。ケータさんも冒険者ギルドに来ていたんですね」

「うん。しばらくはパレルソン帝国に行く予定だから、最後に挨拶に来ていたんだよ」

「あ、そうなんですね。その国では何を?」

「……ちょっとやることがあってね」


 ちょっと濁したような言い方だった。

 何をしに行くのか分からないけど、私には関係なさそうだね。


「そうなんですか。気をつけて行ってきてください」

「うん。ありがとう」


 ケータはそのまま、冒険者ギルドを出て行った。


「ヒナタ、知り合いだったんだな」

「うーん、少し話したことがある程度だよ」


 予想外の再会ではあったが、私たちは冒険者ギルドを出た。


 そして3人で宿に入り、夕食を食べながら明日はまた別の依頼を受けようと話した。

 私とカレンたちは別の部屋のため、別れてベットに入り眠りについた。




 まだ日が登っていなくて、外が暗い中で私の部屋に勢いよくカレンが入ってきた。

 その音で私はびっくりして飛び起きた。

 扉を見るとカレンはかなり慌てた様子だった。


「ヒナタ! シャルが攫われた!」

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