奈良に来たんだが?
1枚の鹿煎餅を持ち、奈良へやってきた隆一行。
ちなみに鹿煎餅とはその名のとおり、鹿が餌として食べるものらしい。
それ以上もそれ以下も説明は不要だな。
「うおおおおおお!!」
しばらく歩き、館内に入ると、目の前にはとてつもなくでかい大仏がいた。
頭には丸いぶつぶつがたくさんあり、右手を正面に構え、今にもエキサイドファイアを出しそうだ。
あ、ちなみに、エキサイドファイアとはロジカルファンタジーの魔法使いのジョブを獲得したものが使える上級魔法なのである。
後ろには輝かしいほどの小さな仏像たち。
この仏像たちも、大仏の仲間なのか?
「僕が思うに大仏の名前の由来はあの丸いぶつぶつがあるからなんだろうね」
上条が馬鹿な発言をする。
ようは、大仏の仏はぶつぶつのぶつって言いたいのか。
「こんなこと、中学生でもわかるぞ。まあいい。馬鹿に知識を植え付けるのが秀才の役目だから教えてやる」
相変わらずの対応だな、伊集院は。
上からというか、人を馬鹿にしているというか。
それに、わざわざこんなことを教えなくてもいいのに。
「大仏というのは仏と書くだろう。仏とは、悟りの最高の位、仏の悟りを開いた人を指す。だからぶつぶつのぶつじゃない」
「へえ〜。初めて知ったよ。じゃあ、僕も仏の悟りを開けば仏になれるのかな?」
本当に初めて知ったのかよ。
流石に冗談だよな。
「お前が仏になったら、この世はリアル女だらけになりそうだな」
さりげなく、ボケを入れる。
この色欲魔、リアル女のことしか頭にないからこいつならありえる。
まあ、拙者がもし仏になったときにはシャルロットたんを現実世界に転送させるでござるがな!
そしてそして、シャルロットたんとの幸せな同棲生活……
ムヒヒッ!
「あたぼうよ!!」
「はぁ……」
いや、そこは否定しろよ。
上条は親指を立ててウインクをした。
呆れてため息をつく。
あたぼうよって当たり前って意味だよな。
どこの方言だよ。
「ねえみんな。あっちに鹿さんがいるみたいだよ。行ってみようよ」
熊倉が僕らに呼びかける。
鹿か。
まあ、こんな大仏をじっと見ててもなにもならないしな。
とはいえ、伊集院はまだじっと大仏と目を合わせている。
こんなのを見てなにが面白いのだろうか。
やはり、秀才にしかわからないことがあるのか。
「いいねそれ!」
「皆さん、行きましょう!」
みんなも行く気満々だったため、鹿たちのいる方向に向かうことにした。
だが、伊集院はまだ大仏を見ている。
その瞳は何かを考えているように見えた。
「伊集院、行くぞ」
「黙れ。俺より馬鹿な虫けらが俺に指示をするな」
「……」
伊集院はこちらの方向を向き、歩き出した。
なんだよ、あの態度。
心配して損した。
とはいえ、さっきの目。
何かを悩んでいるやつの目をしていた。
いいさ、この僕がお前の仮面を剥いでやるよ。




