17 ワイバーンを蹂躙せよ
みなさんおはようございます。ヒナタです。
今日はワイバーンを殲滅しに行きます。
朝起きて着替えた後、宿で朝食を食べて腹ごしらえです。
でもカレン達を待たせるわけにもいかないから、早めに食べて出ないといけない……と思っていたが、宿屋の娘であるトリスが話し掛けてきた。
「お姉ちゃん、この街に魔物が来ているらしいよ。冒険者の人がやっつけてくれるといいけど、もし街まできちゃったらこわいよ」
街の住民もワイバーンの襲来について知っているみたいだね。
でもトリスも目の前にいる女性が今からその魔物を壊滅させに行くとは思わないよね。
「大丈夫だよ。この街の冒険者の人が守ってくれるからね」
私はトリスの頭を撫でながら励ました。
トリスは泣きそうになっていたので、寄り添い優しく抱きしめて慰めた。
そんなことをしていたからか、少しだけ遅刻しそうだ。
でもトリスが不安そうにしていたからほっとけないよね。
私は急いで宿を出て集合場所である北門に向かった。
「遅いぞヒナター!」
集合場所の北門に来るとカレンとシャーロットがすでに到着していた。
「ごめんなさい。宿屋の娘さんと話してて」
「なんだよ。呑気なやつだな!」
笑いながらカレンが私の肩を叩いてきた。
なんとなくだけど、カレンはフレンドリーな元気一杯の女性。
シャーロットは礼儀正しい、寡黙な女性って感じかな。
「では、行きましょうか」
私たちは北門を出て、ワイバーンが向かってきている方へと歩き出した。
「まだ見えないね……」
しばらく歩いてきたが、まだワイバーンの姿が見えない。
そろそろお昼の時間のため、私は自作のタマゴサンドを食べていた。
卵が少し高かったけど、前世からタマゴサンドは朝ご飯としてよく食べていたから、どうしても食べたかったのだ。
私が食べていると、隣から視線を感じる。
「それ美味しそうだな、どこで売ってたんだ」
干し肉を食べながらカレンが興味深そうに聞いてきた。
タマゴサンドは市場に出回っていないからな。珍しいんだろう。
「これは私が作ったんです。卵を茹でて、潰したら胡椒で味付けしてパンで挟むんです」
「それ少しだけもらってもいいか」
「いいですけど……」
本当はあげたくないけど、ここで断る勇気は私にはない。
私が無限収納から取り出したタマゴサンドをカレンにあげると、美味しそうに食べていた。
「うまっ! こんなの食べたことないよ! ほら、シャルも食べてみな!」
カレンがシャーロットにも勧めていた。シャルは愛称みたいだ。
シャーロットも小さい口を開けて一口食べる。
「……おいしい」
どうやら2人とも気に入ってくれたようだ。男の手料理を喜んでくれるなんて。あ、女だった。
「まだあるか?」
「もうありませんよ」
まだあるが、これ以上はあげられない。
大切な食料だし、卵も胡椒も高いんだから。
しばらく休憩してから再度歩き出す。
20分程度歩いていると、上空に1体のワイバーンが現れた。
「きたぞ!」
カレンが叫ぶ。
私が遠視で見てみると、その先にも8体いた。
「全部で9体います。私が倒しに行くのでここで待っていてください」
私はすぐに飛行魔法で上空へと飛び上がった。
「「え、えええぇぇぇ!!!」」
下の方でなんか叫んでいるが無視だ無視。
私はワイバーンのいる高度まで飛んでいき、すぐに岩石弾を9発展開させる。
「ロックショット!」
見事に命中。
全てのワイバーンを一撃で仕留められた。
昨日のうちに実践できていてよかった。
私はそのまま下降して、カレン達の元へと戻った。
「ちょっとあんた! さっきの何!? 急に飛んでいったと思ったらワイバーンが落ちてきたんだけど!?」
かなり興奮しているみたいだ。
シャーロットは私を見て口を開けながら唖然としている。
「こういうことをするから、私の魔法は秘密にして欲しいと言ったんですよ。ご理解いただけましたか。あと、2人ともちょっと落ち着いてください」
「……あ、あ〜、ごめん。ちょっと目の前で起きたことが信じられなくてさ……」
「とりあえず、先に進みましょうか。さっきのワイバーン達が来た方向に向かいましょう」
2人ともジロジロと私を見ながら後をついて来ている。
後ろからの視線はほっといて私は先に進む。
「2人とも、静かに。この先からかなりの数のワイバーンが来ています」
気配察知により、ワイバーンが来ていることをカレンとシャーロットに伝える。
そして、遠視を使い正確な数を確認する。
1、2、3、…………だめだ。数えきれない。
推測で50はいそうだ。ちょっと思ったより多いな。
「カレンさん、シャーロットさん落ち着いて聞いてください。ワイバーンの数を確認しましたが、推測で50体はいそうです」
「ご、50!?」
「さすがにその数は無理ですよ!」
珍しく、シャーロットが強気の発言をしてきた。
でも、これを見逃したらウルレインで住民がたくさん死ぬことになる。
だから、私がやることは一つだ。
「大丈夫です。私に任せてください。あのワイバーンの大群に私が行使できる魔法の中で一番の威力のある魔法を使います。その後は、多分魔力枯渇で意識がなくなると思うので介抱をお願いします」
私は再度、飛行魔法でワイバーンの群れに突っ込んだ。
「え、ちょっと!」
ワイバーンが飛んできた私に気が付き、火吹を吐いてきた。
「おおっと!」
初めて火吹で攻撃してきたよ。びっくりしたな。
とりあえず全てのワイバーンが私に向かって来ている。
よし、いける!
「ロックストーム!」
かなりの魔力を込めた岩石嵐を放ったことで、とても大きな岩石嵐ができた。全てのワイバーンが竜巻にどんどん飲み込まれていき、無惨な姿で落下していくのが見える。
全部倒したかな……、と思っていると、3体ほど傷を追いながらも岩石嵐の中から出てきて私に迫ってきた。
やばい、もう意識が朦朧としているのに……。
魔力も少ないから、魔法も使えない。
ここにきて短剣の出番か。
私はフラつきながらも短剣を握りしめワイバーンに向かって構える。
すると下から、光の矢が飛んできて、ワイバーンに命中した。
下をみると、シャーロットが弓を構えていた。
そうか、シャーロットが助けてくれたのか。
私は残りの魔力で意識が朦朧としながらも下降していき、地面に無事についたところで意識を失った。
目が覚めると、目の前にカレンがいた。
そしてすっかり周囲は夜になっていた。
「あれ……。ワイバーンは……?」
「ヒナタが全部倒したでしょ。ありがとうね」
「ヒナタさんの最後の魔法すごかったです!」
よかった、全部倒したか。
しかし、この体勢はなんだ。
カレンが膝枕してくれている。
いや、嬉しいよ、こんな綺麗な女性に膝枕されたことなんか前世含めてないからね。
ってかそもそも膝枕されたことねーや。
「あ、すいません。どのくらい寝ていました?」
「んー、4時間くらいかな」
「結構寝てたんですね、ご迷惑をおかけしました」
「いや、ヒナタは頑張ったんだから気にするなよ」
「シャーロットさんも最後に弓で助けてくれてありがとうございました。私1人だったら死んでいました」
「気にしないでください! 大したことしていませんから……」
シャーロットが頬を紅潮させながら答えてきた。
え、なんで照れているんだ。
惚れられたか。モテる女はツラいね。
「とりあえず、もう遅いのでこのままここで野宿でもしますか」
「うん、そうしようと思っているよ」
私は何気なく、無限収納からマイホームを取り出した。
ドン!!!
「なんだこれー!」
あ、やってしまった。
まだ頭が回っていないようだ。
ついついマイホームを召喚しちゃった。
まぁいっか、疲れているからゆっくり休みたいし。
「私の家です。ここならゆっくり休めますよ」
2人が口を開けて唖然としていた。なんだろう、見たことある光景だ。
戸惑っている2人を家の中に招き入れ、リビングの椅子に座らせる。
私は食事を用意するため、キッチンに向かう。せっかくだからお肉食べたいね。
森生活で倒したニワトリの魔物を一口大に解体して、溶いた卵を鶏肉にかけて、パン粉をつけた後、油で揚げた。
即席だけど、唐揚げにはなるよね。リビングの机に座らせた2人に唐揚げを差し出す。
「何これ! うま!」
「お、おいしい!」
そうでしょう、そうでしょう。
疲れた後は、お肉を食べると元気が出るよね。
さらにレモンとビールがあればもっと最高だけど……。
私特製の唐揚げはあっという間になくなった。
見よ。2人のほくほく顔。作ってよかった。
「さて、次はお風呂にでも入りましょうか」
「「お風呂!?」」
2人して同じ反応しなくても。
せっかくこんな綺麗な女性と金髪美少女がいるんだから一緒にお風呂は入りたいよね。
身体の隅々まで拭いてあげたいし……。
早速、前回覚えた混合魔法でお湯を作り、浴槽に入れた。
「お二人共、お風呂ができましたよ」
リビングでわくわくしながら待っていた2人を呼びかけ、お風呂に入るよう促す。
さあ……ショータイムだ。
脱衣所で服を脱ぐ2人を横目で確認する。
おおお……。なんだあのカレンの胸は……。
デカい。とにかくデカい。
それにとても綺麗だ。こんな胸を拝む日が来るとは……。
初めて女性に転生して良かったと思った。
そしてシャルは……うん。可愛らしい胸ですね。
服の上からも予想はできてたけど、やっぱり私より小さい。
でもシャルの胸もあれはあれで素晴らしい。
おっと鼻血が……。このまま観察してるとスキルを発動しなくても発情してしまう。
兎に角、感想としては2人ともスタイル抜群でいい身体でした。
本当にありがとうございました。
そして2人の身体を堪能しつつ、私が我が儘を言って2人の身体を拭いた。
間違えて変な箇所を触らないように気を付けたよ。
2人に変態と思われたくもないからね。
そして身体を拭き終わった後は、3人でお風呂に浸かる。
こうやって美少女と一緒にお風呂に入れるように大きめに浴槽を作った甲斐があったよ。
「それにしてもヒナタはすごいな。いきなり空は飛んでワイバーンの群れを殲滅するし、こんな立派な家を持ち運んでいるし、さらには料理も上手だからな」
「ははは……。全て秘密でお願いしますね。お二人を信用しているからこそ、私の全てを見せていますので」
そう、裸までね。
「そっか、ありがとうな。このことは誰にも話さないよ。シャルも約束は守れよ」
「もちろんです。恩を仇で返すような真似はしませんよ!」
しばらく浸かっているとのぼせそうになったのでお風呂から上がる。
その後は寝るだけだが残念ながらベッドは1つしかない。
……本当に残念だ。
「あの、ベッドは1つしかないので一緒に寝ましょうか」
「いやいや! あたしたちは床でも十分だからさ!」
「そ、そうですよ!」
それはダメだ!
みんなで一緒に寝たいんだ!
「ダメです。ベッドで寝ないと疲れが取れませんよ。明日帰る途中で倒れられても困るのでベッドで寝てください。これは家主からの命令です!」
少し……。いや、かなり強引に誘った。
だって、折角なら美少女達と一緒に寝たいじゃん。
それに人肌に触れると疲れもストレスもかなり軽減するらしいよ。
「わ、わかったよ……」
「は、はい……」
その後は、3人で眠るには少々狭いベッドでぐっすり眠った。
あぁ〜、満足だ。




