禁断の言葉を口にしてしまったんだが?
清水寺の散策を終えた僕らは旅館に着いた。
部屋のメンバーは元の班から女子を抜いたメンバーとなる。
館内は4階建で高級ホテルのようにとても綺麗で広々としていた。
そして僕らは今、自分たちの部屋の扉の前にいる。
少しドキドキしつつ、部屋の扉を開けた。
「うおおおおおお!!」
僕らは感動のあまり、大きな声で叫んだ。
部屋は和室でできており、木の床板の匂いが鼻を通っていく。
テレビは4インチ型!
予め用意されていた布団や枕はふかふか!
外から見える夜空の景色は美しい!
「ここ本当に僕らが使っていいの!?」
「お、おう……」
こんなすごいところに来るのは初めてで、言葉が出なかった。
とはいえ、今は6時。
7時にご飯が運ばれるとして、寝るまで何しろっていうんだ?
「イヤッホーーー!!」
「ウィーーーアーーー!!」
「うおあああああ!!」
上条、山田、ムキムキははしゃぎ始め、部屋で暴れ回る。
こいつらも子供だなあ。
だが、こんな雰囲気に流されることなく、一人読書を始める伊集院の姿があった。
切り替えはえ〜。
その後、トランプをしたり、テレビを観たりと修学旅行を満喫していた。
伊集院だけ輪に入れない、というか、輪に入らなかったのが少し気になったが……
だが、何かおかしい。
こんな平和でいいのか?
いや、平和ということに越したことはない。
今はとにかく楽しむんだ。
この修学旅行という名の青春を!
――そして、19時前にして遊び尽くしてしまった僕らがいた。
僕らはただただ円を作り、沈黙を続ける。
おいおい。
誰か喋れよ。
さっきまでのはしゃぎ具合はどうした。
「なあ、何か足らないと思わないか?」
最初に沈黙を破ったのは上条だった。
「何かって?」
「こんなの間違ってるよ!!刺激のない修学旅行なんかしててなにが楽しいんだよ!?」
さっきまでめちゃくちゃ楽しそうにしてただろうが上条くん。
「だからお前はなにが言いたいんだよ」
感情的になり、涙を流し始める上条。
あの時と同じだ。
あのリアル女どもの着替えを覗いた時と同じことを言って――言って?
なんか、嫌な予感が……
「女子風呂を覗きに行くぞーーー!!」
次の瞬間、ポケットに入っていたスマホが鳴り出した。
このタイミング……どう考えてもおかしい。
ポケットからスマホを取り出し、ロック画面を見る。
(修学旅行が終わるまでに女子風呂を覗く:3000円)
「あ、あ、あ、あ、あ……」
女子風呂を覗く……?
どうしていつもこうなるんだ。
またあの死闘を繰り広げろっていうのか。
ていうか、流石に今回のは犯罪だろ。
そして何より、引き金を引いたのは――
「副団長!本気ですか!?」
「上条くん!流石に今回はやめておいた方がいいよ!」
「いやいや、甘いよボーイたち。女の子たちは僕らに覗かれるのを待っているのさ――」
「てめえ、上条!!なんてことしてくれてんだゴラア!!」
僕は上条の胸ぐらを掴み、思いっきり揺すった。
こいつが言い出したことによってトリガーが引かれた。
言い出さなければこんな副業が来るはずがない。
「え!?なんか僕まずいこと言った!?覗きに行こうって言っただけじゃん!?」
「それが根本的にまずいって言ってんだろうが!!」
これだからなにも考えずに言う馬鹿は。
投資システムのことを知らないから仕方ないかもしれないが。
「団長!落ち着いて!」
「東條くんどうしちゃったの!?」
「はぁ……」
僕は上条の胸ぐらから手を離した。
始まってしまった副業はどうこう言ってても仕方ない。
やるしかないんだから。
「死ぬかと思った……はい!じゃあ覗きに行く人ー!」
上条が手をあげると同時に、僕は右腕をスッと上げた。
それは静寂であり、白鳥のように綺麗に伸びていた。
この時、東條隆はすでに覚悟を決めていた。
覗きに行くという覚悟を!




