ウィンウィンなんだが?
「私は……明日、何がなんでも流星群を見なきゃいけないの……」
約束通り、朝9時に少女の病室の前に来た。
ふと、扉の横に書いてあるネームプレートを見つめる。
黒崎ひまり……これが、あいつの名前か。
僕は扉を開けた。
そこには、ベッドでリラックスして外の窓を見ている黒崎がいた。
少女は僕が来たことに気がつき、こちらを見る。
「あ、お兄さん!来てくれたんだ!」
少女は僕を見た途端に、ニコニコと笑う。
だけどなんだろう。
さっきまでの窓を見ていたときの表情。
どこか、寂しい顔をしていた。
「当たり前だ。僕を誰だと思ってる」
「ロリコン?」
「なんでそうなるかね……」
少女は首を傾げて言った。
きっと、本物の妹ができたらこんな感じなのだろうか。
一日でいいから、もどきと交換して欲しいものだ。
「それに、朝9時からだなんて……お兄さん、そんなに私に会いたかったのー?」
「そんなんじゃない。僕が来なければ一人の時間が長くなってしまうから退屈するだろ」
まあ、会いたかったという気持ちが芽生えた可能性もなきにしもあらずというのは秘密だ。
僕も人間だ。
楽しみの一つや二つ、あったっておかしくないだろ。
「またまた〜!本当は私に会いたかったんでしょ〜!まあ、そういうことにしておいてあげる!ところで、彼女さんと幼なじみさんは?」
黒崎はジト目で僕のことをからかう。
なんか、無理やり納得された感があるな……
まあ、小さい子の考えることだ。
って、また彼女って――
「彼女さんじゃない。居候リアル女だ。あいつらなら、もう少しで来るぞ」
「じゃあ、それまで私と二人っきりだね。あ、そういえば自己紹介してなかったね。私の名前は――」
「黒崎ひまり、だろ? さっきネームプレートで見た」
黒崎ひまり……か。
よくよく考えれば、いい名前してるじゃんか。
隆なんて、古臭すぎる名前だろ。
「僕の名前は東條隆。ロジカルファンタジートップオブプレイヤーだ。あと、昨日も言ったがシャルロットたんの夫でもある」
「お兄さん、何歳?」
黒崎は僕に年齢を尋ねる。
何で突然そんなことを聞くんだ?
子供の考えることはわからんな。
「17だが」
「私は11だけど、11の私から見てもお兄さん結構重症だよ。そのロジなんとかってニ次元でしょ? 二次元に恋してないで、現実の恋をしないと」
重症ということは自覚している。
というか、重症ではない。
重症を通り越した存在……
そう――
「重症なんかじゃない!拙者は末期だ!よく二次元は現実の理想郷とまで言われているが、そこに恋をしたっていいと拙者は思うでござるな!」
黒崎はそれなりに真面目に聞いてくれている。
僕なんかのくだらない話に付き合ってくれるなんて、こいつも結構優しいんだな。
よかろう、全人類のロミオとジュリエットども!
今から拙者がいいことを言うからよーく聞けよ!
「いいか、男と男!女と女!歳の差!血の繋がりのあるもの同士!そして、違う生命体同士の恋!それがあるなら、二次元の恋だってあると拙者は思うでござるよ!」
「くすっ!最後の違う生命体同士の恋ってさすがに極論すぎるよ!でもお兄さん、やっぱり面白い!」
いや、僕は真面目に愛を語っただけだが。
まあいい。
僕の言葉でこいつが笑顔になってくれるのならば、何度だって笑わかせてやる。
「ていうかお前、ロジカルファンタジーを知らないのか!?」
「知らないよ、そんなもん。私、あんまりゲームやらないし」
なん……だと……
まさか、ロジカルファンタジーを知らない人がこの世にいるだなんて……
ぷらねっと神の声が聞こえてくる……
わかりました!
拙者に任せてください!
心のなかでぷらねっと神と会話をする。
これは、ロジカルファンタジートップオブプレイヤーの拙者に与えられた使命!
拙者にしかできない使命!
「よかろう。ならば、拙者が手取り足取り教えてやろう。まず、ロジカルファンタジーとは、今世界で一番人気の本格オンライン育成RPGゲームなんだ!」
「え!?世界で一番!?」
黒崎は目を丸くして驚いていた。
いやいや、女子よ!
まだまだ驚くのは早いでござるよ!
ここからが本番!
さあ、拙者がロジカルファンタジーの世界へ誘ってあげるでござる!
「驚くのはまだ早いでござるよ!なんと、プレイヤーは3000億通りもあるパーツから自分の思い描くオリジナルのキャラクターを作ることができるのだ!」
「じゃあじゃあ、私が考えたキャラクターもそのまま作れるの!?」
「99.98%、全く同じキャラクターが作れるでござるよ!そしてそこで僕は今の妻である、シャルロットたんを生み出したのだ!」
ロジカルファンタジーは無料で遊べる上に、自分の考えているキャラクターとほぼ同じものが作れる!
まさしく、最強のゲーム!!
さあ君も、ロジカルファンタジーを始めよう!
「すごい!じゃあ、そのシャルロットたんとはいままでどんな冒険をしてきたの!?」
「いい質問でござる!じゃあ次は、拙者とシャルロットたんとの冒険物語を語ろう!とはいえ、最初は苦難も多かった。スライムすら倒せないときもあった。だが、そんな時に――」
それから僕は、黒崎にシャルロットたんのことについて何時間と語っていた。
黒崎は嫌がることもなく、むしろ興味本位で聞いてくれた。
僕の話をいままでこんなにも聴いてくれた人間は他にいなかった。
「隆さん、買い出しに遅れてしまって――って、何してるんですか……」
「シャルロットたん、万歳!!シャルロットたん、万歳!!シャルロットたん、万歳!!さあ、黒崎も一緒に!!」
「シャルロットたん、ばんざーい!!シャルロットたん、ばんざーい!!シャルロットたん、ばんざーい!!」
黒崎も手を挙げて僕に合わせて言ってくれた。
まさか、この短時間で黒崎も拙者と並ぶくらいにシャルロットたんへの愛を理解してくれたとは……
拙者も感動のあまり、涙が溢れるでござるよ!
「隆さん!!何、ひまりちゃんに変なこと教えてるんですか!!これはもう、説教が必要ですね……」
もどきはこちらに近づいてきて、拳をポキポキと鳴らす。
「あ、いや……拙者はただ、シャルロットたんへの愛を知ってもらいたくてですね……やめろ……やめてくれ……ギャーーーーー!!」
その後僕は、数十分の間正座をさせられた。
足が痺れたことはいうまでもないだろう。
その間も、黒崎は正座している僕を見て笑っていた。
守りたい、この笑顔!!




