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ロリ巨乳狐娘叔父さんオンライン ‐ 美少女妖狐になったけど姪とゲームがしたい ‐  作者: 菌糸雀
第5章 立派なマツタケを前にしてロリ巨乳狐娘は何を想う
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13. 魔津茸なんかに負けない


 片や2メートルを軽く超える不気味で巨大なゴリマッチョの単眼キノコ人間、片や小さなケモ耳少女たち。見た目だけなら勝ち目は無いが、僕たちは見た目以上に強いのだ。体格差が圧倒的すぎてただでさえ強い威圧感に気圧(けお)されそうになるが、だからと言って負けるつもりはなかった。


「こんなの慣れっこだにゃ! くらえにゃ!」


 初めに動いたのはミィだった。他ゲーでの戦闘経験も豊富で性格的にも怖いもの知らずな猫耳少女は、躊躇なく跳躍して不気味なマツタケの化物へと殴りかかった。


『邪ッ!』

「にゃっ!?」

「なっ……ガードした!?」

「クッ、コイツやるのにゃ! しかもまた打撃が効きにくいタイプにゃ……!」

『魔魔魔魔……』


 だがその拳は魔津茸の腕で防がれてしまい、ダメージが通ることはなかった。更にどうやら殴った感触もこれまで戦ってきたマタゴンと同じく、キノコ特有の弾力がある質感であるらしい。マツタケ系最強の名は伊達じゃないようだ。野良マツタケ以外に他のマツタケ系とか知らないけど。

 着地したミィは一旦バックステップで距離を取り、両手に斬撃属性の武器である鉤爪(かぎづめ)を装備した。


「これで通るにゃ!」

「あたしもいっくよー!」

「一斉攻撃だ!」

『邪ッ……!』


 魔津茸は攻撃を仕掛けられたミィへと反撃しようとしたが、その隙を見逃す僕と姪ではない。僕たちは魔津茸がミィの方に意識を向けているところに、背後から斬りかかった。ついでにミィも敵の大ぶりなパンチを(かわ)してカウンターの要領でひっかいていた。


『覇ッ!』

「にゃははははっ! 当たらなければどうということはないのにゃ!」

「そこだっ! ≪ソードスラッシュ≫!」

「せいっ! とうっ!」

『邪……』


 見た目通りのその強靭な肉体を武器にした魔津茸は、次々と大振りの一撃を繰り出す。それに対して真正面でミィが全て回避しながら殴り合って注意を引き、別方向から僕と姪が隙を見て攻撃する。自然と形になったその一連の流れにより、戦局は非常に安定していた。

 正直言って素手とほぼ変わらない鉤爪の短いリーチで自分は攻撃しながらも敵の攻撃は全回避とか、ミィが当然のように行うそれは完全に頭のおかしい行為である。素で尋常じゃないぐらい高い速度ステータスを妖力で強化したからこそ出来る技だ。普通無理だからそんなの。

 なので敵の狙いが一般人である僕か姪に移ったら、攻撃する余裕なんて無いし防戦一方になってしまう。だがそうなるとミィの攻撃の手数が増えるので、無防備な背中をこれでもかと殴りまくってヘイトをすぐさま取り戻す。前から思ってたけどコイツ強すぎじゃね?


 そういうわけで、問題があるとすればたまに僕たちが攻撃された時に避けるなり防ぐなりできるかどうかである。


『覇ァ!!』

「ひゃっ!?」

「るぅちゃん!」

「平気、なんとか剣で受けたしセーフ!」


 そんな中、唐突に姪に向き直って繰り出された大味なパンチ。なんとか姪は剣で受け流して直撃を避けたが、それでも削りダメージがいくらか入ってしまった。

 それはつまり、かわいい姪が負傷してしまった……傷を付けられた……すなわち傷物にされたということだ。コイツは許されないことをした。姪を愛する叔父として、そんな行為を見逃すハズが無い。

 ましてや黒いブーメランパンツしか身に着けていない変態みたいな外見の奴にやられたのだ。顔にも口や鼻が存在せずにデカい目が1つあるだけだし、間違いなく変態だ。変態許すまじ。


 さしもの温厚な僕もこれには怒りが怒髪天である。だが怒りで我を忘れてはならない。怒りに燃える心は原動力になるが、復讐は理性を持って行うべきだ。

 僕は標的をより効率的に殺傷するため、敢えてメイン武器である短剣を一旦鞘に収める。そして極めて冷静に、空いた両手でアイテム欄から何本もの凶器(ナイフ)を瞬時に取り出した。


「テメェよくもウチの()に手ェ出しやがったな! これでも喰らえオラァ! ≪アサシンスロー≫!!」

『邪ァァッ!?』

「おぉー! あんちゃんすごい!」

「効いてるのにゃ!」


 抑えきれない怒りと共に僕が投げつけた投擲用のナイフは、1本1本の威力はさほど高くはない。当たり前のことだが普段武器として使っているもので直接斬った方が強い。

 だが≪剛体≫により強化された身体能力から繰り出される投擲はなかなかバカにできない威力であり、実はここに来るまでのマタゴン戦でもかなり役立ったのだ。なにしろ近距離攻撃で倒すには飛んでくる状態異常の粘菌を掻い潜りながら近付かなければならなかったが、遠距離攻撃で倒すならそのリスクを踏み倒せるからである。それに気付いてからはマタゴンとの戦いもだいぶ楽になった。


 そんな遠距離攻撃を、この直接斬りかかれる距離で選んだ理由。それはズバリ、弱点への攻撃であった。僕が狙ったのは魔津茸の顔面にデカデカと開いた、生物なら必ずしも弱点である、目。

 だが悲しいかな今の僕では身長差がありすぎて、巨体である魔津茸の顔には腕を目一杯伸ばしても刃が届かないのだ。跳べば届くが、威力は落ちるし反撃は避けられなくなるしで得策ではない。

 だからこその投擲。これなら届くし、この距離なら外さない。

 見事急所に命中したナイフは、その本数の多さも相まって充分なダメージとなった。弱点に大きなダメージを受けた魔津茸は、あまりの痛みに(うずくま)る。特定部位へのダメージ蓄積による大ダウンだ。当然ながら絶好のチャンスだ、僕たちはそれを見逃さない。


「今だっ! ≪狐火・纏≫!」

「チャンスだね! ≪ブレイドダンス≫!」

「オラにゃにゃにゃにゃにゃ!!」


 目を手で抑えているために無防備な魔津茸に、各自ひたすらに連撃を叩き込む。敵のHPも半分を切っているのだ、ここで大きく削れば一気に勝利に近付くだろう。


 いくら見た目が人型に近いとはいえ、キノコモンスターである魔津茸が人体と同じ構造なのかは分からない。それでも結局目を除けばどこが弱点なのかは分からないので、僕はなるべく筋肉の鎧が少ない脇腹を狙って炎の短剣で何度も斬りつけていく。

 姪も同じような考えなのか、コンボを繋げて執拗に首を斬りつけていた。まぁ首を落とせば大体の生物にとっては致命傷だしな。魔津茸が相手でも多分これでいいはずだ。

 ミィは特に何も考えなかったのか、立ち位置の都合で自分の方に向いていた尻をひたすらひっかいていた。いやまぁどうせ弱点とか知らないなら、適当に目の前にあった部位をすぐさま攻撃するのは理にかなってるけどさぁ……絵面がシュールすぎるんだよ。僕と姪が殺意全開の急所狙いだから尚更浮いて見える。決して問題があるわけではないのだが。


 ともあれそうして集中攻撃を叩き込むこと数秒、そろそろ魔津茸がダウンから復帰しそうな頃合いに差し掛かった時だった。


『覇ァァァァァァ!!』

「うおっ!?」

「きゃっ!? なに!?」

「なんにゃ!?」


 あまりに攻撃されすぎて怒ったのか、蹲っていた魔津茸が急に立ち上がって赤いオーラを解き放った。その勢いたるや衝撃波となって僕たちをまとめて吹き飛ばすほどで、いくらかダメージも貰ってしまった。

 溢れるオーラはすぐにやんわりと身に纏う程度にまで収まったが、どうにも先程までと雰囲気が違う。追い詰められて本気を出してきたということか。


「あたしちょっと回復!」

「僕もMP回復しとくか……ミィ、ちょっと回復するから引き付けといて!」

「任せるにゃ!」


 そんな第二形態に対して手負いで挑むのは得策ではない。衝撃をモロに喰らってしまった姪はHPを、≪剛体≫により妖力で防御した僕はMPを回復するために回復アイテムを使用することにした。最近ゴルが貯まってきたので少しだけ買ったのだ。

 ミィも衝撃波を喰らってはいたものの、畳み掛けるために攻撃スキルを使った僕とは違ってまだMPに余裕がある。ダメージを妖力で肩代わりしたために≪剛体≫の効果は多少下がっていると思うが、それでも最悪回避に徹すれば僅かな時間を稼ぐだけなら問題ないだろう。僕たちが可及的速やかに回復してすぐさま戦線復帰すれば大丈夫だ。


「んくっ、ごくっ……ぷはぁ! よし回復!」


 というわけで姪がHPポーションを飲み干す横顔をしっかり見守ったことだし、僕の方もMPを回復するとしよう。

 僕はアイテム欄からMPポーションを取り出し……あれ? おかしいな、なんか上手く取り出せない……あっ。


「やっべ」

「ん、どしたの?」


 なぜポーションが取り出せないのだろう。そうやって少し考えた僕はある事実に気が付いてしまい、思わず額に冷や汗が流れる。


「……薬、もうなかった」

「あっ」


 おいおいやべぇよ、この重要な局面でこれはやべぇよ。

 思い出すのは、キノコの里を目指す道中で使ったなという記憶。

 そういえば里に着いたあとはすぐに姪にモフられていたから、消耗品を補充するタイミングを逃していた。その時ミィに全財産を預けた後、かろうじて返ってきた分で食材を買って一文無しになったのでそれ以降は機会があっても買えないわけだ。完全に忘れてたので買おうともしてないが。


「ハッ!? 待てよ、じゃあまさか投げナイフも……」


 そして同じく消耗品である投げナイフも残り少ないのではないかと思い至り、急いで所持数を確認する。

 僕の場合は≪アサシンスロー≫がMPを消費しないスキルであるため、ナイフさえ残っていればMPが尽きても最低限は戦えるのだ。≪剛体≫無しで近接攻撃を仕掛けるぐらいならば反撃のリスクが少ない遠距離から攻撃を仕掛けたいものだが、もし投げナイフが残り少ないのであればペース配分を考えなければ……と、心配したものの。


 僕はフッと息をついた。どうやら要らぬ心配だったようだ。ナイフを使うペース配分など、この本数なら必要ないだろう。なぜならば――


「投げナイフ、1本も残ってなかったわ」

「えぇ……大丈夫なの?」


 残り少ないMP、尽きた消費アイテム、短剣とかいう弱い武器、湿度のせいであまり威力が出ない炎。

 今ここに、かわいいだけの役立たずロリ巨乳狐娘が誕生したのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛いのはいいのだが [一言] 撤退しましょう
[一言] 大丈夫、可愛いは正義だ!
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