25 パーティーでの初仕事
みなさんおはようございます。ヒナタです。
本日はゴブリンの巣を討伐するため、アミット村に来ました。
「ゴブリン討伐の依頼を受けた冒険者です」
カレンが村の入り口にいる男性に声をかけた。
こういう時って年上のお姉さんがいると便利だよね。
私だと子供に思われるから、どうしても信用されないこともありそうだし。
「やっときてくれたか。助かる。すぐに村長のところに案内しよう」
男性に連れられて、村長の家に行く。
家の中に入るとおじいさんが出迎えてくれた。
「遠いところをわざわざありがとうございます。私はアミット村の村長をしておりますクルトと言います」
「Bランク冒険者のカレンだ」
「シャーロットです」
「ヒナタです」
自己紹介をして、村長からゴブリンについて詳細な情報を聞く。
「ゴブリンは決まって、夜中の12時くらいに村の外れにある畑の作物を盗んでいきます。最初は追い払おうと村のもの総出で戦ったんですが、負傷者が多くなってしまって、それからは黙って盗まれるのを見ているだけになってしまいました。近くに洞窟がありゴブリンたちの巣があるんですが、全部で何匹いるかは正確には把握できていません」
ゴブリンの行動を聞いてみると、どうも統率がとれているような気がする。上位種でもいるのかな。
「その話を聞くと、ゴブリンをまとめている上位種がいそうだ。例えばゴブリンキングとか」
カレンは私が思ったことと同じ意見を言ってきた。
なので、私も賛同する。
「私も同意見かな……」
「とりあえず巣に行ってみよう。ゴブリンキングがいるとなると、100匹近いゴブリンがいる可能性がある。それに数が多ければ、単体では弱いゴブリンでも脅威だからな」
私たちは村長に案内されて巣がある洞窟の近くまで来た。
入り口は狭いけど、中は結構広い構造になっているそうだ。
昔は魔物が村に襲ってきた時用の避難所として使っていたらしい。
「どうやって確認する?」
「私が見に行こうか」
「ヒナタにだけ任せるのは悪いよ」
私には隠密スキルがあるから、偵察にはかなり向いている。
洞窟の様子を確認するだけだから危険も少ない。
「大丈夫だよ。1人の方が都合がいいから」
そう言って、隠密と気配遮断のスキルで洞窟に入っていく。
後ろではカレンたちが何か言っていたが気にしない。
多分隠密は最初から私が見えた状態で発動させても、見えていた人たちには効果がないんだろう。
そのため、カレンたちにとっては堂々と洞窟に入る私が見えているわけだ。
頭がおかしくなったと思われそうだね。
洞窟の中に入ると、入り口付近に4匹見つけた。
見張り番かな、やはり統率がとれている。
さらに進んでいくと、奥には40匹近いゴブリンがいる。
それにしてもすごい匂いだ。至る所に動物の死骸や盗んだ作物が置かれている。
ゴブリンを避けながらさらに奥に進んでいく。
すると、大きな岩の上に偉そうに座っている大きなゴブリンがいた。
やはりゴブリンキングだ。
周りにもさらにゴブリンが30匹程度いる。
全部で70匹のゴブリンに親玉がゴブリンキングの巣となっているみたいだ。
あまり近づくとゴブリンキングに気づかれる可能性もあるのでこの辺で洞窟から出ていく。
そしてカレンたちがいる場所へ行って、隠密を解除する。
「「きゃっ!」」
2人して叫んだ。
なるほど。一度姿が見えなくなったら、隠密状態になるのか。いい実験でした。
「中を見てきたけど、予想通りゴブリンキングがいたよ。それにゴブリンが70匹くらいかな」
「そ、そうか……。聞きたいこともあるが、とりあえず作戦会議をしよう」
作戦としては、カレンが前衛でゴブリンの討伐をして、撃ち漏らしたゴブリンを後衛の私とシャルで討伐するというごく普通の戦法だ。
とりあえず、共闘したこともない私がとやかく言うこともできないので賛成する。
「じゃあ、いくぞ」
3人で洞窟に入る。
最初は4匹のゴブリンが見張りをしているため、カレンが剣で討伐する。
さらに奥に進み40匹のゴブリンを前にカレンが向かっていくが、ゴブリンもカレンではなく、後衛の私たちにも向かってきた。
私は岩石弾で、シャルは弓矢で応戦している。
しかし、シャルの弓矢は威力はあるが、連射が難しいのか複数を同時に相手にすると少し厳しいみたいだ。
私が前に出てシャルには下がってもらい、私が撃ち漏らしたゴブリンだけの討伐をお願いする。
この陣形で、討伐を開始して20分程度で制圧した。
「やっと終わったね……」
「すいません、ヒナタさん。ご迷惑をおかけしました」
「気にしないで。助け合うのがパーティでしょ。それよりもこの騒ぎを聞きつけて奥からゴブリンが押し寄せてきているから」
気配察知で残り30匹のゴブリンがこちらに向かってきているのを察知した。
すぐに3人は陣形を組み、ゴブリンにカレンが向かっていく。
私も岩石弾で応戦して、シャルも後方から攻撃を仕掛ける。
すると、急にカレンに向かって、火球が飛んできてカレンに直撃した。
「がはっ……」
「「カレン!?」」
どこから飛んできた?
戦闘に夢中でカレンの方を見ていなかった。するとカレンが叫んだ。
「奥にゴブリンメイジがいる!」
ゴブリンメイジは魔法を使うゴブリンだ。
そんな個体がいたのか、私の調査ミスだ。
ここは私が責任を取らないと。
「カレン! 下がって!」
カレンに向かって後方に逃げるように叫んだ。
火球が直撃した右肩を押さえながら下がってきたカレンを確認して、私はゴブリンの動きを封じるべく魔法を放った。
「フリーズ!」
足元に水魔法で氷結を使い、足元を凍らせてゴブリンの動きを封じる。
「シャル! ゴブリンの動きは封じたから一緒に攻撃して!」
足が凍って動けないゴブリンに私とシャルで攻撃をして制圧をする。
「カレン! 大丈夫!?」
カレンを心配して私とシャルが駆け寄る。
そしてシャルがアイテム袋から小さな瓶を出してカレンに飲ませる。
するとカレンの火傷が治っていく。
「え、なにそれ……」
「何って回復薬だよ。知らないのか?」
「……知らない」
そうか、異世界なんだからそういうのもあるよね。完全に失念していた。
「まじかよ……。ギルドにも売っているぜ。回復薬と魔力回復薬が」
うわー。今までの私って結構やっちゃってるな。
魔力回復薬があるなら結構無理して魔法も使えたじゃん……。
依頼を受けるなら、その際にたくさん買っておこう。
「と、とりあえず! あとはゴブリンキングです!」
私たちは奥に進み、ゴブリンキングのいる場所へと向かう。
大剣を持ったゴブリンキングを見つけると、かなり怒った表情でこちらを見ている。
「ゴォォォオオオ!!!」
こちらにゴブリンキングが向かってくる。
カレンがすぐに剣で応戦するが、力負けしてこちらに吹っ飛ばされる。
「くそっ、強い……」
私も魔力を込めて岩石弾を放つが、ゴブリンキングの剣で弾かれる。
シャルが弓矢を放つが同様に弾かれた。
そしてゴブリンキングが大剣を振りかぶり私たちに振り下ろしてきた。
すぐに転がりながらも退避して体勢を整える。
「カレン! もう一度剣で攻撃して!」
私の言葉でカレンがゴブリンキングに攻撃をして同様に弾かれる。
その瞬間に私は魔法を放つ。
「ロックショット!」
先ほどと同じように岩石弾をゴブリンキングの胸のあたりに放つと血が吹き出した。
しかし貫通はしなかった。
ワイバーンとかはこれで貫けたのに結構硬いみたいだ。
とりあえず攻撃が効くことはわかったので、今のと同じように攻撃を仕掛けよう。
……と思っていると、ゴブリンキングは私に向かって剣を振り下ろしてきた。
「やばい!」
そう思ったら、カレンが横からゴブリンキングの振り下ろした大剣を受け止めてくれた。
「がっ……」
凄まじい衝撃を受けたカレンは、足から骨が折れる音がした。
心配になったが、今はゴブリンキングを倒さなくてはいけない。
そう思って今度はさっきよりも魔力を込めて、岩石弾をゴブリンキングの頭に目掛けて放った。
「ロックショット!」
頭に岩石弾が直撃して、ゴブリンキングはその場で倒れた。
「「カレン!」」
カレンは足を押さえていたが、シャルが再度回復薬を飲ませる。
「骨折も回復薬で治るの?」
「多少の怪我なら治るけど、骨折となると軽減はするが、しばらく時間はかかる」
回復薬もそう万能ではないということか。
私の油断で、カレンには迷惑をかけてしまった。
「ごめんね、カレン。私のせいで怪我を負わせて」
「そんなこと気にすんなよ。あたしは前衛なんだから怪我なんかしょっちゅうだよ!ゴブリンキング相手にこれだけの怪我で済んだのはマシな方だよ」
笑いながらカレンが答えてくれた。
私は今回の戦闘を反省して、できるだけカレンの補佐もできるようになろう。
目の前で大切な人を失うのは見たくない。
私は倒したゴブリンキングに強奪スキルを使い、ステータスを確認する。
名前:ヒナタ
種族:人族
年齢:15歳
職業:魔法使い
HP :153/176(+8)
MP :218/322(+7)
スキル:水魔法LV7(+1)
風魔法LV7
火魔法LV5
土魔法LV7
無限収納
威圧LV4
毒霧LV1
毒耐性LV3
麻痺耐性LV2
気配察知LV5
気配遮断LV4(+2)
隠密LV5(+1)
発情LV2
遠視LV4
気配探知LV3
ユニークスキル:強奪
久しぶりにステータスを見たから、気配遮断もレベルが2つ上がっている。
それに水魔法もよく使っていたからかレベル7になっている。
これで上級魔法も使えそうだ。
そしてゴブリンキングから強奪したのは気配探知か。
気配察知と何が違うんだろう。試してみるか。
「おおっ!」
頭の中に半径300mくらいのマップが広がった。
マップには青い点が3つあるだけだ。
なるほど、これで敵の位置が正確にわかるのか。
気配察知は気配を感じる程度だったが、気配探知は場所まで特定できるようだ。
かなり便利スキルだな。
私はゴブリンキングを無限収納にしまい、倒したゴブリンの魔石をシャルと2人で回収してから、足を怪我したカレンに肩を貸して3人で洞窟を出て村長にところへと向かう。
「洞窟にはゴブリンキングとゴブリンの群れ70匹程度がいましたが、全て討伐しましたので安心してください」
私が、村長のクルトに報告した。
「そ、そこまで大きな群れだったんですね。依頼書にはゴブリンキングの討伐は含まれていなかったので追加で報酬を支払います」
「お願いします。それと今回はBランクの私たちが来ましたからなんとかなりましたが、今後依頼を出すときは調査費を含めた報酬を支払わないと、駆け出しの冒険者がゴブリンだけだと思って討伐に来てしまい、ゴブリンキングに殺されるという可能性も出てきます」
「おっしゃる通りです。これからはそのようにしたいと思います」
よし、とりあえず言いたいことは言ったな。あとは帰るだけだ。
「あの、よろしければお礼もしたいので今晩は泊まっていってください」
私はカレンとシャルの顔を見る。2人は小さく頷いた。
「では、お言葉に甘えさせてもらいます」
その後は村人の人からゴブリン討伐の感謝の印として宴を開いてもらい、たくさんのご馳走を頂いた。
そして宴後は村長の家に泊まって眠りについた。




