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24 再会


 みなさんこんにちは。ヒナタです。


 本日は冒険者ギルドにきています。

 たまには依頼を受けて身体を動かさないと太りそうだしね。


 依頼ボードを見るとウルレインよりたくさんある。さすが王都だ。

 気になるのは村の近くに発生したゴブリンの巣を討伐、森のオーガ討伐、街道に出た盗賊退治かな。

 楽そうなのはオーガだけど、オーガとは戦ったことがないから少し不安が残る。

 悩みますね。


「おい、嬢ちゃん1人で依頼を受けるのか? よかったら俺とパーティー組まねえか」


 おっと久しぶりに絡まれたよ。

 最近こういうのなかったから忘れてた。


「そういう誘いはお断りするよ」

「あ? 俺はCランク冒険者だぞ。高ランクの冒険者からの誘いを断るとは何様だ?」


 私よりランクは下なのかよ。話にならないな。

 でも争いを起こして目立つことも避けたいしな。


「ちょっとあんた何してんのよ」


 後ろから女性が声をかけてきた。

 赤髪で長身で巨乳の綺麗な人だ……ってカレンじゃん。

 後ろにはシャーロットもいるし。


「んだと……ってカレンかよ。俺は新人に冒険者の恐ろしさを教えてやろうとだな」


 この男はカレンたちを知っているのか。

 でもまあ、女性でBランク冒険者だと嫌でも目立つか。


「あれ? ヒナタじゃない! 久しぶり!」

「久しぶりです。カレンさんにシャーロットさん」

「なんだ? お前らこの嬢ちゃんを知ってんのかよ」

「知ってるのも何もあたしたちと同じBランク冒険者よ」


 おっと、そういうこと言うと目立つじゃん。

 ほら、周りが騒ぎ出してるよ……。


「はあ? でもこの嬢ちゃん見たこともねぇぜ」

「そりゃあ、普段はウルレインで活動しているからね。王都に来たのなんて初めてなんじゃない?」


 カレンが絡んできたおじさんと会話を続ける。

 ただ依頼を受けに来ただけなのに、なぜ毎回目立ってしまうのか。

 本当に勘弁してほしい。


「カレンさんもう大丈夫です。これ以上目立つのも嫌なので……」

「なんだよ。ヒナタは相変わらずだな。ほら、マリスも分かったら自分より格下の冒険者を相手にしな」


 マリスはばつの悪そうな顔で去っていく。

 おじさんはマリスというらしい。

 これからも絡んでこないことを祈るばかりです。


「ヒナタはなんで王都に来ているんだ?」

「ブルガルド家のお嬢様の護衛依頼で来ました。数日前から王都には来ていたんですが、冒険者ギルドには初日の完了報告から来ていなかったので絡まれてしまいました」


 初めて来た時はかなり気配を消していたからね。

 冒険者ギルドに迷い込んだ小娘を演出していたおかげで、誰にも絡まれずに済んだけど依頼ボードにいると絡まれやすいみたいだ。

 そういえばウルレインでも依頼ボードを見ている時に酔っ払ったおっさんに絡まれたしね。


「そうなんだね。あたしたちも護衛依頼で王都に来たんだ。あ、そうだ! よかったら一緒に依頼を受けない?」


 確かにカレンたちと依頼を受けるのもありかもしれない。

 一度とはいえ、ワイバーン討伐で一緒にいたわけだしね。

 そして何より、カレンたちは私の秘密を知っているし、一緒にいれば絡まれることも少なくなる可能性がある。


「いいですね。せっかく会えたのですから、一緒に依頼を受けましょうか」

「やったぜ!」

「ヒナタさん、ありがとうございます」


 それから3人で依頼ボードを見ながら、どの依頼を受けるか検討した。

 散々悩んだ挙句、ゴブリンの巣の討伐依頼を受けることした。

 依頼はアミット村という場所で村民は30人程度。

 この王都から馬車で2日ほどの場所にあり、なんでも村の作物を夜中の決まった時間に盗んでいくみたいだ。


「よし、ならこの依頼を受けよう! 今から出発すると中途半端になりそうだから、出発は明日にしようか」

「分かりました、馬車はどうしますか?」

「それはあたしたちで準備するよ。御者はシャーロットができるから安心しろ」


 よかった。交代で御者をさせられたら困ったもんだ。

 でも、この機会に教えてもらうのもいいかもね。


「分かりました。それでは明日の朝に南門に集合しましょうか」

「了解」

「はい、よろしくお願いします」




 こうしてカレンたちと別れたが、少し準備をしよう。

 私は宿に帰ってご飯の準備をする。

 作り置きもあるけど、3人分となると2日しかもたないからね。

 せっかくジャガイモを手に入れたんだから、コロッケでも作ろうかな。

 よし。まずジャガイモを潰してバターを混ぜる。

 オーク肉と牛肉の合挽き肉をフライパンで炒めてみじん切りにした玉ねぎと砂糖を入れて炒める。

 炒め終わったら、潰したジャガイモに入れて混ぜたあと丸めたら、薄力粉、卵、パン粉の順に衣をつけて揚げれば完成。簡単なコロッケの完成だよ。

 うん、張り切りすぎて50個くらい作っちゃったけど多分すぐなくなるよね。

 次は、ハンバーグを作ろう。

 とは言っても合挽き肉があるからコロッケより作るのは簡単だ。

 合挽き肉を作るためにひたすら包丁で叩き込んだ方が大変だったよ。

 よし、これでコロッケ、ハンバーグもできた。

 準備は万端だね、明日に備えて早く寝よう。




 翌朝目覚めた私は着替えてから宿の一階に降りて朝食を食べ終わった後に南門へと向かった。

 南門に着いたが、カレンたちはまだ来ていなかった。

 前回は私が遅れちゃったから、今回は先に着けるように早く出てきたのだ。

 10分経ったところでカレンたちがやってきた。


「ごめん! 待ったか?」

「ううん、今来たとこ」


 付き合いたてのカップルかよ。

 前世で言ったことはないけど。

 それから私たちはアミット村に向けて出発した。


「ねぇヒナタ。あたしたちのこと呼び捨てでいいよ。敬語で話さなくてもいいし」

「そう? ならそうしようかな。ならシャーロットのこともシャルって呼んでもいいの?」

「大丈夫ですよ! その方が嬉しいです!」


 シャルって呼ぶのは少し嬉しかった。

 なんか愛称で呼ぶのって友達みたいじゃん。

 仲間になったみたいで嬉しいな。


「それよりさヒナタ。前回みたいにご飯とかって作ってくれるのか?」


 やはりそれが目当てか。

 私といればおいしいご飯を食べられるからね。


「もちろん。そのために昨日作っておいたから大丈夫だよ。でもさすがに材料にも結構お金がかかっているから、無料というわけにはいかないけど……」

「そりゃそうだ! それで構わないよ!」


 よかった。材料費くらいは徴収しないと私が赤字になってしまう。

 この世界だと前世では考えられないくらい砂糖が高いんだよね。

 この前ミレイの誕生日に作ったアイスクリームを乗せたパンケーキなんて、材料費だけでも銀貨20枚くらいかかっているからね。

 日本円で2万円だよ。高級スイーツになってしまった。


 私は道中シャルに御者のやり方を教えてもらいながら、2人の馴れ初めを聞いていた。

 なんでも、2人は同じ村出身なんだとか。

 とは言っても、サンドラス王国ではなく隣国のベルフェスト王国らしい。

 そこの、スリープシ村で幼馴染だったそうだ。

 カレンの方が一つだけ年上で、シャルが成人したタイミングで2人で冒険者になるために村を出たとのこと。

 そこからベルフェスト王国で冒険者としてDランクまで上がったところで、見目がいいからという理由から貴族に言い寄られて、それを断ったら、冒険者ギルドに圧力をかけられたみたいで仕事が受けられなくなり、サンドラス王国にやってきたみたいだ。

 サンドラス王国に来たのは1年前からだそうだ。

 もう冒険者になって4年になり、年齢はカレンが20歳、シャーロットが19歳だそうです。


 それにしてもなんとも悲しい話だ。

 その貴族には痛い目に遭ってもらいたいな。

 こういう話を聞くと最初に出会った貴族がブルガルド家で本当に良かった。

 ブルガルド家以外の貴族は今のところいい話は聞かないからね。

 というより、悪い話の方が噂になりやすいからそういうものか。

 あまり変な貴族とは関わり合いになりませんように……。


 順調に進んできて、そろそろ暗くなってきたため野営をすることになった。

 とは言ってもマイホームの出番ですが。

 私たちは馬車を街道から外れた場所に移動させ、人目のつかない場所でマイホームを出した。

 中に入りリビングで私の料理を今か今かと待ち侘びている2人にコロッケを出してあげた。

 いくら女の子しかいないからってそんなにがっつかなくてもコロッケは逃げないよ。

 夕食を食べ終えた後は3人でお風呂に入る。

 最近気がついたんだけど、私の胸が少し大きくなってきた気がする。

 栄養のある食事を摂っているからかDカップくらいありそうだ。

 ブラも少しだけキツくなってきたから、この前買ったばかりだけど買い替えた方がいいかな。

 まだ成長するかもしれないし。

 そして2人の裸を堪能した後は、布団に入りお話をしながらゆっくり眠った。




 翌朝目覚めて、少し寝巻きが乱れていたカレンに興奮しつつも、前科があるためなんとか理性を押さえ込んで朝食の準備に取り掛かった。

 今日は前回気に入ってもらえたタマゴサンドだ。

 笑顔で食べる2人を微笑ましく見ているとカレンが話し始めた。


「今の調子で行くと今日中には村に着くと思うけど、多分夜になりそうだから一度野営してから朝に村に行こう」


 そう言って私たちは出発する準備をして、馬車に乗り込んだ。


「いやー、それにしてもヒナタといると普段は嫌になる野営も快適だな。ちょっとした旅行気分にすらなる」

「そうだよね。ヒナタさんは1パーティに1人ほしいくらいの人材だよ」


 カレンとシャルが私に向かって言ってきた。

 私を家電製品みたいに言わないで。

 でも、普通の人間ではないよね。

 私は前世の記憶持ちで、そもそも女神イスフィリアから直接この世界に転生してきた元男なんだから。


「ヒナタはさ、ソロで活動してるのって自分の力を公にしたくないからだろ? だったらあたし達にはそういう心配もないんじゃないのか」


 これはたぶん、パーティーの勧誘だ。

 でも嬉しい誘いなのも確かではある。

 厄介ごとに巻き込まれるのもソロよりはパーティーでいる方が確率は下がる。

 それに私の魔法が規格外であることも2人は知っている。

 そして何より2人もBランク冒険者であり、強くて優しくて何より素敵な女性だ。

 断る理由がない。


「だからさ、ヒナタさえよければ、あたし達とパーティーでも組まないか? 抜けたくなったらいつでも言ってくれればいいからさ……」

「……私が一緒でも迷惑にならない?」


 この2人は冒険者になってから4年間ずっと2人で頑張ってきた。

 そこに私みたいな元男が入っても大丈夫なものだろうか。

 元男なのは死んでも言わないけど。


「迷惑なわけないじゃん。ウルレインでヒナタと別れた後、あたしとシャルで話し合ったことがあるんだ。ヒナタを仲間にしたいって。でもウルレインで会うこともなくなって、諦めていたら王都で会うんだもん。これは運命じゃないかって思っちゃってさ」

「わ、私もヒナタさんとパーティーを組みたいです。嫌ですか……?」


 そんなふうに思ってくれていたのか。

 それにシャルに上目遣いで言われちゃったら断れないよ。

 女の子の上目遣いは反則だ。


「嬉しいよ。私で良かったら仲間に入れて」


 私の言葉に2人が笑顔になった。


「よろしくな! ヒナタ!」

「よろしくお願いします! ヒナタさん!」


 私は幸せ者だな。

 前世でこんなに人から頼られたことなんてないのに、この世界に転生してからたくさんの人に頼られている。

 転生させてくれた女神イスフィリアには感謝しないとな。




 私のパーティ加入が決まり、その後も順調に進んでアミット村の近くまで辿り着いた。

 予定通り村から離れた場所にマイホームを出して、夕食を食べる。今日はハンバーグだ。


「ヒナタの作るご飯は全部おいしいな!」


 ハンバーグも気に入ってくれたようだ。

 ハンバーグは大人から子供まで大好きな料理だからね。

 今回のソースはトマトケチャップだけど、いつかデミグラスソースも作りたい。

 それに目玉焼きハンバーグとかチーズハンバーグもおいしいから今度作ってみよう。

 でもチーズを作るのは難しいからどこかに売ってないかな。


 夕食を食べ終えて、いつも通り3人でお風呂に入り、明日に備えて早めにベットで眠るのであった。


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