早急に済ませるんだが?
この状況、明らかに普通じゃない。みんなが僕のことを好きだのなんだの言っている。しかも、こいつらの目を見たら明後日の方向向いちゃってるし。
もしかして、あのチョコが原因か?
あれになんらかの作用があったのだろう。ほらみろ、毒が入ってたじゃないか!
そして、何より最悪だったのがポケットに入っていたスマホが鳴り出したことだ。それを取り出し、中身を確認する。
(5分以内にこの部屋にいる誰か1人を自分から抱く:1000円)
ぶっ殺す!!くそ投資業界めえええええ!!
僕はスマホが潰れるくらい握り締め、顔が不動明王になっていた。
しかし、なんだよこの頭の悪そうな副業。
誰かを抱く?この中にいる4人のだれかをか!?
「うっ……」
上条か!
「うむ!」
ムキムキか!
「きゃっ!隆くんってば、そんな見ないでよ!」
山田か!
「な、なんだよ……馬鹿……」
伊集院か!
くそおおお!どうすればいいんだあああ!
僕は頭をむちゃくちゃ掻き回し、目を瞑る。
そもそも抱くってなんだ?一つは言葉通り抱きしめるということ。あるいはもう一つは――
待て!今で何分経った!?
部屋にある時計をすぐさま見つめる。約1分か。つまりあと4分以内。
落ち着け。
落ち着け東條隆。
……いや、落ち着いている暇はない!
残り約4分以内にだれかを抱かないと僕は殺される。
そんな状態で落ち着いていられるかよ!
こういうのは早急に済ませることが大事。距離的に今近いのはムキムキだ。
「ムキムキ!僕の胸に飛び込んでこい!」
僕は両手を広げ、覚悟を決めた。
もちろん、抱くというのがこっちの意味であればの話だが。
「い、いいんですか団長!だんちょおおおおおおお!!」
するとムキムキは助走をつけ、こちらに走りだし――
「え?ちょっと待て?ムキムキ?ムキムキ!?ムキムキいいいいい!!うはっ!?」
ドンとものすごい音が鳴り、僕はムキムキの下敷きになる。だが、僕も受け止めた。これで副業は達成だ!どうだ!
「……」
あれ?おかしい。条件はクリアしたはず!何がダメなんだ!?
僕はもう一度スマホの画面を見る。
5分以内にこの部屋にいる誰か1人を自分から抱く……5分以内にこの部屋にいる誰か1人を自分から抱く……5分以内に……誰かを……自分から……自分から!?
もしかして、自分から抱かなければならないのか!?
だが、今のでだいぶ背骨がやられた。ムキムキはボディビルダー並みに鍛え上げられている。そんな体が助走をつけて走り出したらどうなるよ。
骨が砕け散る!!
骨が痛む中、僕は立ち上がった。今度は自分から――
「ムキムキ、そこでじっとしとけ。僕が今からお前を僕直々抱きしめてやる!」
「だ、団長が!い、いや……そんな、恥ずかしくて……!すんませえええええん!!」
ムキムキは布団の中にくるまり、小刻みに震え始めた。こうなったら、ムキムキには悪いがこのまま――
僕は歩を進め、ムキムキのくるまっている布団に手をかけようとしたその時だった――
「隆くん!あたしというものがありながらどうしてムキムキくんを!酷いよ!」
バシッと思いっきり枕叩かれ、さっきの衝撃もあり、僕は倒れた。
それは、山田だった。
さらに山田は大きく枕を持ち上げ僕を何度も叩きつける。
「酷いよ!酷いよ!あたしとはただの遊びだったの!?あたしを班に入れたのは好きだからじゃなく!?」
「違えよ!!痛い!!痛い!!」
「なんで!?なんで違うのよおおおおお!!」
オネエとなった山田はさらに激しく枕で叩きつける。しかもこの枕、かなり質が悪く、めちゃくちゃ硬い。せっかく女子風呂まで覗いて生き残ったのに……どうして……
「うっ……」
バシッ!その時だった。長細い何かが山田の腰にあたり、山田は倒れた。




