舐めまわしたいんだが?
「隆さん、起きてください!」
あれ……
空からシャルロットたんの声が聞こえる……
下を見るとピンク色の雲に乗っていた。
「シャルロットたん……!?拙者だ!東條隆でござる!」
「寝言はいいですから。もう着きましたよ」
着いた?
着いたってもしかして、ロジカルファンタジーの世界に!?
とうとう拙者、ロジカルファンタジーの世界に来ることができたでござるか!
そしてこのピンク色の雲、見たことがある!
これは……ロジカルファンタジーの中にあるコットンクラウディでござる!
コットンクラウディとは綿菓子のようにふんわりとしていて、甘い味と香りがする雲なのである!
コットンクラウディを見たら一度やってみたいことがあったでござる!
それを今から試すべし!
僕はしゃがみ、コットンクラウディに顔を埋めた。
「うおーーー!!やっぱり、本物のコットンクラウディでござる!!」
この味!!
この香り!!
まさしく、本物のコットンクラウディだ!!
「隆さん、なにしてるんですか!?」
「んー!!もっと味わいたいから拙者は舐めるでござるよ!!れろれろれろれろ……」
僕はコットンクラウディを舐め回す。
あれ?
なんかこのコットンクラウディざらざらしてないか?
まあ、これはこれで素晴らしい!
は!!
拙者はあることを気づいてしまった!
この発見をリアルに戻ったときにネットのスレに書けば反響がヤバみでござる!
ロジカルファンタジーのコットンクラウディ、実はざらざらか!?
ってな!!
「邪魔だ。どけ、キモオタ」
あれ?
この声は伊集院?
なんで伊集院の声が聞こえるんだ?
「うわあ!!」
見えない何かが僕の体を蹴り飛ばす。
その衝撃でコットンクラウディから落とされる。
「ああ!!拙者のコットンクラウディが!!あああああ!!」
すごいスピードで急降下する。
まずい、このままでは地上にいるロジカルファンタジーの住民に迷惑がかかってしまうではないか!
いや、落ち着け拙者!
今いるのはロジカルファンタジー。
ということは、今の僕は飛べる!?
僕は両腕を広げ、呪文を唱える。
「飛べ!フライングスカ――痛!!」
目を覚ますと僕はバスの床で頭をぶつけていた。
「椅子舐めるとか、お前頭沸いてんじゃねえのか?」
伊集院は捨て台詞を吐いてバスの扉に向かった。
「え?椅子?」
僕は体を起き上がり、自分の座っていた椅子を見つめる。
椅子を見るとめちゃくちゃ濡れていた。
「うわあ!?なんでこんなに椅子が濡れてるんだ!?」
「隆さんが舐めまわしてたんじゃないですか!」
「僕!?」
椅子を舐めた覚えなんてない。
僕は2時間ぐらい寝てたし、そんな舐める暇なんてない。
第一、僕がそんな汚い真似をするわけがない。
全く、おかしなことを言うやつらだ。
「東條くん、目を瞑りながら、椅子から立ち上がって、椅子に顔を埋めて顔を擦り付けたり、椅子を舐めてたよ」
「……」
熊倉は顔を赤らめて説明する。
僕の口からはなにも言葉が出なかった。
そんなことをしている自分に失望していたからだ。
「あのね……椅子を舐めたい気持ちはうちにはわからないけど、みんなが座るからばっちいし、次に座る人が困っちゃうからダメだよ?」
ど正論を言われる。
っていうか、これじゃあ僕が悪いみたいじゃないか!
「やめて!!僕の新たなる黒歴史をさらに黒く染めないで!!」
僕は大声で叫んだ。
まったく、恥ずかしいことをしてしまった。
だが、今思えば夢の中で聞いたシャルロットたんの声ともどきの声が全く同じように聞こえた。
シャルロットたんの夫である僕が聞き間違えるわけがない。
世の中、不思議なこともあるもんだな。




