①
初めて投稿します。
完結に向けて頑張りたいと思います。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
チキンでガラスのハートの持ち主なので、
あたたかく見守っていただけたらと思います。
私たちは今、なぜか森の中にいる。
さらに言えば知らない人たちに囲まれて。
「前嶋さん、とりあえず落ち着いて」
目の前でパニック状態にある後輩に声をかけた。
と言ったものの彼女が落ち着く気配はない。
当然と言えば当然だけど。
「落ち着けって・・・落ち着けませんよ!!てか、何で落ち着いてられるんですか!?」
怒られた。
これでも十分びっくりしてるし、混乱している。
色んなことが頭の中でグルグルしている。
だが、自分が今どういう状況に陥っているのか早く把握したい。
「前嶋さん」
彼女の手をできるだけ強く握った。
ようやく彼女は少しだけ落ち着いてくれた。
途端に今度は半泣き状態だ。
「く、く、倉敷さん、わ、私たち・・・」
「うん、状況はよく分からないけど、日本じゃないことだけはなんとなくわかる」
”ここが日本じゃない”という私の言葉に前嶋さんは身体を強張らせた。
今は何より事実を認識することが重要だ。
なんせ金髪や銀髪などキラキラな髪色及び目の色をした美形の男性に囲まれている。
おまけに腰に剣をさげている者までいる。
コスプレなのかと思いたかったが、そうでないことは雰囲気で感じ取れる。
となると、もはや日本でないだけでなく、現代でさえないことになる。
もしかしてこれはいわゆる異世界トリップというやつであろうか。
そんなことを考えていると
「おい、大丈夫か」
目の前の男性から声がかかった。
隣にいた前嶋さんはそれだけで怯えた。
まあ、大柄でひげを蓄えた筋肉隆々のいかにも戦士という感じだから気持ちは分かるが。
「あの、私たちすごく混乱していて・・・状況を把握したいのですが、質問しても?」
私がそう言うと彼らは少しびっくりしたようだった。
「ああ。あんたらが知りたがってる答えを俺らは用意できてるよ」
こちらが質問する前にそんなことを言われ今度は私たちがびっくりした。
「つまり、私たちが知りたいことを知っているということでしょうか」
若干警戒しながら質問すると
「そんな警戒するな。取って食おうってわけじゃない」
苦笑された。
「では、さっそく質問してもいいですか?」
「いいぜ」
「ではまず、ここはどこですか?」
日本でないことはたしかだが、外国のどこかであるのかそれとも全く知らない世界なのか。
「エディンフィールド公国だ」
聞いたことない国だ。
やはり知らない世界に来たようだ。
「今私たちが会話している言葉はこの国の言葉ですか?」
「そうだ」
こちらは日本語でしゃべっているつもりだが、こうして通じていたので疑問に思っていたが、やはり日本語ではなかった。
だが、言葉問題は一旦置くとして。
こんなどう考えてもこの世界で生きていれば出てこないような質問に対して親切に答えてくれるということは次に聞くべきことが見えてくる。
「私たちがどこから来たかご存知なんですか?」
「詳しいことはわからねえが、ここじゃない違う世界から来た異世界人だとはわかる」
異世界人。
そうでないかと思っていたが、この世界の彼らから言われると精神的にきついものがある。
悲しいかな、先ほどの私の仮説をズバリ立証してくれた。
「私達以外にもいるんですか?」
「いる。ただし何も教えてやれないがな」
どうりで私たちの存在に戸惑いがないわけだ。
人間というのは得体のしれないものに対して警戒や敵意が先にたつものだ。
こんな親切な訳がない。
正体が分かっていればこんな風にある程度寛容になれるのも納得だ。
「最後にひとつだけいいですか?」
あとひとつ絶対に聞くべき、でも一番聞きたくない質問をしなければいけない。
この時ばかりは私も少し声が震えた気がした。
「・・・ああ」
その返事の仕方で私たちが何が聞きたいのか、そして望む答えは返ってこないと感じた。
私が彼らと会話している間、一言も口を挟むことなく不安そうに聞いていた前嶋さんもそれを感じたのかつないでいる手に力がこもった。
「私達は元の世界に帰れますか」
風が吹いた。
「・・・残念だが、帰ることはできない」
やはり帰れないらしい。