想いを無駄にしないんだが?
僕らは伊集院を除いた男子全員を引き連れて女子風呂の直線距離約50メートルまできた。
僕らはただひたすら走り、女子風呂まで距離を縮める。
その間に交わす言葉はなかった。
だが、そこには5人の人影が見えた。
教師が4人と昇龍がいた。
「君たち、そこまでだ!」
「くっ……!!」
僕らはベテラン教師の言葉で足を止める。
怯んでいるわけではない。
道を塞がれたからだ。
「あんたたち、ばっかじゃねえの!?グループラインなんかに送ったらこうなることぐらい想像できるじゃんか」
それをやったのは上条なんだがな。
とはいえ、チャンスはない。
もう僕はいろんな意味で取り返しのつかないところまで来ているんだ。
「いくぞ、山田!!」
「おう!!」
ムキムキと山田は昇龍たちに向かって走り出した。
だが、こちらは武器も何も持っていない。
このままじゃ、返り討ちに遭うだけだ。
「待て、お前ら!そのまま突っ込んでも意味がな――」
「昇龍さん。これは正当防衛だ。制裁を下してやりなさい」
まじかよ、あの教師。
目的のためなら生徒すら殴ってもいいってことかよ。
昇龍は右足を引き始めた。
「わかりました。うおおおおああああ!!」
表情が一瞬にして変わり、ものすごい奇声とともに回し蹴りを繰り出す。
その回し蹴りはものすごい風を巻き込み、疾風が吹く。
壁に飾られた額縁は揺れ、窓からすごい音が鳴るほどに。
僕は体制を整え、風に耐えるしかなかった。
「ぐわあああああ!!」
「うわあああああ!!」
ムキムキと山田は風により吹き飛ばされ、壁にぶつかる。
「ムキムキ!!山田!!」
あいつ、前よりも強くなってる……
どうする……
この一本道しか女子風呂に繋がる道はない。
そして、その一本道は奴らによって塞がっている。
何かいい案はないのか……
何か……
何か……
「うおおおおお!!」
すると、後ろにいた一人の男子生徒が突っ走っていき、隙をついて昇龍に抱きつき動きを止める。
「お前、何やってるんだ!?」
「東條は僕らの希望だ……!ここで諦めるな……!」
その生徒は僕に呼びかける。
必死に昇龍の左足にしがみつき、離れようとしなかった。
「僕が……希望……」
「洒落臭いんだよ!」
「うはっ!!」
生徒は昇龍の右足に思いっきり踏まれる。
あいつは僕のために戦ってくれた。
だったら、僕はそれにどう答える?
「あああああ!!」
「き、君たち何を……!!」
また一人、また一人と昇龍や教師を押さえ込む。
「俺たちがこいつらを押さえ込む!その隙にお前は女子風呂に行けえええええ!!」
そうだ、みんなは僕が巻き込んだようなもの。
だからこそ、僕がみんなの想いを届けなければ!
こうして、生き残った僕と上条は前へ進むことにした。
あいつらの犠牲は忘れない。
あいつらの犠牲があったからこそ、今の僕らがいる。
その後も何メートルも続く道のりを進んだ。
しかし、正面に見えたのは女子風呂ではなく、図体のでかい4人組だった。
「あれはなんだ?」
上条の顔を見て言ったが、その表情は凍りついていた。
「レスリング部だ……」
「まじかよ……!!」
レスリング部の2人は1人の足を片方ずつ持ち始める。
その1人は2人の手の上に乗る。
「構え!!」
手の空いている1人は構えと言って指揮のようなものを取る。
「おいおい。やばくねえか、これ……」
「突撃!」
「アイッサーーー!!」
そして、レスリング部の1人がこちらに向かって飛んでくる。
そう、あの2人はその1人を投げつけたのだ。
「なんか来たあああああ!!」
だんだんと距離が近づいてくる。
僕は後ろを振り向き、猛ダッシュで来た道を戻る。
だが、風はすぐさま僕らに追いつく。
「ねえ、なんかあの子、僕らっていうより隆目掛けて来てない!?」
隙を見て後ろを振り返った上条が言う。
「まっさかー!そんなわけな――いやああああああ!!」
後ろを向くと、そこには至近距離に飛ばされたレスリング部の1人がいた。
その距離わずか50センチ。
こいつ、僕に特攻する気か!?
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死――!!」
ドスンとものすごい音が鳴り、僕はレスリング部の下敷きとなった。
「隆!!」
「捕まえたわ!」
体重は約110キロといったところか。
てか、まずい……
呼吸ができない……
このままだと窒息死もあり得る。
副業達成の前に死が目の前に迫っていた。




