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伊集院高良の憂鬱なんだが?

「なんだ、あの男?」


 男はロッカーから一歩も動かず、ただ目を(つむ)り、ニヤニヤと笑っていた。

 きみが悪いな。


伊集院高良(いしゅういんたくる)。学年トップは当たり前。全国模試で4位を取るほどの秀才。ただ、あまりのひねくれた性格に誰も近づかないとか……」


 上条がまた紹介をしてくれる。

 名前からして頭良さそうだな。

 全国模試4位がうちのクラスにいたこともびっくりだが、どれだけ性格が曲がっているのかが気になる。

 そして上条はどこからその情報を手に入れたんだよ。


 周りの視線は一気に伊集院に向かう。

 明らかにこいつやばいやつだ。

 僕が言えたことじゃないが。


 すると、伊集院は目を開いた。

 伊集院はこちらを向き、僕と目が合う。

 伊集院の表情は一瞬にして真顔に変わった。

 やべえ、目があっちまった。

 その目は鋭く、まさに眼光。


「おい、キモオタと不愉快な仲間たち。頭悪いのが寄り集まって何こちらを見ている」


 伊集院はきつい口調で言った。

 あ、こいつ性格が悪いって確信したわ。

 それに黙っているうちらのメンバーでもなく……


「なんだと!?俺が頭が悪いのはともかく、こいつらを馬鹿にするのは許さねえぞ!!」


 ムキムキが一人立ち上がり、反論をした。

 こいつ、どんだけ熱い男なんだよ……

 泣けるじゃねえか……

 僕は目を擦り、涙を流した。


「そうだそうだ!早漏なのは僕だけで十分だ!」


「お前は何を言っているんだ?」


 上条が訳の分からないことを言って割り込んでくる。

 誰もそんな話してないだろ。

 ていうか、上条って早漏だったのか。


「やはり馬鹿の集まりじゃないか。そんなお前らにいい知らせだ。俺に構っていいぞ」


 その言葉にクラス中が唖然(あぜん)とした。

 今こいつ、なんて言った?

 すげえ馬鹿な発言したよな。

 まあいい、ここは僕が聞き出してやる。

 もしかしたらこいつと話せばまたさっきみたいな失言をするかもしれない。

 僕は立ち上った。


「お前、今失言しただろ。もう一度言ってみろよ。俺になんだって?よく聞こえなかったなあ〜?」


「ちょ、隆さん!」


 挑発的に伊集院に向かって言いつける。

 さっき、僕のことをキモオタと言った罰だ。

 もう一度同じことを言って恥を知れ。

 そんな僕を小さな声でもどきは止めた。

 周りは僕に注目をしているが、そんなことは気にしない。


「俺の今の発言に対してどこが失言だと感じた?俺に構っていいぞと言ったんだ」


 今の発言は失言ではない?

 今、本気でこいつ構っていいぞと言ったのか?

 いや、まさかな。


「これは暗号文のようなものであり、平文に直してみろ。俺をお前の班に入れろと言っているんだ」


 あ、こいつ馬鹿だ。

 暗号文や平文はプログラミング用語であり、それをこいつはわかりやすいように言ったんだろうが。

 学力面では優秀だが班に入れろとかストレートに言えばいいだろ。

 まあ、僕の意見はもう決まっていた。


「入れろだと?協調性もなく、人を馬鹿にすることしか自分を表現できない馬鹿を僕が入れると思うか?何よりお前は、僕をキモオタと言ったからな」


 当然の対応だ。

 こいつを班に入れたら絶対に揉める。

 せっかく、まだマシな4人を入れたというのに……

 すると、伊集院の目が変わった。

 目はさっきと同じで鋭い目をしていたが、血走ってこちらを見ていた。


「俺が馬鹿にすることでしか自分を表現できない……だと……?」


 伊集院は目を震わせながら言う。

 その言葉にはどこか怒りが混じっていた。


「俺は学力で自分を表現できているからいいんだよ!協調性がなくて何が悪い!?協力なんて言葉は俺には似合わないな!」


「それがよくないって言ってるんだよ!このクソメガネ!協調性がないとこれからの社会生きていくのが困るから言ってやってんだよ!」


 僕も大声を出して反論をする。

 まあ、僕に協調性があるかと言われたら悩むところはあるが……

 だが、こいつよりかはあるだろう。


「元引きこもりだけには言われたくないな!大体お前は、1年生の後半からシャルロットたんシャルロットたん言ってて気持ち悪いんだよ!」


 この野郎……

 とうとう地雷を踏みやがったな……

 僕はさらに声のボリュームを上げ、伊集院に近づく。

 シャルロットたんの名前を簡単に出すんじゃねえ!


「シャルロットたんを気持ち悪いほど愛して何が悪い!それだけ人を愛せるということは素晴らしいことじゃないか!」


「隆さん!落ち着いて!」


「いけー!隆ー!もっとやれー!」


 止めるものもいれば、僕の背中を押すものもいた。

 だが、僕はこいつを徹底的に潰すまで負けるわけにはいかない。

 僕のシャルロットたんへの愛を馬鹿にした罪を理解するまでは!

 ということで反論させてもらうぞ!


「喧嘩はやめてください!!」


 突然、教室中にリアル女の声が聞こえる。

 僕は声のする方向を向いた。

 そのリアル女はロッカーのそばで視界に入りづらいところにいた。

 セミロングで茶髪のリアル女。


 ていうかなんであのリアル女――まだ座ってないんだよ。

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