魔法3
「……えぇっと、レイちゃんは、何の魔法が得意なんですか〜?」
幼女先生が困った様に笑いながらレイに問う。
「何の……ですか?」
レイはキョトンとした顔で問い返す。
「例えば、先生みたいに、身体強化だったりとか……皆に教えてくれると実技演習の時にパーティを組みやすいから、教えて欲しいなぁ〜なんて、えへへ……」
「あー。」
幼女先生がまた困った様に促すと、レイはやっと理解したかの様な声を出し、先生を真っ直ぐに見詰めた後、ニコッと笑い、
「全部です。」
続けて、
「私、天才みたいなんです。」
等と宣った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「何言ってんのこの子?!凍ったよ?空気が凍ったよ?!」
「可愛いじゃろう?」
「そういう問題じゃないよ!」
てか、『ゆ』って何だよ!気持ち悪いわ!
「気持ち悪いとは手厳しいのう。」
「勝手に心を読まないでよー!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そ、そ〜ですか〜……」
「そーなんです。」
2人だけを見れば、幼女と少女が微笑み合う、温かい光景。
周りの空気は凍っているが。
ん?……、てか、自己紹介、レイちゃんで最後だよね? 今まで男子の姿を見てないんだけど、ここ女子校なのかな……?
僕がそんな事を考えていた時だった。
「きゃああああああああ!!!!」
座っていた1人の生徒が叫び声を上げ、机に突っ伏した。
あの子は確か、遠方意思が得意な中学年の……、名前は、コハクだったっけ?
そうこう考えているうちに、レイは溜息混じりに話し始めた。
「遠方意思による過剰魔素の精神攻撃ですか……」
「ぐぅ……ぅ……」
「残念ながら、私は魔法反射を常時展開してるので、私に魔法でダメージを与えるのは中々難しいと思いますよ?」
「うるさいわね!!あんた、初学年のくせに生意気なのよ!」
「あわわわわわ……、レイちゃんにコハクちゃん、年度初め早々に喧嘩は辞めて下さいです!先生、困っちゃいますですよぉ……」
2人の喧嘩を止めようとする幼女、ペネーム。
「攻撃してきたのはあっちです、先生。」
「あんたが生意気なのがいけないんでしょ?!」
「あわわわわ……」
しかし、2人は止まらない。
「その生意気な私には貴方の魔法は届いてないですねー。もう少し頑張ったらどうですか?せ・ん・ぱ・い?」
「むっきゃぁあああ!!!」
レイの煽りが余程頭に来たのか、コハクは席を立ち、ズンズンとレイの前まで歩いてきた。
「なんですか?コハク先輩?」
「あんた、魔法反射っつったわよね?」
「はぁ、そうですが。」
「ちょっ!コハクちゃん!勝手に席を立たないで下さい!」
「あたしにはね、遠方意思よりも得意な魔法があんのよ。」
「へぇ、そうなんですか。」
「そうなのよ。謝るなら今の内よ?」
「2人とも落ち着いて下さい!もうやめて下さい!先生、いい加減に怒っちゃいますからね?!」
なんだよこれ、入学1日目で学級崩壊じゃないか……
「謝るわけないじゃないですか。」
レイがコハクにそう言い放つと同時に、コハクのシルエットが膨張しだした。
オレンジ色の少しうねった長い髪は短くなっていき、服は消滅と同時に体毛へと変わっていく。耳は上の方に移動してとんがり、鼻先が出てくる。
その姿を端的に表すのなら、化け猫であった。