③
「じゃあ説明していくか。つってもそんな大層なもんじゃねーがな。
さっきも言ったが、あんたらは元の世界に帰れねぇ。
どういう仕組みで異世界人が落ちてくるのかお偉いさんたちが
長年調べてはいるが、いまだに分からねぇ。
だからもちろん元の世界に帰る方法もわからねぇ。
となるとここで生きていくしかない訳だ。
そこでまず、あんたらのような異世界人は国に登録の義務がある。
登録すれば国が身元を保証してくれるからな。
手続きはまた詳しく説明するから今は省く。
それから後見人を決めてもらう。国は身元の保証はしてくれるが、
生活の保障はしてくれない。それについても後で説明する。
で、それさえ済めば基本的にどう暮らしてくれてもいい。
ただし、犯罪行為は認められない。ここの人間と同じように罰せられる。
注意しろ。どうだ?ここまでで質問はあるか?」
ざっくりした説明だが、簡潔で私には分かりやすかった。
前嶋さんもそうらしく、
「えっと、つまり・・・国に登録っていうのは戸籍みたいなものですかね」
「そうだと思う」
同意した。
だからどう暮らしていくのも自由なのか。
隔離でもされるかもしれないという不安は消えたので良かった。
「コセキがどういうもんか分からんが、あんたらの様子を見ると認識としては
多分合ってると思うぞ」
クライヴさんはそう言ってくれた。
私たちを安心させようとしてくれているのが伝わった。
「他には何か分からねぇとこはあるか?」
「後見人ってどんな人ですか?どうやって決めるんですか?
面談とかするんですか?」
さきほどのクライヴさんの気遣いに心を開いたのか今度は前嶋さんが
質問をし始めた。
「お、なんだ。性格的におとなしい方なのかと思ったらそれが地か。」
そう、本来の彼女はとても元気でパワフルだ。
先ほどはパニック状態でああなってしまっただけなのだ。
「で、後見人についてだが、決めるにあたって選択肢は2人にある。
基本的にお前ら自身が決めた人物が後見人になる。拒否権はない。
ただし、候補の中からだがな」
「候補って?」
「それがさっき説明を省いたとこだが、その候補がそこにいる連中だ」
そう言ってクライヴさんはキラキラ集団を指さした。
なんと。
なんでいるのか不明だったが、そういうことだったとは。
そういえばあとで彼らの説明をしてくれると言ってくれていた。
「この人たちの中から後見人を選ぶんですか?」
「そうだ。あ、おっと言い忘れたな。シオとヒカリはそれぞれ選べよ。
2人まとめてっていうのはできねぇからな。
異世界人と後見人は1対1のセットだ」
「え!?なんでですか!?」
前嶋さんは驚きのあまり前のめりになっている。
「そういう決まりだ。例外は認められてねーな」
少しの沈黙がおりた後、
「じゃあ・・・私、クライヴさんがいいです!!」
前嶋さんの突然のご指名に一同びっくり。
「はあ!? お、おい! お前話聞いてたか?
この連中から選べって言ったろうが」
「え、クライヴさんは候補じゃないんですか?」
至極残念そうに聞いた前嶋さんに対してなぜかクライヴさんは沈黙した。
「候補だよ」
前嶋さんの質問に対して答えてくれたのはキラキラ集団の1人だった。
金の長い髪に同じ色の目。穏やかな笑みを浮かべていた。
「アルト! 余計なこと言うな!」
クライヴさんは何故か怒っている。
「クライヴ、嘘はだめだ。クライヴも候補の1人なんだから」
なぜだめなのか。
私も前嶋さんもその理由がわからず彼らのやりとりを見守るしかなかった。
「あのな~、候補っていってもな、お前らと比べりゃただの
むさ苦しいおっさんだろうが。
選ばれるわけねーのに俺が自ら候補なんて名乗れって言うのかよ。
そんなのただのマヌケじゃねーか」
少し拗ねたように言ったクライヴさんは頭がガシガシとかいた。
豪胆に見えて繊細な部分も持ち合わせているようだ。
「それはクライヴの勝手な都合だよ。彼女たちには関係ない」
その言葉を聞いた前嶋さんはクライヴさんに元気よくあいさつした。
「クライヴさん! 私の後見人よろしくお願いします!!」