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4つしかないんだが?

 女子風呂を覗き、叱られたあとは部屋に戻ることにした。いくら命令とはいえ、叱られるのは気分の良いものではないな。


「女子風呂を覗けたということで、祝福でい!」


 上条は一人笑顔で手をあげて、どこからともなく紙吹雪を上へと投げる。


「なにが祝福だよ。上条くんはあんな50歳の体を見て嬉しいの?」


「僕、オールラウンダーだからね!」


 上条は右手で親指を立て、ウインクをした。何歳でも受け付けてますってことか。そう考えるとこいつの平等に女性を愛するという言葉もただの御託を並べていたというわけではなさそうだな。

 またはただの馬鹿か。


「だが、俺は後悔はしていないぞ。恩を返しただけだからな」


 隅にいる伊集院は竹刀を拭きながら呟いた。

 力になってやりたかったのと、構ってくれたお礼ってことか。といっても、こいつは覗いていないがな。


「じゃあ、打ち上げってほどではないけど、パーっと宴をしようよ!」


 そういうと、上条はラップに包まれた黒色の艶のある正方形のものをポケットから4つ取り出した。


「上条さん、それは?」


「チョコだね。いやあ〜、さっき1日デート券を渡したらある生徒から貰っちゃってさー! みんなでどうぞって!」


 上条は笑顔で嬉しそうに語る。

 なんかあいつ一人だけ楽しそうだな。こっちはこんなに疲労してるっていうのに。

 僕に関しては命がかかってたわけだしな。


「ん?の割には4個しかないが」


「あれ? 隆にムキムキくんに山田くん伊集院に……あれ? 僕の分がない……?」


 上条は指を一本ずつ畳み数えるが、親指だけが止まった。そう、僕らは5人いてチョコは4個。1個足らないんだ。


「いや、お前にくれたんだからお前の分はあるだろ」


「あそっか。じゃあ――」


「どうせ僕だ! ここまで僕を(おとしい)れるなんて! しかも、糖分は僕の好物だぞ! 嫌がらせとしか思えない!」


 僕は立ち上がり、怒りをこみ上げるかのように拳を握り出した。

 本当に腹立たしい限りだ。リアル女はみんな僕のことを嫌ってるに違いない!その証拠がこのチョコだろ!


「いや、隆!?マイナス思考すぎ!?」


「大丈夫だよ……その1個ないの多分僕のだから……僕、影薄いし……」


「山田くんも!?――って、まあ特徴がないのが特徴の山田くんならありえるか……」


 上条は顎に手を当て、ふむふむと納得した感じで考えた。

 そこは否定しろよ、とも言ってやりたいが、同じく反論できない。なんせ、全てが平均の山田だからな。


「であれば、俺はいらぬ!上条さんたちで食べてくださいよ!」


 ゆっくりと立ち上がり、仁王立ちで腕を組んで立ち上がったのはムキムキだった。

 さすが男の中の男。することが違う。


「いや、いいよ!ムキムキくんが食べなよ!」


「俺は誰か一人が食べずに自分だけ良い思いをするのは嫌なんだ」


「え?でも――」


「そういうことなら、僕はいいよ。お前らで食べろ」


 少し目を逸らして僕は言った。

 別に僕はいらない。それは本当だ。なんてったって、拙者はシャルロットたんからしかチョコは貰わないでござるからな!


「え?でも隆、甘いもの好きなんじゃ――」


「見ず知らずのリアル女が作ったやつなんて食べたくもない。それに、毒でも入ってたらどうするんだ」


「毒は入ってないだろうけど、隆がそういうなら……お言葉に甘えちゃおうかな!」


「隆くん……!」


「団長……!」


「ふっ……」


 4人は納得した感じで上条の広げるチョコを手に取って口へと運んだ。

 食べろ食べろ。おまえらがそれで満足するなら、僕はそれでいいんだ。


 久々に人としていいことをしてみたくなっただ――


「隆、好きだあああああ!!」


「うおあ!!」


 立っている僕に勢いよくしがみついて飛びついてくる上条。こいつはまた。だからこいつとは班を組みたくなかったんだよ。


「お前!いい加減にしろ!」


「隆!いつになったら振り向いてくれるんだい!はぁ……!はぁ……!さあ……僕を抱くんだ!」


 上条はいつになく目がおかしなことになっていた。息も荒い。とはいえ、上に上条が重なってる状態はいろんな面でやばいな。


「やめ……ろ……!!」


 上条を蹴り突き飛ばし、壁にぶつかる。


「言ったはずだろ!もうこういうことはしないって!早速やってるじゃないか!伊集院も黙ってないでなんとか言ってやれよ」


 僕は伊集院の方向を向く。だが、伊集院は俯いたまま、目を閉じている。寝ているのか?


「俺は気づいたのさ」


 あ、寝てないやこいつ。


「恋愛とは脳が起こす一種のバグに過ぎないと俺は考えている。だからこそ、俺はそのバグと向き合う」


 ほーほー。


「俺もお前のことが好きだ!」


「はあああ!?」


 伊集院は目を大きく開いた。

 まじかよ。

 いや、まじかよじゃなくてそんなはずがない。こいつにそんな気は今までなかったと思――




「お前、よく見たらかっこいいな……」


 伊集院は頬を染めていった。




 いや待て、あったわ。

 そういえば、昼間こいつなんか言ってたわ。

 じゃなくてじゃなくて!明らかにおかしいだろ!なんだこいつら!さっきまで普通だったのに!


「俺も好きだあああああ!!」


「あたしも好きよ〜!」


「お前らもかよ!?てか、山田に関してはオネエになってるし!」


 今度はムキムキと山田までおかしくなった。ムキムキはいつもより感情がさらに激しくなり、山田はオネエになっていた。

 なんだこれ?何が起きてる?

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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなどおしたの〜∑(゜Д゜)⁈⁈! なにかが新たな開拓地を開いてしまった…⁇
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