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28 教会に行ってみる


 みなさんこんにちは。ヒナタです。


 コリン村での騒動も終わり、アンナたちにお別れの挨拶をして、夕方には王都に帰ってきました。


「なんか久しぶりに帰ってきた感じがするなー」

「そうだね」


 カレンとシャルが呟く。

 私は一度王都に帰ってきたので、そんな感じはしないが、2人にとっては、2週間近くも離れていた事になる。

 なんだかんだ、アミット村でのゴブリン討伐の依頼を受けたのに、ゴブリンキングもいて大変な思いをしたかと思えば、帰りにアンナを助けて、コリン村でのアンナのお母さんの看病とトロールの襲撃で思ったより王都に帰って来るまで時間が掛かってしまった。


「2人はどうする? 私は宿でも取って少しゆっくりしようと思うけど」


 とにかく私はゆっくり寝たい。

 安全な場所で、周囲の索敵をしなくても休める環境で寝たいのだ。

 王都を出てから索敵のため、気配遮断を発動させていたし、気配探知を取得してからは脳内マップで周囲の確認もしていた。


「そうだね。私たちもゆっくりしたいから、しばらくは自由行動にしようか」

「そうですね」


 カレンとシャルも自由行動をするみたいだ。

 私の勝手なイメージだけど、この2人は常に一緒にいるように見える。別々で行動することもあるのかな。

 そんなことを考えながら、私は前回と同じ宿に泊まることにした。

 部屋に入り布団に入ると、案の定疲れが溜まっていたのかすぐに眠ってしまった。




 目が覚めると、外はすっかり明るくなっていた。かなり長い間、寝ていたみたいだ。

 私は今日何をしようか考えていると、ふと思いついた。

 そういえばこの世界に来てからもう3ヶ月が経過している。

 教会に行って、女神イスフィリアにでも挨拶をしておこうかな。

 私はすぐに支度をして、宿を出て教会に向かった。初めて教会に行くので少し緊張する。

 しばらく歩くと、教会が見えた。白い外装でいかにも教会って感じだ。

 緊張しながらも、私は教会の中へと入っていく。


「ようこそいらっしゃいました」


 白い祭服のようなものを着た男性が出迎えてくれた。


「本日はどのようなご用件でしょうか」

「えーと、お祈りをしに来ました」

「はい。この道をまっすぐ行けば女神様の像がございます」

「そうですか。ご丁寧にありがとうございます。あ、これどうぞ」


 私は男性に寄付金として金貨10枚を巾着袋に入れて渡した。日本円で100万円だ。

 相場がわからないから、どのくらい寄付するのかわからない。そのため、とりあえず多めには入れておいた。


「え……」


 寄付金を受け取った男性の目が見開いていた。

 あれ? やっぱりあげすぎた?


「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ気にしないで下さい」


 私は男性宥めた後、女神イスフィリアの像に向かって歩き出し、像の目の前でしゃがみ込んで目を瞑りお祈りを捧げた。


「女神イスフィリア様、久しぶりに会いに来ました」


 すると、私の意識が神秘的な空間に移っていた。


『ヒナタさんよく来たね! 思ったより早かったよ!』


 おー、本当に来られた。

 ここは神界なのかな。不思議な空間だ。


「久しぶりだね。女神様」

『そう? そんなに経ってないと思うけど……?』

「私にとってはもう3ヶ月もこの世界にいるからね」

『そんなに経っているんだ! 人間だと3ヶ月でも長いからね』


 さすが神様だ。

 時間の感覚がバグっている。


「今日はね。お礼を言いに来たんだ」

『お礼?』

「そう。私をこの世界に転生させてくれてありがとうってね。最初は女になったから複雑な気持ちもあったけど、最近は慣れてきたし、それに前世では考えられないくらいにたくさんの人に信頼されるようになったんだ。こんな気持ちになったのは初めてだったし、すごく嬉しくてさ。だから女神様には感謝を伝えたくてね」

『うぅ……。そんなこと気にしなくてもいいよ……。これも神様の仕事なんだからさ……。でも、何百年もこの世界の神様をやっているけど、こうやって感謝の言葉を伝えられたのは初めてだよぉ……』


 女神イスフィリアが泣き始めた。

 この人は少し天然だけど、すごくいい人だからこれからも仲良くしていきたい。

 神様と仲良くっていうのもかなり失礼な気もするけど。


「じゃ、私はそろそろ戻ろうかな」

『あ、待って。一応ヒナタさんにも伝えておきたいことがあるの」

「ん? 何?」

『実は、ヒナタさんを転生させた後に不思議なことが起きたの』

「ん? どういうこと?」

『普通この世界の人が死んだらその魂は神界に来て、私が別の生命に転生をさせているの。それなのにヒナタさんを転生させた時にこの世界で死んだはずの男性の魂が神界に来る前に消滅したんだよね』

「それって、私が転生した時に近くにいた男性のこと?」

『その人じゃなくて別の国にいた人の魂よ』

「でも、女神様なんだからその原因を簡単に調べられるんじゃないの?」

『それがね、その魂が消滅した後に残るはずの男性の肉体はどこかに移動してるんだよね。しかも、その男性は私も感知できないようになっているの』

「そんなことってあり得るの?」

『通常じゃあり得ないよ。だから私も調べている途中なの』

「そうなんだ。私に何かすることってあるの?」

『今のところは特にないかな。ただ嫌な予感はしたから、ヒナタさんにも伝えたくてね」

「そっか、何か分かったらまた教えて」

『うん! 何かあったら手助けしてね!』

「まあ、私に出来ることであればね」


 よく分からないけど、私の転生時に別の国で死んだ男性の魂が神界に辿り着く前に消滅したと。

 さらに、死んだ男性の肉体がその場からなくなって、女神イスフィリアも感知できないと。

 でも、そんなこと言われたって私にはどうすることもできないよね。

 女神様に頑張ってもらうしかない。もし、何かあれば手助けするのもやぶさかではないけど、何も起こらないことを願うばかりだ。


「じゃあ、今度こそ戻るね」

『うん! また会いに来てね!』


 そういうと、私の意識は女神イスフィリアの像の前にしゃがみ込んだ姿でお祈りをしていた。

 どうやら、戻ってきたみたいだ。

 お祈りも終わり、帰ろうと後ろを振り返ると、さっきの男性とすごい華やかな祭服を着た男性が並んで佇んでいた。


「本日はお越しくださりありがとうございます。私はこの教会の司教をしておりますマリッドと言います。多大なる寄付金をいただきまして、感謝申し上げます」


 思ったよりも私はやらかしてしまったみたいだ。

 司祭だけじゃなく司教まで挨拶に来るとは……。

 司教ってこの教会で一番偉い人だよね。偉い人と話すのは苦手なんだよな。


「い、いえ。女神様にお祈りさせていただくのでそれくらいは……」

「せっかくですから、奥でお茶でもどうですか?」


 なんか嫌な予感もするけど、断るのも失礼だし行くしかないよね。


「では、お言葉に甘えて」


 そうすると司教に連れられて、奥の部屋に通された。

 椅子に座ると、お茶が出てきて司教が話し始める。


「最近ですと教会に足を運んで女神様にお祈りをする方が減ってきまして……。信仰心が減衰しつつあります。数年前までは毎日たくさんの方が来て、祈りを捧げていたのですが、誠に遺憾で仕方ありません」


 なるほどね。

 確かに私以外この教会には一般の人はいない。

 そのことを踏まえて、私が寄付金を大量に送ったから大切な信者にでも思われたのかな。


「そうなんですね。信仰心が薄くなったのは何か原因があるのですか?」

「純粋に女神様の存在に疑いを持っている人が多いのですよ。でも、確かに女神イスフィリア様は存在しているんです。昔のように信仰心が多い時は数年に一度、神託も授けてくれていましたから」


 おい、イスフィリア。何してんだよ。

 あんたの存在自体が疑われ始めているぞ。

 民のために神託とやらを授けてあげなさいよ。


「それにしても、ここまで急に信仰心が無くなったのはちょっと不思議ですね」

「それについては理由があります。女神様からの神託を受けられるのは教会でも高位の神官だけなのですよ。この教会ですと、司教である私が該当します。5年くらい前にこの教会の司教が神託を偽装して、犯罪行為を横行していたのです。そして王都の住民はそのせいで、女神様を信用できなくなったみたいです」


 ごめん、イスフィリア。 

 あなたのせいじゃないみたいだ。

 同情するよ。


「それは、ひどい話ですね。その司教様どうなったんですか」

「首を切られました」


 うん。まぁそうだよね。

 懲戒とか除名って意味じゃないよね。物理的にってことだよね。


「ヒナタさん、ここには一般公開用の書物が置いてありますので、時間がありましたら読んでいってください。何かためになるかもしれませんから。それでは私はこれで失礼します」


 そう言って、司教は部屋から出て行った。


 書物か。教会にはどんなものが置いてあるのか気になる。せっかくの機会だし見に行ってみよう。

 私は書物がある部屋に移動した。

 中にはびっしりと書物が並んでおり、もしかしたら数千冊はあるのではないかと感じた。

 私はその中から適当に選んだ一冊を手に取り内容を確認した。

 その本には女神の歴史について記されていた。


 内容を簡潔にすると、この世界の女神は500年程前に女神イスフィリアに変わったみたいだ。

 初代は女神レアというものがいたらしい。

 女神レアがいた時代はまだこの世界の人口が少なく、大地も荒れ果てていたため、女神の力で長い時間をかけて、自然豊かな世界を作り上げたそうだ。


 それからこの世界も発展してきたところで、女神レアから別の新たな女神がこの世界の管理を受け継いだらしい。

 しかし、その女神の名前は明らかにされていない。

 そしてその後に、女神イスフィリアがこの世界を受け継いだような記載がされている。

 ということは、この世界では最低でも女神が2回は変わっていることになる。

 女神にはこんな歴史があるんだね。見てみるとかなり面白い。

 前世で歴史の授業を聞いても、あまり興味が唆られなかったけど、大人になると歴史って興味を持つよね。

 というより、そもそも女神が複数いることにも驚きだ。

 神様って1人のイメージが強かったけど、そんなこともないみたいだ。

 なら女神にはどうやってなるんだろうか。不思議だ。


 私は女神について記載されている本を閉じ、別の本を探した。

 すると、1冊だけ黒色の本があった。

 気になって題名を見てみると。


「蘇生の宝珠……」


 題名にはそう書かれていた。

 中身を確認すると、どうもベルフェスト王国にあるアスクレピオス迷宮という場所の最下層に蘇生の宝珠があるみたいだ。

 これは死亡した者を蘇生させることができると書かれている。

 しかし制限があり死亡してから30分以内で、そして蘇生の宝珠を手にしてから5分以内に使用しないと意味がないらしい。

 本当かどうかはわからない。迷信かもしれないしね。そもそも死者を蘇生させるというのが現実味がない。

 それにもし手に入れたとしても、死亡後30分以内という制限があるため、実際に使用することは難しいだろう。

 意味のないものがあるもんだね。

 私はその後も書物を確認したが、女神イスフィリアについて書かれているものがほとんどだった。


 書物を読むのに集中していると、いつの間にか日も傾き始めていたので私は教会から出て宿へと戻った。

 宿に行くとカレンとシャルが食堂でご飯を食べていた。どうやら偶然同じ宿を取ったらしい。


「カレンたちも同じ宿なんだね」

「おぉ! ヒナタじゃないか、偶然だな!」

「偶然ですね」


 その後はカレンたちと一緒に夕飯を食べながら、久しぶりにビールを飲んだ。

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