寝るんだが?
僕らはボロボロになって帰ってきた。
全身、あざだらけで体が痛む。
山田に関しては鼻血まで出して気絶していた。
なんとか生きて部屋まで戻ってきたは良いが……
僕らは部屋に入って早々、あまりの痛さに床に寝転がっていた。
「大丈夫? そんなにボロボロにやられて」
「お前らが来なかったせいだろうが!」
上条は僕の顔を覗いて言ってきた。
こいつらがいたら状況は変わっていたかもしれない。
ボコボコにされるくらいなら、無理に行くべきではなかったな。
「すみません……まさか、牡蠣を1個食べただけで腹にあたるとは……」
ムキムキは俯いて言った。
1個であたるものなのか……
本当に……運のないやつだ……
「いや、お前は悪くないよ。上条、お前だよ!子供じゃあるまいし、吐くまで食べるなよ!」
僕は体を起こし、上条に向かって言った。
「まさかあそこで国産Aランクの黒毛和牛のステーキが出てくるとは……てへっ!!」
うぜえ……
上条は舌を出してウインクをした。
こいつ、全く反省してないな。
「全く、馬鹿な連中だ。覗きなんてするからリンチにあうんだよ」
隅で読書をしている伊集院が口を挟む。
その間も視線は僕らではなく、本に向いていた。
人の目ぐらい見ろよ。
「今のは聞き捨てならないな!俺の仲間を馬鹿呼ばわりするやつは俺が許さんぞ――」
「そもそもの話だ。お前らみたいなやつが昇龍に勝てるわけがないだろう。じゃあ聞くが、お前らは昇龍に一度でも勝ったことあるのか?」
「それは……」
僕の口からはそれ以上の言葉は出なかった。
たしかに、前回の覗きの時も完全に勝てたわけではない。
怯ませたことはできたが、すぐに体力を回復し、僕らに再び襲いかかってきた。
あんな化け物に勝てるのか?
「僕は妃ちゃんの脚に息かけたよん」
そして、その足止めをしたのは上条だった。
足止めだけに。
こいつがいなければ確実に前回の副業は達成できなかっただろう。
やってることは変態だがな。
「くだらんな。もう寝るぞ」
伊集院は本を閉じて立ち上がり、電気を消した。
そして、一人布団に入る。
「あーちょっと!今から熱き枕投げバトルが繰り広げられるのに!いや、暗闇の中での枕投げ乱闘もありか……」
一人立ち上がる馬鹿。
どうせ電気を付けたら伊集院がうるさそうだしな。
ここは大人しく寝るか。
「馬鹿なこと言ってないで早く寝るぞ」
布団を被り、目を瞑る。
ムキムキも布団の中に入る。
山田に布団をかぶせたら鼻血がつくから被せれないし……
風邪をひかないことを祈ろう。
「ちょ、隆ノリ悪すぎ!ここはもっとぱあっと……はいはい、おやすみなさい……」
観念したのか、布団に潜る上条。
やっと静かになったか。
こうして僕らの京都での修学旅行は幕を閉じた。
この修学旅行、やはり純粋に楽しめるものではない。
覗きをしないと僕は死ぬ。
そして、チャンスは明日の宿泊の時。
今はもう、祈るしかない。
――寝よう……




