13 サーシャとデート
みなさんこんにちは。ヒナタです。
昨日は自分で選んで囮になったとはいえ大変な目に遭いました。
危うく貞操の危機ですよ。
さて、本日は冒険者ギルドに報酬をもらいに行きます。
宿で朝ごはんを食べ、冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドに入り、受付にいたセレナに話しかける。
「おはよう。昨日のことで報酬を受け取りに来たんだけど、セレナさんは聞いてる?」
「はい、ギルマスから聞いていますよ! ヒナタさん騎士団と一緒に大活躍だったみたいですね! 報酬とランクを上げますのでギルドカードをお願いします」
私が囮になったことは聞いてないんだな。
確かにまた心配掛けちゃいそうだしね。
ギルマスのセレナへの配慮に感謝しよう。
私はセレナにギルドカードを提出する。
「どうぞ、報酬金貨80枚振り込んでおきました。あと、ランクもDへ昇格です。おめでとうございます! こんなに早くDランクになる人はあまりいませんよ。すごいですね!」
「いや、依頼はほとんど受けてないけどね。なんか罪悪感あるよ」
「いえ、実力に見合った昇格ですよ! そういえば、領主様からお呼びがありましたので、時間に余裕があったら領主様の屋敷に行ってください」
「うん、わかったよ」
報酬が高いことに驚いたけど、どうやらギルドと合わせてフィリップからの依頼料も含まれているみたいだ。
私は冒険者ギルドを出て領主の屋敷へと向かう。
「あの……領主様から呼ばれてきたんですけど、冒険者のヒナタです」
私は屋敷の門番の騎士に話しかけた。
「ヒナタ殿ですね。昨晩は協力いただき感謝します。話は領主様から聞いているから入ってくれ」
この騎士も昨日の殲滅作戦に来ていたのかな。
私は案内され屋敷へと入る。
「ようこそヒナタ様、お待ちしておりました」
メイドさんがお辞儀をしながら出迎えてくれた。
すると奥からピンクのドレス姿を着たサーシャが走ってきた。
「ヒナタお姉ちゃん!」
サーシャが抱きついてきた。なんかデジャヴ。
初めてここに来た時、フィリップもサーシャに同じことしていた。やはり親子か。
この前仲良くなったことで私のことをヒナタお姉ちゃんって呼んでくれるようになったけどすごい照れる。
だって私に向かって上目遣いで言ってくるんだよ。
あー、結婚したい。
「会いたかったよ、サーシャちゃん!」
「私もです!」
私も抱きしめてサーシャの頭を撫でるとサーシャが照れていた。
この子もらってもいいですか。
一生大切にしますよ?
「あ〜、来てくれたかヒナタさん」
サーシャとイチャイチャしていたら、いつの間にかフィリップが隣に立っていた。
私とサーシャの逢瀬を邪魔するとは何事か。
「早速で悪いが、私の執務室に来てくれないか。サーシャには悪いが少し待っていてくれ」
「わかりました、お父様」
執務室に案内され、フィリップと対面になるよう椅子に座った。
「まず、昨晩の奴隷売買組織の殲滅に協力してくれて感謝する」
フィリップが頭を下げてお礼をいう。
執務室に呼んだのは、頭を下げるのをサーシャに見せたくなかったのかな。
「いえ、仕事でしたし私にも無関係なことでもありませんでしたから。もうお礼は結構ですよ。頭をお上げください」
「本当にヒナタさんにはいくら感謝しても返せないくらいの恩がある。今後何か頼み事が出来たら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます。それでしたら、これからもサーシャちゃんと会えるようになりたいです。私にとってこの街での初めてのお友達なので……」
サーシャにいつでも会えるようになれるのが、私にとって一番大切だ。
癒しは必要だからね。
「そんなことでよければいつでも歓迎する。娘も喜ぶからな」
「ありがとうございます」
これでサーシャといつでも会える権利がもらえた。
これは親公認でイチャイチャしてもいいってことだよね。
……え? そういうことじゃないって?
私の解釈はそうなんだよ。
あ、頼み事と言えば一つ聞きたいことがあったんだよね。
「一つ聞きたいのですが、魔法について記載されている本とかってありますか」
そう、私の魔法の知識は独学だ。
街についてからすぐに調べたかったんだけど、忙しくてできなかった。
魔法の知識が身につけば、魔法の常識も知ることができる。
私が非常識な存在なのか、それともごく普通の魔法使いなのか。
「ヒナタさんはすごい魔法使いだと思っていたがそんなことか。それなら書店に行けば魔法書とかが売っているよ……と言いたいところだが、この屋敷にもあるから特別に貸してあげよう」
「すごいかどうかはわかりませんが、私のは独学で身につけたものなので世の中の魔法の常識についてはあまり知らないですよ。それに貸していただけると嬉しいです。ありがとうございます」
フィリップは執事に魔法書を準備するよう伝えた。
「せっかく来てもらったから、娘と遊んでもらえるか。ヒナタさんが来るって聞いて楽しみにしていたみたいだからね」
「わかりました。せっかくなのでサーシャちゃんと外に行ってもいいですか」
「構わないよ。ヒナタさんと一緒なら護衛としても安心だからね」
よし、サーシャとのデート許可が降りた!
手を繋ぐだけなら許されるよね。ぐふふふ……。
私は執務室を出て、サーシャと2人で屋敷の外へ向かった。
「ヒナタお姉ちゃんとお出かけなんて嬉しいです!」
「私もサーシャちゃんとお出かけできて嬉しいよ。それとフィリップ様にお願いしてサーシャちゃんとはこれからも自由に会いに来てもいいって許可がもらえたからすぐに会えるようになるよ」
「本当ですか!? 嬉しいです!」
私の左腕に抱きついて喜んでいる。
あー、結婚したい。
このまま私の宿にお持ち帰りしてもいいかな。
「私はまだこの街についてあまり詳しくないから、サーシャちゃんのおすすめの場所とかあるかな?」
「ありますよ! この先に美味しいお菓子屋さんがあります!」
「そうなんだ、なら行ってみよう」
辿り着いたお菓子屋さんは、日本で言うとカフェだな。
お客さんが丸いテーブルで談笑しながらお茶を飲み、クッキーを食べている。
コーヒーはこの世界にないようだ。
「素敵な場所だね」
「はい! よく護衛の騎士を連れてここにクッキーを食べに来るんです」
サーシャはよく外出しているようだ。
カフェの中に案内されて席に座る。
「いらっしゃいませ、サーシャお嬢様」
どうやらサーシャは本当に常連みたいだ。
店員さんからも覚えられている。
そして手渡されたメニューを見て私はサーシャと同じクッキーと紅茶を頼む。
数分後、クッキーと紅茶が運ばれてくる。
「クッキーも紅茶も美味しいね」
「そうなんですよ! 私の気に入りです!」
しばらくカフェでサーシャと談笑して分かったことがある。
サーシャには2歳上のお姉さんがいるみたいだ。
学園には15歳から3年間通うらしく、お姉さんは王都の学園に通っているらしい。
それについていく感じでお母さんも王都に住んでいて、盗賊に襲われていたのはお母さんのところで遊んできた帰りだったそうだ。
「そうなんだ、お姉さんがいたんだね」
「はい、とっても優しくて成績も優秀だそうです。私もお姉さまのようになりたいです!」
うんうん、サーシャならきっとなれるよ。
そうなると2年後にはサーシャも王都に行くことになるのか。
私も王都には行ってみたいし、お姉さんにも会ってみたい。
「お姉さんにも会ってみたいね」
「でしたら、また私が王都に行くときにぜひご一緒しましょう!」
「そうだね。その時はついていこうかな」
いつになるか分からないけど……なんて思ったけど、案外すぐに王都に行くことになるとはこの時の私はまだ知らなかった。
結構遅くまでカフェで談笑していたのでそろそろ屋敷に戻るため、帰路についた。
幸せな時間だった。またサーシャ2人でデートしたい。
私は屋敷にサーシャを送り届け、執事から魔法書を数冊貸してもらった。
「それじゃ、またねサーシャちゃん」
「うん、またねヒナタお姉ちゃん」
さて、宿に戻って魔法書を読もう。
ヒナタは、ワクワクしながら宿へと戻った。
「さて、眠くなるまで魔法書を読み漁ろう。しばらくは生活に困らないほどお金を稼いじゃったから知識を得られることに集中したい」
そこから私は魔法書を読み進めた。
そこで分かったのは、自分の想定よりも遥かに私が魔法使いとして優れていることだ。
まず、そもそも魔法には火・水・風・土・光・闇の6種類あるらしい。
そのうちの3種類の魔法を使える人はごく少数で、国のトップクラスの魔法使いである王宮魔術師長が4種類みたいだ。そして火・水・風・土・光の5種類持っていた人は過去の大賢者として歴史に残っているらしい。
私が4種類持ってるってことはこの世界のトップクラスなんですけど……。
でも強奪スキルのおかげなんだよな。
あまり人前でたくさんの魔法を使うのはやめておこう。
目立ちすぎる。
それに魔力量についてもだがステータスで表示されるMPの値は平均でも80程度になるのだとか。
王宮魔術師でも200程度らしい。
これもやばい。私300近いよ。
さらに魔法には詠唱が必要らしい。やはりそうかという感じだ。
でも読み進めていくと、王宮魔術師クラスになると無詠唱で魔法を使う人もいるし、冒険者にも稀にいるみたいだ。これは頑張れば誤魔化せる程度かな。
とりあえず目立たないようにソロで冒険者をやった方が良さそうだ。
本当に信頼できる仲間ができた時だけ、使える魔法の種類のことを教えてもいいかもしれない。
ステータスについては墓場まで持っていくけど。
魔法書を読み進めていくと、自分がいかに規格外なのか分かってきて怖くなってしまったので魔法書を閉じ、眠りについた。




