苦痛を感じるんだが?
ちっ!
このタイミングでかよ!
他の連中はどうした!?
やられたのか!?
「てこずらせんじゃねえよ。あーしがお前をぶっ殺す!」
昇龍はこちらに向かって走り出した。
ていうか、なんだあの速度!?
反則だろ!?
その速さはまさにアスリート並み。
そうこう言っていたら、目の前にそのリアル女はいた。
「うはっ!!」
思いっきり横腹を蹴られ、床に倒れ込む。
そのまま顔を脚で踏まれ、身動きが取れなくなる。
「女を困らせる野郎はあーしが許さねえ!!おらおらおら!!」
「あっ……あっ……!!」
何度も何度も踏まれ、苦痛を感じる。
これがご褒美とかいう、今時の男たちの気持ちがよくわからない。
ただ痛いだけじゃないか。
いや、そんなことを考えている場合ではない。
早く覗きに行かないと……
みんなの思いは僕が背負ってるんだ……!
「あんた、どうしてそんなに覗きに拘る?」
拘っているわけではない。
僕はただ、命令に従っているだけだ。
「あんなにもキモオタなお前が、ロジカルファンタジー好きのお前がどうしてそんなにもリアルの女の風呂を覗こうとする!?」
だが、そんな考えとは裏腹に、一つのロマンという名の方式を思い浮かべていた。
「そんなもの……決まっているだろ……」
「あぁ?」
「男にはな……みなくちゃいけないときだってあるんだよ……!!僕を必要としているやつがいるからな……!!」
覗きなんかに興味はない。
だが、与えられた使命をこなして生きる。
たとえ、その道でしか生きられない命だとしても、僕は諦めない。
そう、あいつのためにだ……!!
「よく言ったぞ、東條!!ふうううあああああ!!」
その時、目の前には竹刀を持って走る意外な人物がいた。
「お前は……伊集院……!?」
「ふっ!!」
その竹刀を昇龍に振りかざす。
昇龍はひらりと避けたが、昇龍の脚は僕の顔から離れ、僕は身動きが取れるようになった。
隙を見て僕はそっと立ち上がる。
「伊集院……あんたまで……」
「勘違いするな。俺はこの馬鹿の力になってやるためにきた。あと、かまってくれたお礼さ」
相変わらず、不器用な礼だ。
素直に助けに来たって言えよ。
「ていうか、もう馬鹿って言わないんじゃなかったのか?」
「人を馬鹿にする馬鹿と友に言う馬鹿は違う」
なるほどな。
こいつにとっての友が僕というわけか。
まあ、素直じゃないのは僕も一緒かもな。
「俺は剣道6段を取っている。ここは俺に任せて先を行け」
「わかった……死ぬなよ……」
僕は背を向け、再び走り出した。
「逃がすか!」
「お前の相手は俺だ。ここは通行止めだ」
「くっ……!!」
後ろから声と竹刀を振りかざす音が聞こえる。おそらく、昇龍が僕に向かって走り出したが、伊集院は昇龍の目の前に竹刀を突き出し、行手を塞いだといったところだろう。
にしても剣道6段とは……
こいつが強い理由もわかった。
あとは頼んだぞ、伊集院――ッ!?
「ここは通さないよ、東條くん!」
「なっ……!?」
目の前には手を両手に広げ、道を塞ぐ熊倉の姿と不思議そうにこちらを見つめるもどきの姿。
ここさえ突破すれば女子風呂だっていうのに……!




