3つの滝なんだが?
清水寺を降りて数分。
目の前に小さな3つの滝が見えた。
僕らはその正面に立ち、様子見をする。
「あれが音羽の滝だ。右から延命長寿、恋愛成就、学業成就となっている。先に言っておくが、全部飲むなよ」
伊集院は1つ1つの滝を指差して説明する。
本当に効果あるのかと心のどこかで思ったりもしてしまう。
まあ、飲まないよりかは飲んでおいた方がマシか。
正面の滝の奥には美沙がいた。
「お兄ちゃーん!私はやっぱり、お兄ちゃんと結ばれたいから恋愛成就を飲むことにするよー!」
「……」
美沙は僕にブンブンと手を振ったかと思うと、右手で銀の先の長いおけのようなものがついたもので真ん中の水を汲み始めた。
それを口に持っていき、一気に飲み干す。
なんか美味しそうだな。
「いえーい!!」
美沙は機嫌よくして階段を降りていった。
まあ、美沙のあれはどうせ冗談でやってることだ。
気にしないでおこう。
「俺らも並ぶぞ。まず、俺が見本を見せる」
僕らは階段を上り、3つの滝の後ろへ並ぶ。
しばらくして伊集院の番が来た。
伊集院は後ろにいる銅像に賽銭を入れる。
そのあとに右側にある柄杓を取った。
柄杓というのは伊集院曰く、銀の先の長いおけのことらしい。
学業成就の前に立ち、柄杓に水を入れそれを飲み干した。
そして柄杓を元の位置に戻した。
「次はお前らの番だ。やってみろ」
そう言うと伊集院は階段を降りた。
やり方はわかったが、こいつらはどれを飲むのだろうか。
他の奴らがなにを飲むか、少し気になるところがあった。
「じゃあ、先に飲まさせてもらうよ」
最初に前に出たのは上条だった。
どうせこいつは恋愛成就だろ。
日頃から女の子女の子言ってるし。
上条は賽銭を入れ、柄杓を取った。
だが、上条は意外なことに延命長寿を真剣な表情で飲んだ。
「恋愛成就はそのとなりだぞ。飲み間違えんなよ」
「失礼な!僕が選んだのは延命長寿だよ!」
こいつが延命長寿?
てっきり、恋愛成就かと思っていたが。
「お前、彼女が欲しいのかと思ってたからそっちを飲むのかと」
「やれやれ、君は僕のことをなにも知っちゃいないね。僕はこの世の女性を全員平等に愛するんだ。彼女なんていらないさ」
「はぁ……」
なんだこいつ。
でも、恋愛成就を飲まなかったということはそれだけの思いがあったということなんだろうな。
周りの女子大生たちは上条を見てキャーキャー騒がしくなるし。
「僕はまだ……死ぬわけにはいかないんだ」
「なんか言ったか?」
何か独り言を言った。
リアル女たちがうるさすぎてなにも聞き取れなかったが、上条の口が動いたことは確かだった。
「なーんにも!さあ、次はシャルロットちゃんの番だよ!」
捨て台詞を吐いて上条は階段を降りていった。
「私ですか!?わ、わかりました!」
上条の後ろに並んでいたもどきは戸惑いつつも前に出て賽銭を入れ、柄杓を取った。
こいつはなにを飲――
「って、なんでお前は恋愛成就飲んでんの!?」
もどきは真ん中の恋愛成就のところに水を汲み始めた。
「わ、私も、隆さんのことが好きだからに決まってるじゃないですか!!」
「なっ……!?」
もどきは顔を赤くして一気に水を飲み干した。
その一言だけ言って、足早に階段を降りていった。
僕のことが好きだと……!!
焦るな僕……!
もどきは確かに顔はいい方だ。
だが、所詮はリアル女。
そして僕はシャルロットたんを愛すると誓った身!
「東條くんはなにを飲むの……」
「団長?」
「ムヒッ!ムヒヒヒヒヒッ!ムッヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
次は拙者の番!
拙者が飲む水……
そんなもの、選ぶまでもないわ!
拙者は左手を目に手を当て、右手で美しく賽銭を入れる!
そして、可憐に柄杓を引き抜く!
「チェックメイトでござる……!」
恋愛成就に水を汲み、それを口に持っていき一気に飲み干した。
なぜ拙者が恋愛成就を飲んだのか……そんなの、言うまでもないだろう……
「これで……これで拙者はシャルロットたんとより結ばれる運命となった!シャルロットたんは他の誰でもない拙者の妻だあああ!ムッヒヒヒヒヒヒ!!」
その場で大きく手を広げ、大声で愛を叫んだ。
ありがとう、京都。
ありがとう、音羽の滝。
ありがとう、恋愛成就。
拙者は今、この滝に全身全霊をかけて感謝しているでござる!
生きててよかったーーー!!
「気持ち悪いブラコンだな」
「ま、まあ、あれが隆さんですから」




