表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/108

23 お誕生日会


 みなさんこんにちは。ヒナタです。


 今日は、サーシャの姉ミレイのお誕生日会です。

 ただ行って、お祝いだけをしてもいいんだけど、プレゼントを持って行ったほうがいいよね。

 でも、私と同い年の子ってどういうのが好きなんだろう。

 なんか言葉がおかしいな、精神が34歳のおっさんだからこういうことになるんだよ。

 さすがに16歳の女の子にプレゼントをあげる機会はなかったからな。


 とりあえず、私はプレゼントになりそうなものがあるかゲイル商会に向かった。


「ん〜、女の子といえばブランドもののバッグとか服とかが好きだよね」


 つい、前世の偏見で考えてしまったが、この世界にブランド物なんてあるのか。

 そもそも貴族なんだから、私からプレゼントしなくても買えるか。

 だったら、香水とか髪留めとかか……。

 結局ファッションに関係するものになってしまう。

 前世だったら、付き合っていた彼女にイヤリングとかネックレスとかあげていた。

 私が選ぶと、どうしても身につけるものになってしまう。

 あ、でも母の日にカーネーションとかフラワーボックスとかあげたりしていたから、部屋に置けるものでもいいかもしれない。よし行ってみよう。


 ゲイル商会の雑貨品コーナーに来た。

 さすがゲイル商会だ、品揃えがすごい。

 知らなかったけど、ゲイル商会はこの王都でも3指に入るほどの大手商会だったらしい。

 ゲイルは冴えない感じに見えたけど結構やり手なんだね。

 雑貨品コーナーでは、綺麗なガラス細工とか陶芸品とかが置いてある。

 丁寧に職人が作っているだけあって、素晴らしい出来栄えだ。でも高い。

 あまり高価なものを買っても重い女って思われたくない。


 悩んでいても答えが出ないので、軽食でも食べてゆっくりしよう。

 私はおしゃれなスイーツ店を選び、甘いものでも食べて頭を働かせようと考えた。

 頼んだのは、クッキーだ。この世界には甘味が少なく、一番人気のクッキーがよく作られている。

 ブルガルド家でも、おやつにはクッキーをよく見ていた。逆に言えばそれ以外はあまり作られていない。

 ということは、前世の知識で作れるものがあるんじゃないのか。例えば、プリン、アイスクリーム、パンケーキが似たような材料で作れる。アイスクリームを作るのに生クリームが必要だが、この世界にはなければ作り方すら知らない。でも確か、生クリームがなくても作れるはずだ。

 ……そうか、プレゼントはみんなが今まで食べたことのない甘味を作れば喜んでくれるんじゃないのか。

 本当は、ケーキを作ってあげたいがそれは時間がある時に挑戦しよう。

 私は急いでお店を出て、砂糖、卵、牛乳、薄力粉、重曹を仕入れて、宿へと帰る。

 いや、待て、アイスクリームを作るには冷やさないといけない。それも凍らせる必要がある。

 冷凍庫などの便利なものは、高級レストランとかにあるが、あまり一般の家庭には置いていないものだ。

 しかし、この世界には魔法がある。私が氷を作ればいいのだ。

 そうと決まれば氷を作れるように練習しなければ。

 まさか、プレゼントのために最初にやることが氷魔法を覚えることだとは、誰が想像できただろうか。

 とりあえずやってみよう。



 ……難しい。今までで一番難しいかもしれない。

 どうやって水から氷へと変化させるんだ。

 凍らせるっていう方法がイメージできないんだよな。

 こりゃ参った。




 時間をかけてやってみたら、なんとびっくり氷ができました。本当に急に氷ができたんですよ。

 今までは水を冷やして氷を作るっていうイメージでやっていたからうまくできなかったみたいだけど、そもそも氷を出すイメージだけでよかったみたいだ。

 前世の知識で氷を作るまでの過程を意識していたけど、過程ではなく何を作り出すか、だけでも大丈夫みたいだ。

 さて、氷が作れることが分かったから、アイスクリームを乗せたパンケーキでも作ろう。


 それでは始めていきましょう! ヒナタズクッキングのお時間です!

 まずは、卵白と卵黄を分けて、卵白を角が立つくらいまで泡立ててメレンゲを作ります。メレンゲに卵黄を加えてよくかき混ぜます。土魔法で作った容器に流し込んで、自家製冷凍庫の中に入れて1時間程度冷やします。

 この間にパンケーキを作っていきます。

 まず、卵白と卵黄に分けて、卵黄には牛乳、薄力粉、砂糖、重曹を加えてよく混ぜて生地を作ります。

 よく冷やした卵白に砂糖を加えてメレンゲを作り、先程の生地を合わせます。

 よくかき混ぜたら、魔道具でできたIHの登場です。

 熱したフライパンに生地を薄く焼きます。底に焼き色がついたらひっくり返します。いい感じにきつね色になったらパンケーキの完成です。

 さて、そろそろ1時間経過したので、冷凍庫から容器を取り出し、中身をかき混ぜながら牛乳を入れていきます。

 あとは冷凍庫に入れて3時間程冷やせば完成です。




 さて、こちらに3時間が経過したアイスクリームがあります。とっても甘くてなかなかの出来栄えだ。

 パンケーキをお皿の上に乗せて、アイスクリームも乗せます。完成しました。

 念の為、4つくらい作っておく。これでミレイへのプレゼントができた。

 さぁ、ブルガルド家の屋敷に行こう。


「ヒナタお姉ちゃん!」


 屋敷に着くと、サーシャが出迎えてくれた。

 今日は純白のドレスを着ているみたい。

 私の花嫁かと勘違いしたよ。


「ヒナタちゃん、来てくれて嬉しいです」

「こちらこそ、お招きいただきありがとう」


 ミレイはピンクの可愛らしいドレスだった。

 黒髪にピンクのドレスってすごく可愛いな。見惚れてしまうよ。

 ちなみに私は、この前買った水色のワンピースを着ているよ。ドレスは少し抵抗があったしね。

 そして案内された場所には、たくさんの食事がテーブルに用意されていた。

 すでにユリアが座っており、主役のミレイは上座に座る。

 私も空いている席に座り、ミレイが起立して話し始める。


「今日で私は16歳になりました。まだまだ至らないところはございますが、貴族として立派な淑女になれるようこれからも精進していきたいと思います」


 挨拶も終わり、全員がお話ししながら食事を楽しんでいると。


「ミレイ、これはお父さんとお母さんからのプレゼントよ、大事にしてね」


 ユリアは、魔法書を手にしていた。そうか、親としては勉強の教材をあげるものなのか。確かに魔法書は高いからね。


「これは、水属性の中級魔法書ですか! 欲しかったんです!」


 ミレイは喜んでいた。そうか、ミレイは中級魔法使いなのか。

 私が規格外の魔法使いなのは分かっているけど、学園のレベルってどうなんだろう。

 確かサーシャがミレイは優秀だって言っていたから、中級でもすごい魔法使いなのかな。


「お姉さま。私からは、お小遣いで買った、この髪留めを受け取ってください」


 サーシャからはなんとも可愛い蝶の形をしたピンクの髪留めだ。

 一瞬だけ髪留めを考えたけど、被らなくてよかった。


「ありがとう、サーシャ。大切にするね」


 ミレイは嬉しそうに髪留めを付けた。とっても似合っているよ。

 私が微笑んでいると、3人が私を見ている。

 うん、私の番だよね。

 ちゃんと準備しているから安心して。


「私は甘味を作ってきたよ。喜んでくれれば嬉しいけど」


 私はパンケーキを取り出し、ミレイの前に置く。

 全員が見たこともない食べ物に興味を持ちながら、パンケーキを口に運ぶミレイをじっと見ている。


「何これ……、おいしい」

「それはよかった」


 どうやら気に入ってくれたようだ。

 女の子は甘いものが好きだもんね。

 私も前世から好きだったけど。


「こんなの今まで食べたことないよ!」

「ちょっとミレイ、お母さんにも少し分けてちょうだい」

「お姉さま! 私も食べたいです!」


 ユリアとサーシャも身を乗り出して、ミレイに声を掛ける。

 よかった、こういう時のために余分に作ってきたんだよ。


「ユリアさんにも、サーシャちゃんにも作ってきたから、ミレイちゃんから奪わないでね」

「「本当に!?」」


 2人して目を見開いてこちらに振り返る。親子だな。

 私は、2人の前にもパンケーキを置いた。

 そして、2人とも口に入れた瞬間。


「「おいしい〜!」」


 やっぱり親子だ。

 なんとも微笑ましい光景だ。


「なんですか、ヒナタさん! こんなおいしい甘味は食べたことがありませんよ! このパンのようなものもそうですが、上に乗っている冷たい甘味もとても美味しんですが!?」


 ユリアが今までに見たこともないくらい興奮している。

 サーシャは満面の笑みで黙々と味わいながら食べている。


「これはパンケーキというものです。上に乗っているのはアイスクリームです」

「ヒナタさんが考えたものなの? お店でも見たこともないけど」

「……そうですね、そんなところです」


 別に私が考えたわけじゃないから、困る質問だな。

 前世で知ってますなんて頭のおかしい回答はできないし。


「すごいですね、お店に出したらかなり儲けそうなものですけど」


 そうか、お店か。それは考えてなかったな。

 将来のために喫茶店みたいなものを開業するのも悪くないね。

 かなり儲けそうだよね、いやメイド喫茶とかもいいかもな。

 とりあえず喜んでくれてよかった。頑張って氷魔法覚えて頑張った甲斐があったよ。


「そのつもりはありませんが、そのうちお店を開くのもいいかもしれませんね」




 その後も、興奮した3人と食事を楽しみ、無事にお誕生日会を終えて、宿へと戻るヒナタであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ