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お土産を買うんだが?

「遅いぞ、お前ら」


 バスを降りたと同時に眼鏡を人差し指で持ち上げ、挑発的に言う奴がいた。

 すげえこいつ、僕のこと睨んでるんだけど。

 他のメンバーもちゃんといた。


「そりゃ、悪かったな。じゃあ最初はどこを回る?」


 うちらの学校はバスを降りてから3時間は自由行動がある。

 もちろん、班で固まって行動だが。


「とりあえず、清水寺を目指そうよ。その道中にある、二寧坂(にねいさか)産寧坂(さんねいざか)、清水坂でお土産を買う感じでいいんじゃないかな」


 しおりの地図を見ながら山田は言った。

 プランとしてはいい案だ。

 こいつ、結構役に立たな。


「お、いいね〜」


「よし、それでいこう」


 こうして僕らは清水寺に向かって足を進めたのであった。




 京都の魅力……それはなんと言っても歴史を感じる街並みや寺社の数々。

 京都で美味しいものといえばやはり八橋。

 あのもちもち具合がたまらなく、色々な種類があって飽きない味。


 そして舞妓。

 芸妓になるための見習い段階の人たちのことを舞妓と呼ぶらしい。

 とはいえ、拙者も拙者。

 リアル女の舞妓の格好なんざには興味はない。

 ただ、舞妓を見るとシャルロットたんがあの服を着たらどんなトキメキを僕にくれるのか……それを想像するだけで拙者はドキドキがたまらないでござるよ!


 ムヒヒッ!


 まあ、妄想トークはこの辺にしておいて僕はあたりを見渡すことにした。

 どこを見ても京都ならではの商店街が多く、石でできた上り坂は風情を感じる。


「ねえ、ここ入ってみない?」


 上条は右側にある店を指差した。

 特に反対する奴もいなく、その店に入ることにした。


 店の中は色々あった。

 八橋だのストラップだのソフトクリームだの。

 皆、各々(おのおの)に気になるものを手に取り、それを見つめる。


「見ろよ山田!この猫ちゃんのストラップ、ダンベルに付けたら可愛くなりそうだぜ!」


「うわあ!可愛い!僕も買おうかなあ!」


 ムキムキは茶色の猫のストラップを手に取り、ニコニコしていた。

 ダンベルは流石にやめとけ。

 カチャカチャうるさいぞ。

 あとギャップよギャップ。


「隆!見てよこれ!あの人気グラビアアイドルの着物写真集だって!これはもう買うしかないでしょ!」


 上条は20代ぐらいのリアル女の着物姿の写真集を手に取っていた。

 なにがもうだよ。

 こいつどういう神経してんだよ。


「お前はそんなんばっかだな」


「店員さーん!これくださーい!」


 上条はレジに並び、その写真集を持っていった。

 本当に持ってきやがったよこのバカ。


「はーい。2500円ねー」


「え……?」


値段を聞いた上条は目が点になっていた。


「はぁ……ん?もどき……?」


 もどきは何か2つの箱のようなものを両手に取って目を泳がせていた。

 僕はもどきに近づいた。


「あ、隆さん。お母様ってこの苺の八橋かチョコの八橋。どちらがお好きなのでしょうか?」


 なんだ、そんなことで悩んでたのか。

 それなら僕を呼べばいいのに。


「母さんは苺だ。むしろ、チョコは嫌いらしいからな」


「そうなんですか!?危うくチョコの方を買うところでした!」


 もどきがうちに来て1ヶ月半か。

 こいつとも色々あったな。

 なんか、もっと長いこと一緒にいる気分だ。

 まだ、母さんの好みを知らないぐらいだが、それはこれから補っていけばいい話だ。


 そんなことを考えているともどきは顔を(うつむ)かせた。


「私がお母様に買ってあげても迷惑じゃないでしょうか?」


「なんでだよ」


「だって私、お母様の本当の子供でもないのに……」


 こいつもこいつなりに悩むことがあるんだな。

 それが養子として育てられたやつの悩みか。

 だが、母さんはもどきのことを(した)っていて頼りにしている。

 母さんはそんなやつじゃない。


「馬鹿野郎。うちに来たときからお前はもう母さんの子供であり、僕の妹だ。買ってやって喜ばしてやれ。僕が許可する」


 まったく、店の中で僕はなにを言っているんだか。

 だが、僕は嘘はついていない。

 まだ感覚としては慣れない部分はあるが、どこかでこいつのことを妹だと思っている部分もあるのかもな。


「……はい!!」


 もどきは笑顔で大きな声で返事をしてレジに並んだ。

 これで見た感じあいつの中の(わだか)りも消えてよかった。

 しょうがない。

 僕も母さんに何か買ってやるか――って、ん?


「伊集院くんは何か買わないの?」


「俺はいい。母さんも父さんも甘いものが嫌いでな。どうせこんな店、甘いものが多いんだろ」


 店の外を見ると、すでに買い物を終えた熊倉となにも持っていない伊集院がいた。

 伊集院はお土産を買わない気か?


「じゃあ、うちが選んであげるよ。甘くなければいいんだよね」


「おい、待て!」


 熊倉は伊集院の手を引き、店の中へ入っていった。

 若干、伊集院も困ってるように見えなくもないが。

 熊倉も伊集院を入れたことに責任を感じているということか。

 このままなにも起きなければいいんだがな。

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