Fカップなんだが?
今日は待ちにも待っていない修学旅行の日。
修学旅行といえば、学生生活の醍醐味であり、青春の一つ。
うちの学校が行くのは京都奈良。
2泊3日とか言ってたな。
まあ、唯一の修学旅行の楽しみといえばバスの中だ。
座席を倒せられるうえにうちの学校はバスの中でもスマホ触り放題。
つまり、ロジカルファンタジーがやり放題!
僕はスマホを起動させ、ロジカルファンタジーのアプリをタップする。
そして、タイトル画面イッコオオオル、ロジカルファンタジーへの扉が開かれるというわけさ!
ムヒヒッ!
この間にいつか戻って来るシャルロットたんを驚かせるために素材集めをするでござるよ〜!
画面内は透明なアバターを動かしているが、シャルロットたんが戻ったときには透明なアバターが上書きされてシャルロットたんになる!
その時がシャルロットたんがロジカルファンタジーに帰ってきたときの証明!
「ムヒヒッ!ムヒヒヒヒッ!」
おっと、ボスのレイドラゴンが来たでござる!
ここは攻撃に特化したフル装備で滅多刺しでござる!
僕は上へスライドさせ、自分のアバターを移動させる。
ふっ!
この一撃で決めてやる!
アンリミテッド――
「隆〜!見てこのグラビアアイドル!おっぱいでかいし、谷間まであって凄くない!?」
僕の目の前にはなぜかグラビアアイドルの水着の写真があった。
何だこのリアル女。
こんな肌を晒して恥を知――
「って、上条邪魔だ!今、アンリミテッドプリズンバーストがもうすぐで決まるところなんだよ!」
差し出された手を見ると隣に座っている上条の手だった。
上条は僕のスマホの上でグラビア雑誌を振る。
僕はスマホを持ち上げたが、上条はグラビア雑誌を上から被せてくる。
まずい、このままではアンリミテッドプリズンバーストが……!!
「ねえ、この子のおっぱい何カップだと思う!?Eかな!?Fかな!?」
「知るか!そこをどけ!」
よし、正面には誰もいない。
僕の席は一番後ろで真ん中の席。
僕は上条から雑誌を左手で取り上げ、正面に思いっきり投げつけた。
「Fカップーーーーー!!」
訳のわからないことを上条は叫んだ。
だがこれで操作に集中できる。
さあ、レイドラゴン!
ここで僕が決め――
僕の繰り出した必殺、アンリミテッドプリズンバーストは外れていた。
「アンリミテッドプリズンバーストーーーーー!!」
まずい、この技は非常に強力。
だが、その反動で10秒間動くことができない。
レイドラゴンが僕の方に近づいてくる。
レイドラゴンは口を開き、僕は火炎放射に飲み込まれた。
「あああああああああああああああっ!!」
「僕のFカップがあああああああああっ!!」
なんてことだ……
これはロジカルファンタジートップオブトップのこの僕にはあってはいけない失態……
この僕がレイドラゴンを倒せないなんて……
僕はこれからもロジカルファンタジートップオブトップに君臨しなければいけない存在だというのに……
「うるさいぞ。東條、上条。俺の読書を邪魔しないでくれるか。イライラする」
上条の隣に座っていた伊集院が本を持ちながら貧乏ゆすりをしていた。
何だこのクソメガネ。
「おい、伊集院!なんだ、団長にその口の聞き方は!?」
ムキムキが伊集院に向かって怒り出す。
こいつ、本当にいい奴だな。
こいつだけはうちの班に加えてもいいと心から思った男だ。
「なんだ、筋肉ゴリラ。そんなにうざいなら自慢の筋肉パワーで俺を殴ってみろよ。おいどうした?」
「なんだと!調子に乗るのもいい加減にしろよ!」
あーあ、大変なことになったな。
伊集院は本当に腹の立つやつだ。
こいつの口調はどうにかならないものだろうか。
ムキムキも庇ってくれるのはありがたいんだが、声がでかいんだよな。
って、僕の言えたことじゃないんが。
「まあまあ、落ち着いて……」
二人の言い合いを収めようとする山田。
こいつもこいつで友人のムキムキのことを思ってるんだろうが、大変だな。
山田の言葉によって伊集院は不貞腐った態度を取る。
「東條くん、上条くん、他の人の迷惑になっちゃうかも知れないからもう少し静かにしよ。ね?」
「はーい!」
僕の隣の隣にいた熊倉にまで言われた。
上条はいい返事をするのがまた腹立たしい。
いや、僕悪くないし。
何で僕が言われなきゃならないんだよ。
「っていうか、何で僕がお前らと班組んでるんだよ!僕は誰とも班を組まないと言ったはずだぞ!」
この7人班でこの3日間やってけってか?
ふざけんじゃない。
まず、伊集院がいる時点で問題しか起きないだろ。
「忘れたんですか?隆さんがこの班でもういいって言ったんじゃないですか」
隣にいたもどきが口を開く。
僕がもういいって言った?
まっさかー、この僕がいうわけがない。
僕は頭をフル回転して昨日の出来事を思い出すことにした。




