15 オークなんか絶滅しろ
みなさんこんにちは。ヒナタです。
昨日まで魔法についてたくさんの知識を得られたし、新しい魔法も使えるようになりました。
とても満足です。
さて、本日は冒険者として仕事をしようと思います。
さすがに目に見えた実績を作っておかないとDランクを疑われそうだしね。
早速、冒険者ギルドへと向かう。
「面白そうな依頼ないかなぁ」
依頼ボードを見ていると、ほとんどの冒険者が朝から依頼を受けてしまい、あまり依頼が残っていなかった。
しかし残った依頼の中にとある村にオークが5体現れ、男性は殺され女性は連れて行かれるという被害が起きているらしい。
そのための討伐依頼があり討伐難易度はCランク。
うん、私でも受けられるね。
オークもゴブリン同様、女性の身体で繁殖するため同じ女性としては許される所業ではない。
オークは蹂躙に限る。
私は依頼書を剥がし、セレナのところに向かった。
なんか専属の受付嬢みたいになってきた。
「セレナさん、おはよう。この依頼を受けたいんだけど」
「ヒナタさん、2日ぶりくらいですかね! お久しぶりです! オーク討伐ですか。村のことを考えるとすぐに動きたかったのですが、何分報酬が少ないので割りに合わないと他の冒険者の方が受けてくれなかったんですよ」
「まあ、小さな村みたいだから報酬は期待できないよね。でも困っている人がいたら助けるのが冒険者だよ。それに同じ女性としてオークは絶滅するべきだと思ってるし……」
「ヒナタさんは冒険者の鑑ですね。他の方にも見習って欲しいです……」
お互いに愛想笑いを浮かべて、私はセレナから村の地図をもらって討伐に向かった。
思えばオークは今まで見たことがないな。どのくらい強いんだろう。
大抵は岩石弾で倒せるとは思っているけど大丈夫だよね。
いやらしい目で見てきたら加減を間違えそうだけど……。
そういえば前にセレナになんで魔物が人間の女性に孕ませるのか気になって聞いてみたけど、人間の女性の方が強い個体が生まれやすく、それに生まれるのが早いらしい。
同種族間での交配で子が生まれるまでは大体2ヶ月程度で、異種族間だと1ヶ月になるらしい。
ちなみに異種族間交配をするのは、ゴブリンとオークのみらしい。
うん、絶滅しろ。
そんなことを考えながら歩き続けていると村に到着した。
この村はラタコ村というらしい。
本当に小さな村で、村民も15人程度しかいない村だそうだ。
普段は魔物も出ない場所らしく防壁はおろか防護柵すらない。
私は村の入り口みたいな所にいた少し窶れている男性に話しかける。
「あの、オーク討伐の依頼を受けた冒険者のヒナタと言います」
男性は疑いの目で見てきた。
そりゃそうか。村の危機なのに期待していた冒険者がこんな年端もいかない少女なんだから。
「……そうか。お嬢ちゃんはオークがどういう魔物なのか分かっているのか?」
そんな目で見ないでよ。
信用できないのは分かるけど、こうも疑いの眼差しを向けられると帰りたくなっちゃう。
「大丈夫です。これでもDランク冒険者です。それにギルドからも正式に受注してこちらに赴いているので心配無用です」
「……はあ。とりあえず村長のところに案内する」
明らかに不躾な対応をする男性に連れられて私は村長の家に案内される。
「ようこそ冒険者の方。私はこのラタコ村の村長をしているグレイという。この度は依頼を受けていただき村を代表して感謝申し上げます。オークによって村の働き手が殺されて、女性たちも連れて行かれてみんな怯えておる。なんとかこの村を助けてください」
グレイは頭を下げながらお願いしてきた。
さっきの男性とは違い、礼儀正しい。
「わかりました。私に任せてください」
私は胸を張って村長の期待に答えるべくそう答えた……が。
「村長!? こんな小娘に本当にオークが討伐できるとお思いですか?! きっとすぐにオークを見た途端逃げ出してくるに決まってます!」
このおっさん失礼すぎないか。
人は見た目で判断してはいけないと子供の頃に教わらなかったのか。
私は言い返そうとしたが村長が怒りの形相で男性に向かって叫んだ。
「ダレス! 冒険者の方に失礼だろ! この方はこの村のために報酬が規定より少ないと分かっていて受けてくれているんだぞ! それなのにその態度はなんだ!」
報酬は少ないのは自覚しているんだね。
まあ、だから誰も受注しなかったんだろうけど……。
「し、しかし……」
「もうお前は出ていけ。少しは頭を冷やして冷静になれ」
男性はそのままトボトボと出て行った。
「すまない。ダレスは妻をオークに連れていかれて正気じゃないんだ。許してくれ」
そういうことか。
それならあの対応にも納得だ。
妻を助けてくれると信じてた冒険者が私みたいな子供だもんね。
でもこの世界は15歳で成人だから私は子供じゃない。背は小さいけど。
「構いませんよ。村が緊迫している状況なのは理解できますから。とにかく私はオーク討伐と女性の救出に向かいます。オークがどのあたりにいるか教えてもらえますか」
私はオークの住処を聞き急いで向かった。
そして歩いて10分程度先にある小さな洞窟が見えてきた。
「ここか……」
中に捕まった女性たちがいるから、人質に取られないようにしないといけない。
……そうなると倒し方はこのスキルだ。
私は隠密と気配遮断を使って、堂々と洞窟に入った。
奥に進むとオークが報告通り5体。
4人の女性が木で簡易的に作成された檻のようなものの中に座っている。
このオークたちに容赦はしない。頭を吹き飛ばしてくれる。
「ロックショット、ロックショット、ロックショット、ロックショット、ロックショットーー!」
私の怒りの全てを魔力に込めて、オークの頭を吹き飛ばした。
次々と倒れていくオーク。
何が起こっているかわからない女性たち。
「終わった……」
返り血を浴びていたが、すぐに隠密を解いて女性たちに駆け寄る。
こういう時は私が女性でよかったと思う。
服も着ていない女性たちに向かって男性が血だらけで向かってきたら恐怖だもんね。
「私は冒険者のヒナタと言います。みなさんを助けにきました」
女性たちを見ると、数人は暴行を受けているようで怪我もしており悲惨な光景だった。
……やはり遅かったか。私はひどく後悔した。もっと早くこの依頼に気がついていれば……。
魔法の練習なんかしていなければこの女性たちがこんな目に遭わずに済んだかもしれない。
罪悪感に苛まれ、私は気がついたら目から涙が流れていた。
「ごめんなさい……もっと早く助けに来ていれば……」
「……い、いえ。ありがとう。助けに来てくれて」
1人の女性が私を励ましてくれた。
私はすぐに檻の中にいた女性達を助け出した後、マイホーム用に作ったバスタオルを無限収納から取り出し、女性達に渡した。
その後オークに強奪スキルを使いオークを無限収納にしまって村に向かった。
「リ、リン……!」
私を罵倒していた男性は奥さんが見えるとすぐに走ってきて抱きしめていた。
「あなた……」
「……すまない。お前を助けられなくて……」
私はその姿をなぜか見ることができなかった。
私が落ち込んでいると、村長に話し掛けられる。
「ヒナタさん、村を助けてくれてありがとうございます」
「……いえ。私がもう少し早くこの依頼を受けていれば女性達もこんなひどい目に遭わなかったでしょう。本当にごめんなさい……」
「ヒナタさんは優しいのですね。顔をあげて見てください……村の者たちの笑顔を」
私が顔を上げると村にいた男性達も捕まっていた女性達も、みんな涙を流しているが辛そうではない。
嬉し泣きなのだ。
ああ、この村の人たちは強いんだな。
力なんかじゃなくて精神面でだ。
前世で平和ボケしていた私なんかよりもずっと……。
「は、はは……」
こんな強い人たちの前で情けない顔は見せられない。
私は涙を拭い村長を見た。
「改めて、村を救っていただきありがとうございます」
村の全員が私に向かって頭を下げた。
「どういたしまして」
私は笑顔でそう言った。
その後は村の人たちの食料のため全てのオークをあげた。
オークの肉は日本でいう豚肉と同じだ。
街でも食材として重用されているから素材は高く売れるが、村のために提供した方がいいと判断した。
あ、でも討伐証明の魔石だけは回収したよ。
これがないと報酬がもらえないからね。
そろそろ帰ると村長に伝え村を出ようとすると、ダレンとリンがいた。
「ヒナタさん、初めは失礼な態度をとって申し訳なかった」
「ヒナタさん、助けに来てくれてありがとう」
ダレンとリンは頭を下げて、謝罪と感謝を同時にもらった。
「ダレンさん、気にしないでください。私は怒っていませんから。これからも奥さんを幸せにしてあげてください」
「ああ、約束する」
私は涙を流しながら答えたダレンにお辞儀をして、村を後にした。
ウルレインの街に帰りながら、私はオークから強奪したスキルを確認するためステータスを開いた。
オークから強奪したスキルを確認したいからね。
名前:ヒナタ
種族:人族
年齢:15歳
職業:魔法使い
HP :136/136
MP :282/282
スキル:水魔法LV5
風魔法LV6
火魔法LV5
土魔法LV5
無限収納
威圧LV4
毒霧LV1
毒耐性LV3
麻痺耐性LV2
気配察知LV5
気配遮断LV2
隠密LV4
発情LV2
ユニークスキル:強奪
な、な、な……。発情だと……。
「いらんスキル強奪してしまったー!」




