7人目のメンバーなんだが?
さっき伊集院はこの女に対して自分を優先させろと言った。
そんなやつを班にまだ加えようとしている。
僕なら到底できないな。
というか、それが普通だ。
「あのなあ、お前はいいかもしれないが、さっきも見てたと思うが僕らに対して凄い暴言を吐いてただろ。そんなやつを入れることなんてできない」
「そ、それは……」
熊倉は困惑していた。
それ以上の反論を言おうともしない。
ただの自業自得だとわかってくれれば助かるんだが。
「なにより、7人班を作るのは無理だ。だから諦め――って、熊倉?」
繋いだ手に熊倉の手はなかった。
足音が聞こえる。
その方向を向くと、熊倉がいた。
熊倉はスタスタと担任のいる方へ向かう。
そして、担任の前で止まった。
「先生、7人班にしてもらうことって可能でしょうか?」
「なっ……!?」
まさかあいつ、伊集院を入れようとしてるんじゃないだろうな。
うちらの班は熊倉を合わせて6人。
もう1人加えるとしたら伊集院しかいない。
「それは無理だ。作れたとしても6人班まで。最初にそう言ったはずだ」
担任は正論をかました。
「でも、伊集院くんは性格はちょっと悪いですが、素直になれないだけだと思うんです!」
言うね〜、熊倉さん。
あいつの性格の悪さはちょっとどころじゃない。
にしても素直ね〜。
たしかに、普通かまってなんて言わないよな。
入りたいなら最初から入りたいって言えばいいのにな。
「伊集院くんは東條くんたちの班に入りたいんです!ひとりぼっちだなんて可哀想じゃないですか!」
言うね〜!熊倉さん。
あいつにひとりぼっちと言うのはなんだか地雷な気がする。
これには英才の伊集院くんも――
「お、俺が……ひとり……ぼっち……」
伊集院の方を向くと案の定、メンタルブレイクしていた。
やつにもやつなりのプライドがあるからな。
「東條くんたちも私のワガママを言ってすみません!けどうちは、クラスメイトを切り捨ててまでこの修学旅行を楽しみたくないんです!」
熊倉の意見も一理ある。
とはいえ、伊集院がグループの仲を裂いたらそれはそれで本末転倒。
つまり、僕の意見も一理あるというわけだ。
一概にどちらが正しいとはいえない。
周りも熊倉が言うなら入れてやれみたいな目をしてやがる。
じゃあお前らが入れろよ。
「まあ、今回は7人班でいいとしましょう」
「ありがとうございます!」
いや、いいのかよ7人班。
担任は了承をした。
熊倉は7人班になれたことがとても嬉しかったのか、笑顔でこちらを振り向いて歩き出した。
そして、熊倉の歩き出した先には――
「伊集院くん!行こっか!」
熊倉は両手で伊集院の手を握る。
「お、おう……」
伊集院はなぜかぎこちない返事をして顔を染めた。
熊倉は片手を離し、こちらに歩いてくる。
その間、他の男たちの目線が半端なく怖くて――
「ぐぬぬっ!伊集院高良!ふわりちゃんの手を握りやがって!」
横に座っていた上条は歯を食いしばり、拳を握って悔しそうにしていた。
「お前もかよ」
正面から二人が歩いてくる。
すると、意外なことに伊集院は僕に右手を差し出してきた。
「よろしくしてやろう。キモオタ東條隆くん」
やっぱりそういうやつか。
伊集院は笑顔で右手を差し出して僕を罵倒した。
少しでも期待していた僕が馬鹿だったよ。
てか殴りたい、この笑顔。
「ああ!よろしく、クソメガネ!」
僕も笑顔で左手を差し出して握手をした。
すごい力で握ってやろうと思って差し出した手だったが、相手も僕と同じ気持ちだった。
これ、下手したら指の関節折れるぞ。
「やだなあ、隆くん。笑顔が少し怖いよ〜」
「なにを言っているのかな、伊集院くん。僕はいつもこんな感じじゃないか〜」
お互い、煽り合いが続く。
他のやつらの目線が痛い。
力の加減も徐々に強くなっていく。
それに対して、僕も力を増す。
「あっははははは!!あっははははは!!あっははははは!!」
「あっははははは!!あっははははは!!あっははははは!!」
こうして僕らの班は伊集院を加えた7人班となった。
伊集院を本当に加えてもよかったのだろうか。
とはいえ、どいつもこいつも個性的な奴らで騒がしくなりそうだ。
それに、今回の修学旅行。
投資議会がなにもしないはずがない。
何か嫌な予感がする。
――家に着くまでに死んでたりしてな。




